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家族目線なら見える葬儀の希望【思い出の場所を走る】







 搬送関連の話では、ある葬儀での事が思い出されます。
それは、何度も名前の出てきているあんしんサポートを共に立ち上げ
た千明の父親が亡くなった時の事、今から二年前の春でした。

一年前に癌の告知をされた家族は、父親には病名を告げず治療をし、
看病をして一時は退院もしたのですが、年が明けると寒さのせいか、
体調を崩して再入院となったのです。

もうすぐ桜が咲こうという三月の終わり、事態は急変します。
「父親が危ないと、病院に呼ばれたから行ってきます」明け方、千明
から電話が入ったのです。 結局その日は、体調も戻って何事もなく
済んだのですが、父親が入院している病院は、前橋から車で一時間の
距離にあり、実家は前橋から車で一時間三十分の距離なのです。

もしもの時に、前橋の搬送業者を使うと搬送だけで五万円近くは掛る
はず、どうしたものかと考えますが、今の状況を考えれば、今日、明
日にも分らないのです。

そこで前橋に戻った千明に搬送用の布団を渡し、自分の車に積んでお
くように言います。 もしもの時は、何とか自宅まで自分達の車で運
ぶようにと指示をしたのですが、少しでも葬儀費用を抑える為の苦肉
の策だけに、僕自身も気がひけます。

それから毎日、夜中に呼ばれて持ち直すを繰り返した一週間後の朝、
千明からの電話はいつもと違って、血圧が四十台まで下がったと言う
ので、万が一に備えての準備を始めてから一時間後、ご逝去の知らせ
が入り、家族の車で病院から四十分ほどの自宅まで、峠を越えて搬送
されたのです。

ところが自分達での搬送は意外な効果のある事が分ったのです。
その効果とは、峠に入った時、千明の母親は逝去した自分の旦那に、
こんな風に言ったのだそうです。
「父ちゃん、椎坂峠( しいさかとうげ )だよ、ほら沼田の町が下に見え
るよ。 もうすぐ桜の花が咲いて春が来るよ。見えるかい」
こんな会話をしながら四十分のドライブをしたそうです。

 葬儀後に千明の家族から聞かされた話しでは、亡くなって自宅に帰
る準備を始めると、娘が搬送用の白い布団を持って来た時は「えっ!
自分達で運ぶのか? 」って思ったけど、息子の車で家族だけだった
せいか、帰りに父ちゃんと話しをしながら帰れたから良かったと言う
のです。

そっかぁ、病院に長く入院していた人は、外の空気や見慣れた景色、
以前に住んでいた場所や、時には思い出の地を回ってあげたり、ほん
の数分ならば停車してあげられたら、きっと家族には、癒される時間
になるんだろうと思うと、いつか自分達で霊柩車を持てる時が来たら
距離無関係の一定料金にして、多少遠回りをしても、家族が、故人に
対して供養と思えるような搬送の時間にしたいと、こころの中で決め
たのです。
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なるほどなぁ・・・
あんしんサポートの搬送料金が、距離でなく地域単位なのは、これが
きっかけだったんですね。
また寝台車を自社所有してないもどかしさが伝わってきます。

今回の話題に関して、最近のあんしんサポートは、設立して数年間は
確かにそうだったな・・・と反省のほうが大きいですね。
この話は設立から3年以内のことです。
3年後には5万円火葬も出来上がって霊柩車も所有してました。

以前は今ほど葬儀施行もなく、時間もあったけど、あんしん館も無く
安置は自宅が基本でした。 民間施設を借りると2日間でも7万円は
掛かりましたから、狭くてもできるだけ自宅安置をしていた時代です。

霊柩車を所有してからは、病院や施設から自宅まで戻る道すがらに、
故人が好きだった場所を通るとか、自宅安置して斎場まで行くのに、
桜の咲いてる場所に寄ったり、自宅のある他市まで棺を乗せて行き、
近所の人達と最後のお忘れをしたり、同級生の父親でしたが、東武の
車掌をしていたからか、最後の時までスカイツリーを見たいと言って
たと聞き、霊柩車に棺を乗せて都内まで走ったこともあります。

斎場から車で1分の距離に、あんしん館が誕生してから故人を乗せて
寄り道が一気に減り、依頼数の増加で時間がとり難くなっているのも
原因のひとつでしょうが、設立当初には鮮明に見えてたものが、いつ
の間にか見えなくなっている・・・って事の現れでしょう。

いつもしていた事が、仕事が重なってできない時がある・・・
それが何度も続くと出来ない事が苦にならなくなってくる・・・
そして・・・いつの間にか出来ない事が普通になる・・・
その挙句に出来る、出来ない・・・すら考えなくなる・・・

慣れとは、悪い事ばかりでなく、あんしんサポートのように基本何を
するにも2人ですから、片付けのスピードが早くなったり、段取りの
手筈が迅速になったり良い事も多いですが、往々にして楽を覚えたり
ま、いいか的に横着になる事のほうが多いです。

忙しいのなんて理由にならない・・・
時間はあるものでなく、作るものですからね。

何年も前に書いた自分の文章に教えられる事、反省させられる事って
あるんですね。

寝台車、霊柩車に乗せてドライブする時間がとれないなら、その代り
としてできる事を考えるくらいの姿勢は必要です。
オリジナルの葬儀、真似のできない湯かん、など誕生した事で間違い
なく充実度は上がっているでしょうが、思い出の場所に連れて行く、、
決して難しい事じゃない、誰でもできること・・・
ただ時間と労力を要する・・・手間暇を掛ける事も必要なんですね。



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