皆さんが見る葬儀パンフレットには【遺体搬送・寝台車】【霊柩車搬送】の
ような類似言葉と10kmまで・20kmまでという但し書きが付いていると
思いますが、10km・20kmの測り方を知っていますか?
タクシーと同じように、乗った場所から降りた場所だと思ったり、24時間い
つでも同じ料金だと思っていたら大間違いだという話しです。
一般的な距離測定の方法は【車庫】~【病院】~【自宅】までの合計距離が基
本なのです。 だから10kmなんて相当近距離を動いた場合以外はあり得ま
せん。って事は基本が10km提示のパンフレットなら、多分20kmまでの
追加料金が発生するはずです。 10km毎の加算金額は全てではありません
が10km単位で3.000円づつの加算が多いようです。 また夜10時か
11時~朝の5時か、その会社の始業時間までを深夜早朝料金としているよう
ですが、会社毎に時間帯も違いますし、料金も2割増しとか1回で3.150
円など色々ですからしっかり調べる必要ありです。
僕の中にある【5万円だけで可能な火葬パック】構想は、現状多くある搬送
料金設定では無理なのです。 自宅の場所が、車庫から遠い距離ならば、当然
搬送料が高くなるし病院も同様です。 病院が市外であんしんサポートが病院
とは真反対にある市外で、合計60kmだったなら追加だけで15.750円
なのですから、5万円火葬なんて到底無理だし「基本は5万円ですが追加で数
万円ですね。」では意味がないので、支援地域内なら追加不要・一律料金設定
が基本となる訳です。
家族目線なら見える葬儀の希望【思い出の場所を通る】
搬送関連の話では、ある葬儀での事が思い出されます。それは、何度も名前
の出てきているあんしんサポートを共に立ち上げた千明の父親が亡くなった時
の事、今から2年前の春でした。 1年前に癌の告知をされた家族は、父親に
は病名を告げず治療をし看病をして一時は退院もしたのですが、年が明けると
寒さのせいか、体調を崩して再入院となったのです。 もうすぐ桜が咲こうと
いう3月の終わり、事態は急変します。
「父親が危ないと、病院に呼ばれたから行ってきます」明け方千明から電話
が入ったのです。 結局その日は体調も戻って何事もなく済んだのですが、父
親が入院している病院は、前橋から車で一時間の距離にあり、実家は前橋から
車で1時間30分の距離なのです。 もしもの時に、前橋の搬送業者を使うと
搬送だけで5万円近くは掛るはず、どうしたものかと考えますが、今の状況を
考えれば、今日、明日にも分らないのです。
そこで前橋に戻った千明に搬送用の布団を渡し、自分の車に積んでおくように
言います。 もしもの時は何とか自宅まで自分達の車で運ぶようにと指示をし
たのですが、少しでも葬儀費用を抑える為の苦肉の策だけに、僕自身も気がひ
けます。 それから毎日、夜中に呼ばれては持ち直すを繰り返した一週間後の
朝、千明からの電話はいつもと違って血圧が40台まで下がったと言うので、
万が一に備えての準備を始めてから一時間後、ご逝去の知らせが入り、家族の
車で病院から40分ほどの自宅まで、峠を越えて搬送されたのです。 ところ
が、自分達での搬送は意外な効果のある事が後から分ったのです。
その効果とは峠に入った時、千明の母親は逝去した自分の旦那に、こんな風
に言ったのだそうです。「父ちゃん、椎坂峠( しいさかとうげ )だよ、ほら、
沼田の町が下に見えるよ。もうすぐ桜の花が咲いて春が来るよ。見えるかい」
こんな会話をしながら40分のドライブをしたそうです。
葬儀後に千明の家族から聞かされた話しでは、亡くなって自宅に帰る準備を
始めると、娘が搬送用の白い布団を持って来た時は「えっ! 自分達で運ぶのか
? 」って思ったけど、息子の車で家族だけだったせいか、帰りに父ちゃんと
話しをしながら帰れたから良かったと言うのです。 そっかぁ病院に長く入院
していた人は、外の空気や見慣れた景色、以前に住んでいた場所や、時には思
い出の地を回ってあげたり、ほんの数分ならば停車してあげられたら、きっと
家族には、癒される時間になるんだろうと思うと、いつか自分達で霊柩車を持
てる時が来たら、距離無関係の一定料金にして多少遠回りをしても、家族が、
故人に対して供養と思えるような搬送の時間にしたいと、こころの中で決めた
のです。
家族目線なら見える葬儀の希望【お別れの手紙が生まれた葬儀】
千明と言えば父親のお兄さんである叔父さんの逝去前日の事を思い出します。
午後3時頃、千明の携帯が鳴り電話に出ます。 数分話しをして切ると、上の
弟に電話をしなきゃと言うので、どんな内容の電話だったのか聞くと、父親の
兄である叔父さんが入院したのですがあまり思わしくないと言うので、実家の
家族4人で今日の午後7時に入院先の渋川の病院へ見舞いに行く予定だったよ
うですが、実家の近所に住む下の弟の都合が悪くなり、高崎市在住の弟と前橋
市在住の千明だけで行くようにと言われ、母親達は今度の日曜日に見舞いに行
くからとの電話連絡だったようです。
各市と病院の距離間隔がわかり難いので一応書いておきます。
・前橋の事務所~利根の実家まで、北に向かって車で一時間半の距離
・利根の実家~渋川市の病院まで、南西に向かって車で一時間の距離
・上の弟が住む高崎市自宅~渋川の病院まで、北に向かって車で四十分の距離
・前橋の事務所~渋川市の病院まで、北西に向かって車で三十分弱の距離
・前橋の事務所~上の弟の家まで、南西に向かって車で四十分の距離
実に分り難いと思いますが、どの場所も決して近い距離ではない、とご理解く
ださい。 それを聞いた僕のくちからは「5時に母親のバイト先である大根農
家まで迎えに行くから、仕事が終わったら待っているように伝えろ」という指
示に、千明はちとビックリしたような顔をしながら連絡をしたのです。 が、
言った当人の僕自身もビックリです。 前橋から利根町の実家へ行き、渋川市
の病院までは二時間半の距離で、都会の渋滞する2時間半とは違って、合計距
離120キロメートル以上あり、ましてや4日後の日曜日には見舞いに行くと
言っているのです。 2時間半を掛けて病院に行けば、更に母親を送って実家
まで行くので、病院からの帰り時間には3時間半掛って前橋市の事務所に戻る
って事なのですが、言っちゃったものは仕方ないと、すぐに車を走らせ利根の
実家に向かい予定通り5時到着、仕事場に居た母親を乗せ一旦実家に寄り身支
度を整えると、1時間を掛けて叔父さんの入院している病院に到着した時は、
すでに外は真っ暗でした。
病院内に入ると、叔父さんの息子である従姉弟であり、依頼者が看病に来て
おり出迎えてくれます。 もしもの時に使う遺影用の写真を選んでくださいと
アルバムを渡され、他のみんなは病室に向かうと、一人残った僕は、一階の待
合い椅子に座ってアルバムを見て待つことにしたのです。
渡されたアルバムを眺めていると、白黒写真が時代を感じさせます。その中に
あった一枚の婚礼写真が目に留まりました。 多分、病人とその奥さんであり、
依頼者の両親なのでしょう。 暫くすると病室から出てきたみんなが机を囲ん
で座って話を始めました。 後から千明に聞くと普段はあまり自分や父親の事
をしゃべらない依頼者なのだそうですが、自分が生まれて2ヶ月でこの世を去
った母親の事や、その母親の死をきっかけに、田舎にも大きな病院が必要と奔
走した父親の話しなどを語ったのですが、普段無口な彼が熱弁を奮うほどの何
かが心にあるのでしょう。 暫し話をし病院を出るとみんなで食事をして帰り
ましたが、思ってたより状態は良くないようだと言い、それでも「ありがとう」
と叔父さんはお礼の言葉を言ってくれたそうです。
翌日の午後3時、見舞いに行った叔父さん逝去の知らせが従姉弟である依頼
者から入ったのです。 後日、葬儀の時「武井さんのお陰で生きて会えたのは
私達家族だけで本当にありがとうございました」と千明の母親に感謝されまし
たが、きっと叔父さんが僕を走らせたのでしょう。
病院で見たアルバムの婚礼写真は、やはり依頼者の両親のものでしたが、5
0年前に亡くなった母親と再会しても、50才年を取った父が分るように【自
宅で撮影した二人の婚礼白黒写真】と【故人の弟が収穫した米で作ったおにぎ
り3個】を包んで棺に入れ、【父親が亡くなる前日、息子が我々に語った心情
を書いた手紙】を読んでもらおうと、当の息子である本人に見せると、彼の第
一声が「文章力は違うけど、自分で葬儀の時に読もうかと思って書いた内容と
全く同じなのでビックリです。 なんでこんな事まで分るのですか?」という
言葉でしたが、この葬儀で生まれたのが「お別れの手紙」なのです。
良くある褒め言葉だと思って気にも留めませんでしたが、葬儀の前日、彼が書
いたという文章を見せられると、彼の言った言葉が本当のことだったと分かっ
たのです。 葬儀当日、棺に向かって僕の書いた文章を読み上げると、母親が
亡くなった当時の事を知っている叔母さんや叔父さんのすすり泣く声が、会場
全体から聞こえてくるほどでした。
返礼品を納める会社の所長が後日言うには「自分は相当慣れているので、まず
泣く事はないのに、あれは俺でも泣いたもんね。ほんと良い葬儀だったよ」と
褒めてくれました。
今は【お別れの儀】と呼び、生花を棺一杯に入れ、故人にちなんだ【白の割
烹着】【草むしり用の日除け帽子】【豚の角煮】【甘納豆】【バナナ】【和菓
子】などを棺に入れたり、時には【お別れの手紙】を代筆する形で、家族に読
んで貰ったりしています。 つづく
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