最近のあんしんネットは、特殊清掃会社としてマスコミに良く取り上げられています。
「週刊SPA」「日刊SPA」などは、若い世代の孤独死問題でかなりのページをさいていたみたいです。
師匠は、「特殊清掃人」と、勝手に肩書きが出ていましたが、苦い顔をしていました。
しきりに「俺は遺品整理人」だと、何度もつぶやいていました。
あんしんネットのスタッフは、どんな整理にも通じていないといけません。
遺品整理、福祉整理と名前は違っても、現場の状況を見て、そこにふさわしい整理を行ないます。
私は、その中でも師匠より「特殊清掃班長」という、ありがたいのか、ありがたくないのか、中途半端なポジション名をいただき、率先して特殊清掃現場へ出るようにしています。
特殊清掃の現場は、孤独死現場とは限りません。福祉整理でもあるのです。
今まで一番怖かった現場を、今回紹介したいと思います。
神奈川県下のとある町での案件です。
一人暮らしのおばあちゃん。
すでに認知症を発症して、家の中、全てがゴミ部屋状態でした。
姪ごさんからの要請で、居宅内のほとんどのゴミと家財を撤去する作業でした。
3DKの間取りの戸建てで平屋。
トイレの扉は、何故か外側から釘が打たれて、開閉できない状態でした。
見積りの時は、「現場作業の時に釘を抜いて、中にゴミがあれば撤去しましょう」と打合せをして、2トントラック4台分の見積り提示をしました。
ゴミや家財の容量は、50㎥。
さすがに2日間の現場作業となります。
2日目、作業もそろそろ終わりが見えた時に、忘れていたトイレのドアを開ける作業にとりかかりました。
至るところに打ちつけてあった釘を抜くと、トイレの扉は開くことになります。
いざ、開けてみると・・・・・
便座の中はもちろん、便座まわり、床一面にう○この山があるではないですか。
なんと、想像できていなかった場面が、瞳に突き刺さりました。
心は折れ、「どうしようか」と悩むばかり。
しかし、だれかがそこに立ち向かい、戦わない限りは、現場作業は終了しません。
ヘルプで現場いりした師匠は言いました。
「少しだけ勇気を出して、そして洗面器とお玉で持って、突入するしかないな」と。
炊き出しの鍋物をどんぶりに入れる作業に似ていますが、入れる物が違います。
踏みだす勇気が出ずに、茫然としていると、師匠が私から道具を取り上げて、その一歩を踏み出したのです。
その時に私は思いました。
汚いと思っている現場に立ち向かう姿。
「その一歩」を踏み出すか否かで、現場の雰囲気は変わります。
師匠は、叫びながら、まさに雄たけびをあげながら、奮戦(糞戦)したのです。
約1時間の戦いが続き、そこには見違えるトイレの姿が見えました。
「これって、特殊清掃ですか?」と、質問すれば、
「見方次第で、俺には普通の清掃でしかない」と、断言されました。
これを機に、私は特殊清掃について色々と考えるようになりました。
薬剤の勉強して、その化学反応を確かめたりします。
臭いの問題、汚れの問題などを解決するための清掃術かも知れません。
でも、もっともっと技術を延ばして、特殊清掃班長にふさわしい現場力を身につけたいと思います。
今年は、インフルエンザの流行が早いそうです。
私たちスタッフも早目に予防接種を受けて、日々現場で力を発揮したいと思います。