葬家に行くと今日も故人の兄弟姉妹らが揃って話していた。
故人を安置している部屋を閉じ、ドライアイスの確認や補充
確認をしている間、千明は湯かんと葬儀の人数、料理の数、
生花名札の確認などをした。
補充確認が済み、襖を開け皆さんが揃っている部屋に座ると
故人の娘さんから
「缶詰の入ってる籠をお願いできますか?」と言われる
「誰が出すの?」と聞く僕に
「私です」と娘さん「なんの為に出すの?」
「よく子供や孫の名前で供物出てるじゃないですか」
「それだけの為なら、そんなの要らないよ」
「仏は結婚式と違って、葬儀だけで終わらないし、この先の
各法要は全て赤字だから、後々の費用に使ったほうが良いよ」
「それにうちの祭壇は何も供えなくも豪華だからね」
「普通葬儀屋さんの祭壇は段々があるだけで、供物類は家族
親族が買って供えるけど、うちは最初から買えば30万円ほ
どはするだろう飾り類や盛り菓子まで全て揃っているよ」
「自宅には持って帰れないけど、自宅は要らんでしょ」
「あ、はぃ分りました」と娘さん・・・
「その分、お金でちょうだい」とお母さんが手を出す。
それを見ていた親族から「変わった葬儀屋さんだよねぇ」と
笑いが出ましたが、続けて千明が言います。
「そうなんですよ。 家族がちょっと無理してると思えば、
そんなもの要らないって、料金下げちゃう人ですからね」と
更に笑っていましたが、それを聞いて『ふぅーん』と思って
いたので、自宅から出て車に乗った時に聞いてみた。
「いつも料金下げちゃうのって俺なの? もしかして施行が
増えて売上が下がってるのは、依頼する人達の層が変わって
いるんじゃなくて、俺が引き下げてるって事?」
「依頼するパックが安いものになってるんじゃないの?」
「どっちもですね。 以前より低料金葬儀が増えているのは
間違いないけど、それを更に下げているのが代表です」
「今日の流れを思い出せば分かるでしょ? 家族からお願い
しますって言われてるのに、誰なの? 何でなの?って聞き
それなら要らないっ言ったの代表ですからね」と笑う。
「あぁ・・・なるほど・・そうだったのか」
「元々が低料金なのに、家族の財布事情とか、これから先の
生活を考え、無くても良い物は要らないと言うし、財布事情に
よっては葬儀内容そのものを変更させるじゃないですか」
「前にも一般葬でと言った家族に、『馬鹿か金もねぇのに葬儀
で無理して故人が喜ぶか!?』 って直葬にしたでしょ」
「結果は葬儀後に本当に助かりましたって言われるのだから
正しい判断してるんだなって思うし、だから紹介しようって思う
んでしょうね」
「それに家族親族と、あれだけ笑って話しが出来る葬儀屋は
他には無いんじゃないかな、今は慣れたけど最初は私も驚き
でしたからね。 時々きつい事も言っちゃうけど怒らないで
笑って聞いてくれているのが不思議です」
「前の会社では絶対にあり得ないことです」
「あんなの真似できないから、もしもの時を考えると不安で
すけど、だからいつまでも元気でいて貰わなきゃ」と笑って
いました。
確かに家族の財布事情を気にはしていますが、葬儀の単価が
下がってるのは、依頼者層が変わってきているのが最大要因
だとばかり思ってました。
でも今日の千明の話しでは、以前は家族の依頼はそのまま
受けていたのが、今は家族の意見を聞いてから、暫く別の
話題とか違う部分から本音を探り出し、それから改めて選択
する葬儀パックを決めているようです。
利用者層が変わったのではなく、僕対応が変化してるらしい。
以前より深く家族の懐に入り込んで、本当の本音を確認して
から葬儀を決めてるようです。
なるほどなぁ・・・そういう事だったかと改めて分かった。
だとしたら、後は現実の流れと考え方次第ですね。
今の方法で食えるなら、それも良し、、、それで良し・・・
そこで数万円から、10万円ほどの売上増を優先させるか、
親族以上に家族の事を心配してくれる人達だと思われるか、
って事なんだろうなぁ・・・
ただ難しいのは、意識してやって無いだけに、そう簡単には
変われないだろうと思う。
今まで10年間、少しづつ変化しながらやってた事ですから
食えなくなるまでは、このまま走ってたほうが楽だし、良い
んじゃないかなぁ・・・なんて勝手に思ってます。
『犯人を、捕えてみれば、我が身なり』ってね。
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