「きりこについて」 | 物語の庭

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カフェと図書室、わたしの人生。

なんだか秋の深まりを感じますね。

前回からちょっとあいてしまいましたが…
最近読んだ本のお話です。


photo:01


「きりこについて」
西加奈子 著
角川書店


西加奈子さんはやっぱり面白い。

この本も、最初は、なんだろう??という感じなんですが、
あくの強さにやられそうになりながらも惹きつけられて、一気に読みました。

きりこは美しい両親からたくさん愛情を受けて育ち、
自分のことをとてもかわいいと思っている、実はぶすの女の子、という衝撃の冒頭。

ギャグとして読めばいいのか、、
確かについ笑ってしまう感じには書かれてはいるのですが、
途中から、あ、これはマジだ。と。

ぶすに生まれてしまったきりこが、成長して自分がぶすだと認識したその後、どのように生きていくのかを、真正面から描いていくのですね。

きりこは自分がぶすだなんて思ったことなかったのに、それが自分のことだったと気づきます。
それはきりこにとって大変なショックであり、裏切りであり、自分をすべて否定するようなもの。

一旦すべてを失った人間が、もう一度自己を肯定できるようになるまでの内面の葛藤、
そうして立ち直ったきりこが今度は周りの人達にどんどん影響を与えていく様子が痛快に語られます。

一旦どん底に落ちて戻ってきた人間は、強いし、深いし、他人に優しい。

生きていく上では、容姿なんてたいしたことではないはずなのに、やっぱり見かけにふりまわされてしまう。
きりこを通して、そんな人間たちを冷静に見つめる、この本の語り手の目もステキです。

前回紹介した「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」でも共通して思ったことですが、
猫のように、気高く自由に、
自分の思った通りに生きていきたいものだなぁと思いましたニコニコ



最近、電車通勤になったため、本を読む時間がかなり確保されるようになり、嬉しかったり音譜
また読んだ本をご紹介していきますニコニコ