葬儀費用を下げる最大の壁に突き当たる
死化粧に関して言えば、もうひとつ、僕の中だけで引っ掛かっていた事がありました。
葬儀を始めてから二年が過ぎたころ、葬儀費用という最大の壁が見えてきたのです。
設立から1年後には地元新聞に【一般葬儀社の4割価格】と掲載され100名~150
名を越える程度ならば90万円台の費用( 宗教者謝礼除く )には成っていましたが、そ
れ以下に下げるのは厳しい状況であるのも確かだったのです。
葬儀費用とは例えば公営斎場式場で葬儀をした場合、たった数人でも150名でも、
同じ会場なら祭壇に乗せる生花などの費用、会場費などの基本費用は変らない訳で、も
っとも大きく変るのは料理・返礼品なのです。だから同じ50名の葬儀でも、全員親族
なら料理50人前ですし、家族親族は10名で一般会葬者40名なら、料理費用だけで
5倍の差が出るってことなのです。
【親族50名×料理2.500円 = 125.000円】
【親族10名×料理2.500円 = 25.000円】その差100.000円です。
返礼品についても同様で、同じ50名でも【新生活40名+一般10名】と【新生活
10名+一般40名】だった場合では収入も違いますが、支出も大きく違うのだという
事を理解した上でこれから先、費用の話しを読んで頂きたいと思います。
あんしんサポートが目指した葬儀パターンと費用の内訳は、次のような内容でした。
1、国保から支給される葬祭費5万円だけで、可能な火葬だけの葬儀50.000円
パック。 これは、本紙に何度も出てきたように、国保からの支給額だけで火葬出来た
ら、少ない年金から葬祭費用を貯める事無く1円も残さずとも葬儀が出来る訳で、最大
の目標でもありました。
2、家族だけの葬儀で30万円を切れる家族葬儀189.000円パック
葬儀のことなんて生きているうちに考えたくないという人達は意外に多く、その人達の
為にも、総額30万円以内で可能なら、費用の心配をせずにいても良いかな? との僕
の個人的見解です。
3、公営斎場利用50名~70名程度で60万円を切れる一般葬儀299.000円
パック。 かつて結婚式がそうであったように、付き合いを抑えた少数葬儀への移行は
明らかですから100名だった葬儀なら、半分の50名強程度に変化していくだろう
との予測をしています。
【各パックの詳細は記しませんが、公営斎場利用50名~70名程度で60万円とは、
宗教者の謝礼を除き、料理・返礼品・会場費・消費税等の全てが含まれた費用です】
ところが、葬儀依頼を受け、全ての打ち合わせを終えると、提携葬儀社に連絡をして
搬送から最後の拾骨までの全実務・全葬具類までをも依頼していたわけで、右記のどの
パック価格も、葬儀の実務を依頼する提携葬儀社への支払い額より低くなるのです。
ようするに、葬儀社に支払う費用のほうがパック料金よりも高いのです。 って事は今
の手法では絶対に不可能だってことです。 さらに火葬だけのパックなら提携葬儀社を
使わなくても、我々だけで充分に可能なのですが、病院~自宅までの搬送と、自宅~火
葬場までの搬送に搬送用の防水シートまで専門業者さんに依頼すると、良心的な業者さ
んでも最低45.000円の費用が掛るのですから50.000円火葬パックなんて到
底無理な話しなのです。
さぁ どうしたものでしょうか、この2年間で地域毎に依頼できる提携葬儀社も増え、
やっと支援地域がカバーできるようになったばかりなのに、前ページに掲げた目標の各
種パック価格は今のままでは、何十年経っても達成不可能なのです。
そこで、ある提携葬儀社に対して今までとは違う契約方法の打診をしてみますが、そ
れなら全ての契約を破棄して、一切手伝いはしないとまで言われてしまったのです。
後にこの葬儀社とのやり取りが、あんしんサポートの新たな決意をさせることになり、
納棺師を始めとした葬儀施行の、全てを自分で行ない、葬具一式を自社所有する引き金
となったのです。
火葬・納棺師付火葬・自宅葬・斎場葬、各パック内容と価格決定
新たな決意で決まったのは
【50.000円の火葬支援パック】
【119.000円の納棺師付き火葬パック】
【189.000円の小さな自宅葬儀パック】
【299.000円の公営斎場一般葬儀パック】の計4パックでした。
チャレンジとして、最終目標となる5万円火葬支援パックを、まずは89.900円の
設定にして事務所前の道路に看板まで立てました。 実はこれでも赤字必至なのです。
千明が言います「もし、依頼が入ってきたらどうするんですか? 」僕の答えは簡単明
瞭です。 「依頼が入る前に89.900円を可能にしないと、その分の損をするって
ことだよ」「それはそうですが・・・」納得はできないのでしょうが、こんな所で行き
詰まっていたら5万円での火葬なんて到底無理だと感じたのか、僕の性格だから「やる」
と言い出したら、何を言われてもやるだろうと諦めたのか分りませんが、それ以上の疑
問・質問をすることはありませんでした。 この頃になると、あんしんサポート応援団
とも言える葬儀をされた方や主旨に賛同して応援してくれる方々も増えていましたが5
万円火葬支援パックの話しをすると、皆さん口を揃えたように同じことを言うのです。
「五万円じゃなくても今回設定をした89.900円だって充分過ぎるほど安いし、
それで良いんじゃないの? それで安定して利益が出せるようになってから、余裕があ
れば少しづつ下げたらどう? 安くするのも良いけど、あんしんサポートが無くなった
ら それこそ取り返しのつかない事になっちゃうんだから 無理しちゃ駄目だよ」
皆さん、あんしんサポートの心配までしてくれるのですから 気持ちは、すごくあり
がたいのですが、5万円火葬の根本的な発想を理解されていないようです。 五万円火
葬は単に低費用での火葬パックを目指している訳ではなく「一銭も掛らない葬儀!」が
大前提だからの5万円です。 国保・後期高齢者保険の加入者が死亡すると、申請から
3ヶ月くらいで5万円支給される訳ですから、一旦は立て替えとなっても実質一銭も無
い状況で火葬ができる事になります。 その為の【搬送距離不問】【税込】で追加不要
の設定としているのです。 まぁ、火葬料が徴収される地域では、火葬料金がプラスさ
れる事にはなりますが、基本は福祉葬儀なのです。
様々な助言を押し切って「5万円火葬だけは、誰がなんと言おうと絶対に実現してみ
せる」と強気な発言を続けてきた結果、最終的には異論を唱える人も居なくなり、少し
でも早い目標達成へと支援者の心も固まると、あとは、何をどうすれば4パックが達成
できるかでしたが、次の4課題をクリアする事が最善、最速との判断となったのです。
葬儀施行の全てを学び、葬具を揃えた一年
1、納棺師を始めとして、火葬~数百人の葬儀まで行なえる実力を身に付ける
2、自宅・公営斎場、どちらの葬儀も行なえるだけの葬具を自社で所有する
3、寝台車・霊柩車のどちらでも使用できる営業ナンバー車両を自社で所有する
4、遺影写真の自社作成、葬儀門標が印刷できる大型プリンタとPCを自社所有する
以上が3年目の課題であり、目標プランを実現する為の最低基準だと思ったのです。
課題設定後は、病院のお迎え時に使用する車載用ストレッチャーの使い方から搬送用
防水シートはどんな物が良いか、更には、ドライアイスを効果的に当てる場所と本数、
包み紙は何が良いかなど、今までは軽く流してきた事柄にも、意識をするようになった
のです。 病院からの遺体搬送から始まり、焼骨を自宅に安置するまでが、葬儀社が行
なう基本的な仕事なのですが、基本的には終始裏方さんです。 ところが、唯一主役と
なる場面がある事に気付いたのです。 それは、映画「おくりびと」で有名になった湯
かん、納棺の儀を行う納棺師を行う時で、どんなに大勢の親族が所狭しと座っていても、
故人の寝る布団を挟んでたった一人座って、先導するのですから、葬儀の時の僧侶同様
に主役であり、この時だけは葬儀屋さん!などと呼ばれる事だってありません。ただ、
提携各社の納棺師像は各社毎に同じような印象になる傾向は強い感じがします。
ある葬儀社は、丁寧で綺麗な仕事をするのですが、何となく冷たい印象があります。
また別の葬儀社でも丁寧な仕事なのですが、どこか閉まりが無く軽い感じがしたりと、
改めてじっくり見ると一長一短で、湯かん納棺の儀の内容もかなりの違いがあります。
また各社の共通点として、納棺時は旅支度を整えるのに、固結びで縛るお手伝いや、
手足を持ち上げたりと、どの葬儀社も親切だと思いますが、湯かんで家族親族が手足を
拭く時は、故人のご兄弟とか、故人の叔父・叔母様にあたる方など、いちいち言わなく
ても良いと思えるのです。 拭く順番なんて親族間で決める事だし、故人と自分の関係
が呼ばれなかったらそれも嫌な感じだろうと思うからです。 それよりもっと気になる
のは故人の身体を拭いている人以外は、やたら暇そうな事だけは共通しているのです。
また家族が僕らに慣れてくると色々聞かれます。【七本塔婆・外塔婆の事】【宮川紙
の事】【一膳飯・枕団子の事】【守り刀を置く理由】等々いくらでもありますが、僧侶
がそれらの事を話したのを聞いた事はないので、湯かんは、清浄綿をトレーに置き、隣
にビニール袋を置いて、故人に近しい人から順に拭いて貰っている間に、色々な項目の
由来を話すようにしています。
納棺師武井として心掛けている事は第一に家族と同じ感覚で湯かん・納棺を行う事。
眠ったような化粧技術を持ち、家族からは数十年来の知り合いのようで、下手な親戚よ
り近しい感覚になれる・・・なってしまうような納棺師なら、その空間は単に固い儀式
ではなく、集った人達の中にある温かみの出る湯かん・納棺の場になってくれると考え
ています。 不思議なのは葬儀では他にも色々な仕事はあるのに、搬送直後の打ち合わ
せと眠ったような死化粧をしたあとは、家族が全面信頼をしてくれるのでしょうか・・
何事もスムーズに進行するのと、全てを任せてくれるようになるのです。 だからこそ、
その信頼を裏切るような言動はできなくなるのですが、今のところ自分に素直な感覚で
言動していれば大丈夫みたいです。
次は2.の葬儀で使用する道具類を全て揃える!ってのが目標となりましたが、これ
は資金の問題と置く場所、この二つだけが課題なのです。 1年後の目標期日までの期
間に、依頼された葬儀の利益は、殆ど道具を揃える資金にするしかありません。
但し、そこでの最大ポイントは千明の生活をどうやって維持するかでした。 まずは、
あんしんサポートに掛った電話は全て千明の携帯電話に転送することで、電話料金を会
社負担にする。続いて当面は仕事でも使用する千明所有の自動車のガソリンを会社負担
で給油をし、次回車検の10ヶ月後には現行の車を廃車して、会社所有の軽自動車を貸
与することにしました。 また洋服は仕事柄いつでも対応できるように黒のポロシャツ
に黒のパンツと靴、冬場は黒の名入れジャンパーとした事で、給与の中から支出してい
た費用の中でも、大きな部分を経費として計上できるので個人の負担を軽減できます。
あとは食費ですが、僕の血糖値が高かった事や肝機能数値等が決して良いとは言えない
事もあって、昼と夜は事務所で千明が作って食べる事も多くなったのが幸いしたようで、
安定して収入は得られていませんが、何とかなる・・・という生活で過ごして貰うこと
になったのです。
4、遺影写真加工・門標用大型プリンタですが、遺影写真に関しては以前からアドビ
社のイラストレーターCSで美容室のパンフレットやPOP・お客様に配布する新聞な
ども作成していたので、フォトショップでバージョンが古く、もの凄く綺麗とまではい
きませんが簡単に作れましたし、全ての道具を揃える最後は、大型のプロッターを新品
なら20万円ほどの物・・・と言っても廃盤品ですが、中古ながら29.400円で購
入し、埼玉県桶川市まで送料より安いと、2時間掛けて取りにいった事で、平成23年
4月、全ての道具が揃ったのです。
最後に残った3、霊柩車の自社所有に関する記述は、このあと自分達だけで行なった
各葬儀や、自分達と派遣スタッフでの各葬儀の実践記の中で、ご紹介させて頂きます。
公然と忌み嫌ってきた葬儀の仕事なのに、父親逝去の一報から一転して自ら飛び込ん
でいくかのような、何かに導かれているかのような、そしてひとつひとつの流れが葬儀
せよと言わんばかりの中、八王子裁判所からの通知が届いてからわずか3年後には、つ
いに自分達だけで搬送から葬儀の全てを行うまでになっていたのです。 つづく
※ 本ブログ記載の料金当の全ては平成23年6月現在のものです
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