皆さん、こんにちは。あんしんネットの平出です。
現場では、日々、さまざまなご家庭の「片付け」や「整理」をお手伝いしています。でも、私たちが向き合っているのは、ただの「モノ」ではありません。そこにあるのは、そこに住む方の「人生」そのものです。
私たちの部署では定期的に勉強会を開いています。講師は、現場の酸いも甘いも知り尽くした石見部長。
先日のテーマは新しいスタッフも入ってきたので、「改めて後見制度について学ぶ」でした。
正直に言います。
私も以前この話を聞いたときは「なんだか難しそうな法律の話だな……」と思っていました。行政でも「後見センター」が次々と開設されて啓蒙活動が進んでいますが、正直、一般の方にはまだまだ馴染みが薄いですよね。でも、石見部長のレクチャーを聴き、そして実際に現場で困っている方々を目の当たりにする中で、確信したことがあります。
「これは、今を生きる私たち全員が知っておかなければならない、現代人を守る制度なんだ」ということです。
今日は、石見部長から教わった「後見制度の本質」を、現場で働く私、平出の視点から分かりやすく解説したいと思います。
1. なぜ今、後見制度が必要なのか?
皆さんは今、自分の銀行口座からお金を下ろしたり、スーパーで買い物をしたり、住んでいる家の契約を更新したりすることを「当たり前」にできていますよね。それは、皆さんに「判断能力」があるからです。
しかし、現代社会ではこの「当たり前」が脅かされています。石見部長が強調するのは、「判断能力を欠いた状態で生活している人が、想像以上に増えている」という現実です。
その大きな要因の一つが、避けては通れない「認知症」の問題です。
厚生労働省のデータを見ても、認知症の患者数は右肩上がりで増え続けています。さらに、知的障害や精神障害など、さまざまな理由で、自分一人では契約や財産の管理が難しい方が社会にはたくさんいらっしゃいます。
昔であれば、近くに住む親戚や近所の人たちが「お互い様」で助け合っていたかもしれません。しかし、今は「家族の絆」が薄れ、孤独死が社会問題になるような時代です。身近に頼れる人がいない、あるいは家族がいても遠方にいて実情が分からない。そんな状況で、判断能力が低下してしまったらどうなるでしょうか?
・悪質な訪問販売に騙されて、大切な老後資金を使い果たしてしまう。
・公共料金の支払いが滞り、電気やガスを止められてしまう。
・適切な介護サービスを受けたいのに、自分では契約手続きができない。
こうした「生活の危機」からその人を守るための仕組み、それが「後見制度」なのです。
(ちなみに成人だけではなく、未成年という場合もあります。)
2. 「後見人」は、人生の伴走者
後見制度を簡単に説明すると、「判断能力が不十分な方に代わって、法律的な手続きや財産の管理を行うサポーター(後見人)を立てる制度」です。
石見部長はいつもこう言います。
「後見人の仕事は、単なる事務作業じゃない。その人の『権利』と『尊厳』を守る伴走なんだ」と。
後見人が行うことは、大きく分けて2つあります。
① 財産管理
通帳や印鑑を預かり、家賃や公共料金の支払い、年金の管理などを行います。悪質な詐欺に遭わないよう見守る「盾」のような役割です。
② 身上保護(身上監護)
その人が安心して暮らせるよう、医療や介護の契約手続きを行います。例えば、病院への入院手続きや、介護施設への入所契約などです。※注:直接的な介護(食事の介助や着替えなど)を後見人が行うわけではありません。
私たちは現場で、セルフネグレクト(自己放任)に陥り、ゴミ屋敷化してしまったお宅を何度も目にしています。そうした場所で、後見人が介入することで、住環境が整い、適切な介護サービスが受けられるようになり、その人が再び「人間らしい生活」を取り戻していく姿を見てきました。
3. 「法定後見」と「任意後見」の違いを知ろう
「後見制度」には、大きく分けて2つのルートがあります。これも石見部長の講義でよく出てくる重要なポイントです。
法定後見: すでに判断能力が衰えてしまった後に、家庭裁判所が後見人を選ぶ制度。
任意後見: まだ元気で判断能力があるうちに、「もしもの時はこの人にお願いしたい」と自分で後見人と内容を決めておく制度。
石見部長が特におすすめしているのは、後者の「任意後見」です。
自分が将来どう生きたいか、どんな最期を迎えたいか。それを元気なうちに自分で決めておく。これは、自分の人生に対する「究極のプロデュース」だと言えるかもしれません。(ただし、財産状況によっては、任意での契約が難しいケースもあります)
4. 現場から見える「家族の絆」の変容
ここからは、私が現場で感じている少しシリアスなお話です。
後見制度が必要とされる背景には、先ほども触れた「家族の絆の希薄化」があります。
かつての日本では、親の面倒を子供が見るのは当たり前という空気が強かったですが、今は「自分の生活で精一杯」「親とは疎遠になっている」というケースも少なくありません。また、老老介護の末に共倒れになってしまうケースも増えています。
ある現場では、認知症が進んだお母様のために、遠方に住む息子さんが必死に手続きをしようとしていましたが、法的な知識がなく、銀行の窓口で門前払いされて途方に暮れていました。家族だからといって、本人の代わりにすべての権利を行使できるわけではないのです。
そんな時、第三者としての後見人(弁護士や司法書士、あるいは社会福祉士や行政書士など)が介入することで、家族間のトラブルを未然に防ぎ、息子さんも「一人の子供」として、純粋にお母様との時間を大切にできるようになることがあります。
「制度を利用することは、家族の責任を放棄することではない。むしろ、プロの力を借りて家族の形を再構築することなんだ」と、石見部長の言葉が胸に響きます。
5. これから私たちが考えていくべきこと
行政も一生懸命に周知していますが、それでもまだ「後見制度は自分には関係ない」「お金持ちが使う制度でしょ?」と思っている方が多いのが現実です。
しかし、認知症は誰にでも起こり得ることであり、判断能力の低下は誰の身にも降りかかる可能性があります。それは、もしかしたら明日、自分の親に、あるいは数十年後の自分に起こるかもしれないことなのです。

私たち「あんしんネット」のスタッフは、整理の現場を通じて、この制度がいかに人を救うかを知っています。
ゴミに埋もれた部屋から救い出された方が、後見人のサポートで清潔な施設に移り、穏やかな表情を取り戻す。その時、私たちは「整理」という仕事の枠を超えた、大きな社会の繋がりを感じます。
結びに:一歩踏み出す勇気を
「後見制度」を知ることは、未来の自分や家族を守るための第一歩です。
もし、身近な方の物忘れが気になり始めたり、将来の独り身の生活に不安を感じたりしたら、迷わず行政の後見センターや社会福祉協議会(地域包括支援センター)、専門家に相談してみてください。
後見制度はまだ見直しなどもありますので、私たちも、まだまだこれからも学び続けます。
現場のリアルな声を拾い上げ、整理の仕事を通じて、この制度が正しく機能するお手伝いをしていきたいと考えています。
判断能力がなくなっても、誰もが自分らしく、尊厳を持って生きられる社会。
そんな未来を、皆さんと一緒に考えていければ嬉しいです。
すごく大きなことをいっていますが、今日のブログを読んで、少しでも「後見制度」を身近に感じていただけたら幸いです。
それでは、また次回のブログでお会いしましょう!