お腹の調子が悪くなる要因の一つに「停滞腸(ていたいちょう)」があります。

 

停滞腸は、文字通り腸の動きが悪くなり、冷えやむくみ、便秘、ガン、口臭、老け顔、肌荒れなどさまざまな症状を引き起こす原因になります。また、停滞腸になると肥満になることもあるようです。

 

腸は、身体の中でも特に重要な器官といわれています。なぜなら、腸は摂取した食物を吸収したり排泄したりする人間が生きる上で最も必要な器官であり、毎日稼働しているからです。

 

停滞腸を改善するには、食物繊維を摂取したり適度な運動をしたりすることが良いとされています。食物繊維の中でも、特に食物繊維が豊富に取れる食材が「モチ麦」です。

 

今回は、肥満や病気を生む腸停滞とモチ麦の効果について解説します。

 

人間の腸

私たちの内臓は特に意識することなく、常に自動的に活動しています。これは、人間の身体の仕組みの一つで、自律神経による作用です。

 

自律神経は、体内で内臓や血管を支配している器官です。

 

正確には、心臓の筋肉である「心筋(しんきん)」や汗腺や唾液腺などの「分泌腺(ぶんぴつせん)」、内臓や血管壁の筋肉である「平滑筋(へいかつきん)」などです。

 

その自律神経系作用の中には、重要な「腸」を動かす作用もあります。腸は、体内に取り入れられた食物を消化や吸収、排泄するなどの役割を担っています。

 

人間の腸は、小腸と大腸があります。小腸といわれる器官は、十二指腸から空腸、回腸まで約5m~7mの長さがあります。

 

大腸は、盲腸から上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸へと続き、長さは約1.5mになります。

 

小腸と大腸の長さを合わせると約9mもあり、この腸内で体内に取り入れられた食物の消化や吸収、排泄などの役割を常におこなっています。

 

口から入った食物は、重力に逆らわずにそのまま肛門から出ていく訳ではありません。

 

腸は横や縦、上下に位置しているため、腸が動かないと便や老廃物などの排泄物が腸内に停滞して病気になってしまいます。

 

腸が便を排泄などのために動く運動のことを「蠕動運動(ぜんどううんどう)」といいます。そして、この蠕動運動の機能が著しく停滞していることを「停滞腸(ていたいちょう)」といいます。

 

停滞腸になると、本来排泄されるはずの便などの老廃物や毒素が体内に溜まってしまうため、肥満や病気などさまざまな悪い症状が生じます。

 

 

停滞腸とその原因

現代人は、厚生労働省の調査報告からもわかるとおり、停滞腸になっている人が多数いるようです。

 

これは、現代人の仕事や勉強、食生活など腸環境にとって、悪い環境が整えられているからです。

 

停滞腸により腸内環境が悪化すると、腸の運動機能も悪くなります。最近、お腹の調子が悪く便秘や下痢、食欲不振が続くと思う人は、停滞腸になっている可能性があります。

 

停滞腸とは、さまざまな原因により食物の消化や吸収、排泄などの腸機能がうまく機能しないことです。

 

停滞腸になると、本来体外へ排出されるべき不要な便などの老廃物や毒素が、長期間腸内に留まってしまいます。

 

その結果、ニキビなどの肌荒れや肥満、冷え、むくみ、便秘、ガン、口臭、老け顔など、さまざまな症状が体内で生じてしまいます。当然、美肌にはほど遠い体質になります。

 

さらに腸内環境が悪化すれば、大腸ガンになる可能性も高くなります。ご存じのとおり、日本人の死因のトップはガンです。

 

そして、近年急増しているガンが「大腸ガン」なのです。大腸ガンになる原因は、前述した腸の健康にとって悪い環境が大きくウェートを占めています。

 

厚生労働省による2003年度のガン部位別発生にみる性・年次別年齢調整死亡率(人口10万対)の調査報告では、大腸ガンによる死亡率は女性が1位、男性が4位でした。

 

前述した停滞腸の原因以外にも、ダイエットや運動不足、ストレス、食物繊維不足、食品添加物、菓子類の過剰摂取、ファーストフードなども原因として挙げられます。

 

停滞腸は、加齢や女性にも多くみられる症状です。これは加齢により筋力や筋肉が衰えることや、男性よりも女性の方が、筋力が弱いためだと考えられています。

 

停滞腸になると、実にさまざまな症状が身体に現れてきます。もし、以下のような症状を感じるようであれば、停滞腸の疑いがある可能性があります。

 

・お腹の張り (便が腸内で腐敗し腸内環境が悪化)

・ガス(おなら)が溜まる

・腹痛がよく続く

・肌荒れ (腸腐敗によるインドール、スカトール、アセトン体などの老廃物)

・便秘 

・残便感

・食欲不振 (腸の横行結腸(おうこうけっちょう)にたまったガスが胃を圧迫)

・膨満感

・肥満(最近太りだした)(新陳代謝が衰え、細胞の活動も停滞している)

・冷え性

・むくみ (ガス腹により排泄が滞り、細胞管内に水分が滞留している)

・口臭や体臭がひどい (ガスが腸壁から吸収されて血液から身体中に広がる)

・顔が急に老けてきた

・疲労感

・イライラなどのストレス

・頭痛

・肩こり

・痔 (腸内に便が溜まりすぎて便が硬くなっている)

 

ダイエットをおこなっていて、あまり食べていないのに痩せないのは、腸の蠕動運動が停滞している可能性があります。

 

腸内環境が悪く便などの老廃物や毒素が溜まれば、身体に良い栄養素が吸収されないばかりか、毒素が体内に吸収されて身体に悪影響を与えます。

 

その結果、ダイエットや美容、健康の阻害を招き、身体に不調を来します。

 

停滞腸になりやすい生活習慣

前述したとおり、停滞腸になる原因はさまざまです。下記に停滞腸になりやすい生活習慣を挙げてみました。

 

・野菜をあまり食べていない

・お菓子ばかり食べる

・水をあまり飲まない

・過剰なダイエットをしている

・食が細い

・運動をあまりしない

・すぐに寝転がりたくなる

・やる気がない

・ストレスがある

・仕事が忙しい

・勉強が大変

・暴飲暴食の癖がある

・酒の量が多い

・たばこをよく吸う

・夜中に起きている

 

これらの生活習慣は、停滞腸に直結します。停滞腸になれば、さまざまな症状が生じて仕事や勉強、家事、家庭、友人関係などに大きく悪影響を与えます。

 

こうした生活習慣を改善することが、停滞腸を改善して肥満解消や美肌、健康になることにつながります。

 

 

腸停滞とモチ麦

身体や心、仕事などに大きく悪影響を及ぼす停滞腸ですが、腸の動きや腸内環境を整えることにより、停滞腸を大きく改善することができます。

 

腸停滞を改善する方法の一つに、「モチ麦」という食材を摂取する方法があります。モチ麦は、水溶性食物繊維が多く含まれた食材で、腸内環境を大きく改善する作用があります。

 

食物繊維は大きく2つに別れていて、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類があります。

 

不溶性食物繊維は、水に溶けずに食物繊維が腸を刺激して蠕動運動を促し、良好な排便につなげる作用があります。

 

これに対し水溶性食物繊維は、水に溶けるために腸内で善玉菌の餌となり、腸内環境を大きく改善させる作用があります。

 

水溶性食物繊維を多く含む食材は、エシャロットやニンニク、ごぼう、海藻などです。この中でも、トップクラスで水溶性食物繊維を含む食材が「モチ麦」なのです。

 

例えば、モチ麦には、ごぼうやニンニクの2倍以上の水溶性食物繊維が含まれています。

 

もちろんモチ麦には、水溶性食物繊維だけでなく、不溶性食物繊維も枝豆と同じくらい含まれている素晴らしい食材です。

 

水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がモチ麦のようにバランス良く含まれている食材は他にありません。ゆえにモチ麦は、腸内環境を整える最高の食材の一つといえるでしょう。

 

モチ麦の摂取量は、一日あたり約40gが理想的といわれています。これだけのモチ麦摂取量で、人間が一日に必要な不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方の食物繊維が摂取できるのです。

 

さらにNHKの取材では、停滞腸の改善や腸内善玉菌の数値向上、ウエストや体重の減少などの効果がみられたようです。

 

ただし、モチ麦は食物繊維の多さから、人によってはお腹が張ったり下痢になったりすることもあるようです。

 

こうした症状がみられる場合には、モチ麦の摂取量を減らして身体に慣れさせるようにするといいようです。

 

 

モチ麦以外の優良食材

モチ麦は停滞腸の改善に持ってこいの食材ですが、モチ麦以外にも停滞腸を改善する食材はあります。例えば、お茶やバナナ、ごぼう、大豆、サツマイモ、ライ麦などです。

 

ごぼうや大豆、サツマイモ、ライ麦などは不溶性食物繊維が豊富に含まれています。ただし、一度にたくさんの不溶性食物繊維を摂り過ぎると便秘になる可能性があります。

 

これらの食材を多く摂取したときには、多めに水分を補給するか、海藻やきのこ、果物類などの水溶性食物繊維が多く含まれている食材を摂取するようにしましょう。

 

大切なのは、2つの食物繊維をバランス良く摂取することです。

 

バナナには、食物繊維以外にも、さまざまな停滞腸を改善する物質が多く含まれています。

 

例えば、バナナには便を柔らかくしてくれる「マグネシウム」や、腸管運動を起こすために必要な「セロトニン」の合成に必要な「トリプトファン」などが含まれています。

 

他にも、善玉菌の餌となる「フラクオリゴ糖」なども含まれていて、停滞腸の改善に役立てます。

 

また、停滞腸の改善には食物繊維だけでなく、善玉菌を多く含むヨーグルトや納豆、キムチ、漬物などが有効です。

 

他には、マグネシウムを多く含むひじきや昆布などの海藻類やほうれん草なども有効な食材です。オレイン酸を多く含むオリーブオイルなどもおすすめです。

 

 

食事以外の停滞腸の改善

食事は停滞腸の改善に役立ちますが、普段の生活習慣の改善も重要です。人の身体には「胃・結腸反射」という作用があります。

 

この作用は、ご飯を食べると腸が動き出すという反射反応のことです。諸説ありますが、この反射が一番強く起きる時間帯が朝の朝食時だそうです。

 

従って、朝食をしっかり食べることが大切だという学者もいますが、逆に朝食べずに腸を綺麗に掃除させて腸内環境を整えた方が良いという説もあります。

 

自分に合った食事の取り方を実践して、よりよい腸内環境の改善方法をおこなうことが重要です。朝食が苦手な方には、朝起きたときに水を一杯飲むことも胃・結腸反射を高めることが可能になります。

 

 

運動やストレッチなどによる停滞腸の改善

停滞腸の改善には、運動やストレッチなどによる体質改善も役に立ちます。腸を動かすには、筋力が重要なポイントになります。

 

筋力不足が停滞腸の原因になるので、運動も筋力アップのために欠かせません。

 

従って、運動不足解消のために、ウォーキングや軽いジョギング、自転車を乗るなどの適度な運動を食事と並行しておこないましょう。

これらの運動には、副交感神経を優位にして自律神経のバランスを整える作用があります。

 

これらの運動は、全身運動であるため血行が促進されて、ストレスの改善や自律神経のバランスが整い腸の働きを改善します。

 

これらの運動をおこなうときには、呼吸を深くおこない心身がリラックスした状態で運動すると効果が上がります。

 

あまりに激しい運動をおこなうと、交感神経が優位になり身体が緊張状態になってしまいます。ゆっくりした適度な運動をおこなうことが、停滞腸の改善につながります。

 

どうしても運動の時間が取れない場合には、通勤や通学の時間を利用しましょう。例えば、通勤時をウォーキングに利用して、歩幅を広くして少し早く歩くようにするのです。

 

また、エレベーターやエスカレーターを使用せずに、階段を使用したり遠回りしたりして運動時間を確保しましょう。

 

 

停滞腸の改善で気をつけること

便秘がひどい人は、下剤を使用している方も多くいます。確かに、緊急時やお腹が苦しくて仕方なく下剤を使用しなければならない場合もあります。

 

しかし、極力自然に便秘や停滞腸の改善を進めることがベストです。なぜなら、下剤はとても刺激が強く、人によっては下痢になったりすることもあるようです。

 

また、何度も繰り返して下剤を使用していると、下剤を使った強い刺激がないと腸が動かなくなる危険性があります。

 

すると、次第に下剤の効果がなくなり、さらに強い下剤を求めるようになります。その結果、下剤を飲まなければ便が出ないことになり、腸内環境のさらなる悪化につながります。

 

 

便秘がひどい場合を除き、少しずつでもいいので、食生活や普段の生活習慣の改善を見直すことから徐々に腸内環境の改善に努めていくことが健康や美肌につながっていきます。

 

このように、停滞腸の改善は、肥満や病気の改善や美肌、口臭改善、体臭改善にもつながる大切なものです。

 

いきなりすべてを改善することは難しいことですが、少しずつ改善することで健康や美肌、ダイエットにもつながります。腸内環境の改善をおこない、健康で美しい身体を取り戻しましょう。