NPOになって初めての葬儀は、若い女性の声で「父親の余命がわずかなの

ですが、何も分らないので教えてください」という一本の電話から始まったの

です。 事務所に現れた女性は友人に「NPOがあるから聞いてみたら? 」

と言われて電話をし、電話の感じで相談しようとの来社で、まだ可愛い感じさ

え残した20代の女性でした。

 対象者は父親ですが、自分達姉妹が2才頃に離婚しており、父親の思い出な

ど全く無いままに生きてきたが、先日突然、父親の後見人だと言う司法書士か

ら連絡を受けて、実の父親の存在を知ったばかり、その父親はすでに意識もな

く、太田市の病院に入院中で、いつ終幕が来てもおかしくはない状態だと言わ

れ、どうしたら良いか分らずの相談だと言うのです。 自分達姉妹は母親に育

てられて、母親は別の男性と再婚、姉は結婚して都内に住んでいるが小さい子

供が居るので、何かを決めるのは自分しか居ないらしい。

 当時、出来たての民間葬儀施設があり、万が一の時そこを利用して安置する

方法を選択、寺に関しては、いくつかの候補をあげて検討する事にして、その

日は帰ったのです。 彼女から提示をされたいくつかの条件を考慮し3つほど

のパターンを作って翌日提示したのです。 ファミレスで会うと搬送から安置

葬儀、火葬、遺骨処理まで3つほど考えたパターンをひとつひとつ説明します。

結局、あんしんサポートが一番お勧めする方法で良いと決まりました。

これでひと安心と事務所に戻り、決定した葬儀の流れや対応方法を確認してい

ると、決めた方法と違う形で、お寺の対応をすれば、内容は大して変らず費用

が下げられる事に気づいたのです。 すぐに連絡を入れ、もう一度会って説明

をすると「そうしてください」と決まりました。

 この話、あとから僕に聞いた人達はくちを揃えて言いました。「それで良い

って喪主が決めたのに何もわざわざ料金を下げるような事は言わなくても良い

のに」だそうです。 確かにそうかもしれませんが、もっと良い方法を思いつ

いたのに言わずにいたら、葬儀の全てが終了しても暫くの間は、気がとがめる

訳で、もし依頼者側の人達の中で誰かが気付いたら、僕は後悔するのが明らか

だからです。 また、その家族や親族、近しい人達の中で語られるあんしんサ

ポートとは、大した所ではないとの烙印を押されるでしょうし、結果として繁

栄も成長にもブレーキが掛るならば、最初から最善の方法を伝えようとした訳

で、新参者の我々は常に最善を尽くし全力で対処するだけと思っていました。

 それから数日後、ご逝去の一報が入ると、すぐに葬儀社に搬送依頼をして、

使用する民間施設に向かい、葬儀終了までの流れと依頼を済ませ受け入れ態勢

が全て整った頃、太田市からの搬送車が到着。 

 いよいよ新たな葬儀社との新たな葬儀の始まりです。 布団にご安置された

ご遺体に、ドライアイスで処置を行うにも素肌の出る手の部分はタオルで包ん

で、直接ドライアイスが触れないような配慮がされます。 布団を掛け、その

上から綺麗な掛け布が掛けられ、守り刀が布団の上に置かれると、末期の水取

りです。 竹ひごの先に真綿が付いた棒を水に浸して、家族が故人の唇を拭う

と皆さん線香をあげます。 その後、死亡届出書を記入するのは、申請者であ

る娘さんです。一連の流れを見ていると、初めて見た葬儀の時とは違って何事

に関しても丁寧で迅速です。(おー、やっぱ違うな)と関心しましたが、その翌

日の湯かんと納棺の儀では更なる違いを目の当たりにするのです。

 湯かん納棺の儀に集まったのは、次女・前妻・その夫の三人でした。 布団

を挟んで向こう側に納棺師が座り、手前に家族が座ります。 儀式の前に布団

を取り去り、ドライアイスを外し化粧・整髪を事前に行なうと、湯かん納棺の

儀が始まります。

 「始めに故人のご冥福を祈って合掌をお願い致します。合掌」落ち着きのあ

る優しい口調で始まりました。 湯かんとは、の説明後に家族が手足を拭き、

納棺前には故人が旅支度で身に付ける手甲や脚絆など、ひとつひとつ説明をし

て、縛り方を教え、縛り易いようにと足を持ち上げたりしています。 全てが

実に丁寧で、前回見たのとは全く違う儀式です。 葬儀2回目にして初めて、

本物の湯かん・納棺の儀を見て感動をしていると、納棺後に真綿の入った大き

な箱が運ばれます。(ん? こんなに沢山の綿を何に使うんだろう?)と見てい

ると、真綿を切ったり丸めたりしながら故人の身体の上に置いていきます。

それから20分ほど経過した時、故人の身体は真っ白な真綿で出来た紋付袴の

姿になっていました。 「わぁーすごーい」「へぇー見事なもんだね」家族は、

それぞれに驚きの言葉をくちにします。 紋服姿になった故人は、少し立派に

見えます。 なるほどぉ、こんな方法もあるのかと初めての綿衣裳に感動さえ

覚えました。 ただこの後、女性の葬儀で綿帽子の白無垢姿の故人を見た時、

違和感を感じるのです。 男性の紋服姿は正装なので問題ありませんが、女性

の白無垢は、あくまでも結婚式の衣裳なのです。 仏様になるとか、極楽に行

くとか、土に返るとかなら理解できますが、亡くなった人が嫁に行くのはどう

考えても違和感があったのです。 その代替が出来る2年後までは、白無垢姿

で対応して、今は男女の区別なく使える【法衣姿・観音様や地蔵様の着衣】が、

あんしんサポートオリジナルの綿衣裳です。 勿論、これは家族が希望した場

合に行なうのであって、絶対に必要なものではないと付け加えておきたいと思

います。 つづく

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