いつものように9時30分過ぎ、事務所に到着しPCの電源を入れて

少しすると千明が事務所に入ってきたので声をかける「おはよう」

「おはようございます。 今朝電話があって10時過ぎに事前相談に

来るそうです」それを聞くと立ち上がりすぐに準備を始めた。

BGM用PCの電源を入れ、入口のドア2枚の鍵を開け、祭壇照明を

付け、安置室の電気も付けるとBGMを流し準備完了。

事務所に戻り、いれて貰ったコーヒーを飲みながら話す。

「事前相談は急ぎの人がいるの?」「自分の事みたいですよ」との

言葉に「そっか、、なら2人で良いね」と作りかけのホームページを

開き作り始めた頃、人が入ってきてチャイムが鳴り、インターホンが

鳴り千明と息子の2人が事務所から出ていく・・・事務所のモニター

には夫婦らしき2人が写っていたが、千明と息子も画面に現れる。

ほんの少し画面を見ていたが、何となく近い人がいるような気がして

すぐに四人の所へ行ってみる。

まだ話は始まっておらず、千明と息子は僕が来ないと思っているので

少し驚いた顔をしたが、そのまま話しを始めた。

「今日はどんなご相談ですか?」すると60代だろうと思えるご主人

らしき人が「自分の葬儀なんです・・」という。 「なら相当先の事

ですね」と言う僕に「いいえ、末期癌と診断されたので・・・」との

言葉に僕も言葉を失った。 近い人がいる気はしたが本人だとは、、

昨年12月、末期癌で4月までの命だと、自分の葬儀相談に来られた

方が2月に亡くなられ葬儀をしたのを思い出す・・・

事前相談の中で一番辛い相談・・・

いつものように、火葬式 + 安置で税込96.768円から可能である

ことを伝えて、国保から葬祭費5万円が支給されると話しをすると、

いつもと違う話しを少しする。

「自分の葬儀相談に来られるだけ強い意志をお持ちなので言います。

自分の葬儀を派手に豪華にしたいと思えば、それも良しですが、僕の

個人的な見解で言わせて貰えれば、後に残される奥さんの生活だけは

考えてあげて、2人の思い出の地や場所があるなら旅行に行ったり、

好きなものを2人で食べに行ったり、夜は全ての写真を広げて一枚、

一枚の場面を振り返る・・・とにかく10万円だけ残してあとは全て

これからの思い出作りに使って欲しいと思います」と伝えた・・・

癌治療はせず緩和ケアのみ受けると聞き、もし自宅で終幕を迎えると

分かった時は、深夜でも看取りをしてくれる医師を探しておくことや

遺骨のことなども話しておく・・・

自分からはあまり話しをせず、聞いていた本人が話しを始める・・・

「こんなに丁寧に話して貰えると思って無かったので、本当にありが

とうございました。 自分はこの人(奥さん)一人に見送って貰えば

良いと思っているのですが、自分が思っているような葬儀で対応して

くれるところが無いか探して前橋まで来たんです」という事らしい。

聞けば62才とのこと・・・末期癌なら余命数か月でしょうか・・・

今年60才になる僕と大差ない同年代・・・他人事ではない。

事前相談の中で一番辛い相談、でも相談に来た本人はその数百倍

どころか、それ以上
辛いはず、相談をされた側の責任として何を

すべきか、何ができるか
考えるが、できるのはほんの少しだけ・・・

① 緩和ケアの医療費がこの先どのくらい掛かるか不安だろう

② 後に残す奥さんの生活費も心配だろう

③ たとえ数か月だとしても、この先奥さんに後悔が残らないような

  思い出造りをできるだけ沢山して欲しい、自分を愛してくれた人

  との思い出があれば、前を向いて生きられるかもしれない・・・

だから費用は可能な限り抑えた提案をして、死後の心配は要らない、

本人がそう心から思える対応、それだけが我々のできること。

入会して帰る時「もうお葬式の事は頭から離して忘れて良いですよ。

残りの人生を精一杯楽しんでください」これ以上言葉はでなかった。

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