(〇〇は奥さんの名前・××は自分の名前)

『〇〇へ

先に逝くことになってごめんね。

〇〇を守れなくて残念、一人にさせて

××あと6年車の免許をとりたかったのに

まさかこんな身体になっていようと思って無かったので

××自身驚いた。 何日か悩んだが心の整理ができたので

本当はもっと生きたい

〇〇と一緒になって55年いろいろ楽しい人生だった

これも○○のおかげ、また生まれ変わっても

また一緒になりたいね

大好きな〇〇へ ありがとう 俺にはすぎた女房』


昨日自宅に安置したドライアイスの確認や、遺影写真を届けに行った時

清めの料理の下に置いて読んで貰う「故人を偲ぶ」という簡単な文章を

82才のお母さんに見せて確認して貰うと、読みながら涙を流し、読み

終えると一通の封筒を差し出して言いました。

「昨日お父さんの書いた手紙を見つけたんですよ」それが上の文章。

僕の書いた「故人を偲ぶ」は、お母さん目線で書いたものでした。

「私の気持ちを書いてくれてありがとうございます。 お父さんも同じ

気持ちだったんですね」 と笑顔とも泣き顔とも言えない顔で言う。

「この手紙のコピーを清め料理の下に置いても良いですか?」「うん」

今回の家族葬では2通の手紙を置くことになりました。

僕の感じたお母さん目線の「故人を偲ぶ」はこんな手紙でした。

『お父さんを偲ぶ

最愛の一人息子を突然亡くし、そのわずか5ケ月後にあとを追うように

逝ったお父さん 若い頃から海外旅行が好きで、演歌が好きで、温厚な

お父さん・・・ 癌だと分ってから覚悟はしてきたつもりでしたが、

静かに横たわるお父さんを見ると頭の中は真っ白けで、、、

まだ何も考えられません。

お父さんの運転で行くのが当たり前だった、買い物やお出かけ・・・

お医者さんにも、もう連れて行って貰えなくなりましたね。 

2人で二人三脚で生きてきた時間や、、2人で暮らしてきた家も、、、

これからは長く、、広く感じるのでしょうね。

もう息子には会いましたか!?  迎えにきてくれましたか!?

私が逝くまでには、まだ時間がありそうですから、それまでは

父子水入らずで酒でも酌み交わして、男同士の話しでもしてください

8月の新盆には2人揃って、私や嫁孫のところに帰ってきてください。

待っていますよ。 今日ここに集まってくれた皆さんは お父さんと

どんな思い出がありますか? どんなエピソードがありますか?  

聞かせてくださいな・・・ 話してくださいな・・・ 

きっとお父さんもこの場で、皆さんの話しを笑顔で

ニコニコして聞いているはず・・

今度生まれてきた時も、また2人出会って、

もっと良い人生にしましょうね。  やくそくですよ・・・お父さん』

いかがですか? 分り易いように色分けしましたが、お父さんの書いた

お母さんへの手紙(ピンク文字)・・・素敵な夫婦愛ですね。

ドラマならいくらでも有りそうですがノンフィクションの手紙です。

自分の死を目前にした80才のお爺ちゃんが、82才の妻に送った言葉

「何日か悩んだが心の整理ができたので」と書きつつ躊躇しているのが

手に取るように分る・・・だから「本当はもっと生きたい」と文章の

流れとしては不自然な文・・・ 心配かけまい、、もう覚悟はできたよ

って言おうとしたけど、でも俺の本当はってお父さんが本音を書いたの

だと良く分る・・・ 僕にはすごく素敵な文章に思えました。

今日の午前、湯かん納棺の儀で納棺師をした僕は、この文章を読ませて

貰い、妻を残すのが心配なお父さんの気持ちを伝え、お父さんの供養を

と思うなら、残されたお母さんが笑顔で生きられるよう、集まった皆が

少しづつ気配りをしてくれたら、お父さんは早く成仏できると思う。

と列席された親族に伝えました。

55年間連れ添った配偶者を自分の最後まで気遣い、来世でも出会って

一緒になろうな・・・ 夫婦の何パーセントがそう言えるでしょう。

一人残されるお婆ちゃんではありますが、自分の死よりも、妻への愛情

妻と別れる寂しさを綴った愛情タップリの手紙は、大きな生きる力へと

繋がってくれることでしょう。

今回の葬儀では、夫婦のあるべき姿を教えて貰った葬儀でした。

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