葬儀経験者の話しを聞き、その人から紹介された人から話しを聞く、そんな事
をしていると時には座談会のようになったりします。
そんな時に出る共通の話題? としては「葬儀には100万円掛るんですか?」
「100万円あれば死ねますか?」誰が言ったか分りませんが、この100万
円という金額はやたらと聞くのです。
その度に言います。「そんなに費用は掛かりませんからご安心ください」しか
し、ならいくらあれば良いのか明確に、金額提示が出来ません。
相手の老人達も、それ以上突っ込んできません。
きっと自信の無い発言を察知してなのでしょうが、自分達の事を考えてくれて
いるのは分るからの、優しさなのでしょうが、実に歯痒い、情けない場面に何
度も直面しました。
また、年金が月に10数万、20数万なんて人は、ほんの一握りで月額4万円
~5万円だけで生活している人達が圧倒的に多いのだと知りました。
その少額年金で生活費、医療費などの全てを賄うのですから、100万円の葬
儀費用なんて貯まるはずがありませんし、死ぬ為の貯金など愚の骨頂です。
生きている時は食べたい物も食べず、着たい物も着ずに我慢して、自分が死ん
だ後の葬儀費用を貯める? どう考えても馬鹿げているし、この感覚は変えな
きゃ駄目だと思うが、何をどう考えて良いのか分らないで居る時、ある老人が
言いました「お爺さんの葬式してから3ヶ月くらいしたら国保から7万円出た
よ」「ん?国保から費用が出たの?」「うんそうだよ。社会保険ならもっと出
るって言ってたよ」それを聞いた僕は「・・・ん! これだ!」すぐに市役所
に向かったのです。
国保からの葬祭費5万円だけで火葬できたら・・・
市民課の窓口で聞きます「人が亡くなると国保から支給されるお金があるので
すか?」「はぃ、葬祭費として現在は7万円支給されますが、4月から5万円
の支給に変ります」「え? 下がるのですか?」「はい、全国的には殆ど5万
円ですし・・・」窓口の担当者を問い詰めても仕方ないので、葬祭費支給手続
書のような用紙を貰って帰ります。
でも、ひとつの基準は出来ます。国保又は後期高齢者保険にさえ加入していれ
ば死亡時には、5万円支給されるのですから、その5万円で火葬だけでも出来
れば一銭も無くても死ねるってことになるのです。
これが出来たら「100万円なんて無くても大丈夫! 極論から言えば一銭も
無くたって火葬は出来るから、あるお金は安心して使って良いよ」って自信を
持って言えるのですが、実際のところ火葬をするのに必要な物が何かも分らな
いし、ひとつひとつの道具類、棺は? ドライアイスは? 霊柩車搬送費は?
骨壷は? それぞれいくらするのかも分らないのです。
それでも、ひとつの基準が見つかったのは収穫と、それからは会う人の全てに
聞いてみます。「国保から支給される葬祭費5万円だけで火葬出来たらどうで
すか?」すると、不思議な事に、誰もが同じような反応をするのです。
その反応とは、「それが出来たら助かる人は沢山いるし、多くの人が待ち望ん
でいる事だろうね」この後に続く言葉も殆ど同じで「でも無理でしょ?」「だ
けど、そんなの出来る訳ないじゃん」ほぼ100パーセントに近い受け答えな
のです。聞いた全員が良いと言い、聞いた全員が無理だと言う。
でも僕の知る限り無理だと言う人達には、可能、不可能の基準があるとは思え
ないほど、葬儀に関しては無知だったはず、なのに、何で無理だって言い切る
んだろう? って言うか(分らない) =(出来ない)という図式なのだと思った。
当時は消費者にとって良い葬儀社を紹介する事を第一に考えていたので、何処
かの葬儀社が5万円で火葬をしてくれたら良いな、程度の感覚だったのです。
私物化を避け、意思を継いで欲しい・・・ゆえのNPO
沢山の人達と葬儀について話をするようになってくると、中には賛同して会員
登録したいという人達も現れてきたのです。が、そこで、もうひとつの問題が
見つかることになるのです。 会員登録したい人の中には、僕より若い人達が
います。って事は普通に考えれば僕より長く生きる人達です。だから僕の消滅
と同時に無くなる組織では駄目なのです。
そこで法人化を考えますが、僕の経営する株式会社も含めて一般の法人と大き
く異なる点があるのです。それは、根本的な考え方が利益を最優先する事業で
はなく、血筋より同じような考え方の出来る人達に後を継いで欲しいし、それ
以外の継続は不可能だと思ったのです。
また誰かに私物化され難い組織のほうが良いとも考えました。
その理由は千明が以前勤めていた組織では、利用者であるお客様の事を優先し
た言動を取ると、結果として、その葬儀に関しては、会社の利益を減らす事に
繋がる事が多かったらしく、現場を仕切る上司の意見に逆らうと左遷なのだそ
うです。 実に馬鹿げた話しだし、これが本当なら、自分の手で自分の首をジ
ワジワ締めているようなものです。と同時に、業界の中には葬家の事を最優先
した仕事の出来る人達が存在するのだと知りました。この点は収穫です。これ
から、自分達が事業として、企業化できた時の人材が居るのが分ったからです。
最終的に我々が選択したのはNPO法人でした。NPO(ノン・プロフィット・
オーガニゼーション) 特定非営利活動法人、文字だけを見ると利益を出して
は行けない会社だと思っている人が大半で、行政の出先き機関だと思っている
人や行政からの援助で運営している機関と思っている人が多いですが、現実は
全く違います。
行政は何もしてくれませんし、利益は無かろうが、税務署から法人税の均等割
りは徴収されます。
有限会社や株式会社と違うのは、利益が出たからと決算前にみんなで分けるよ
うな事が出来ず、利益は翌期に、そのまま繰り越す事を義務付けられたのがN
PO法人なのです。また、県知事の認証が必要です。
事業内容も指定された17分野の中に限られていたり、理事と呼ばれる役員が
必要だったりと、やたら縛りがありますが、その割には、うさん臭いNPOは
いくらでもあるのが現実です。
その理由は、認証基準さえ満たしていれば県は、設立に対し否定できないから
です。 また趣味の世界から、介護、地域の課題から、我々のような葬儀とあ
まりに広範囲である為か、話が噛み合わず横の繋がりなど殆ど無いのが普通で
すが、NPO活動域により、そろそろ整備して欲しいものです。
若干、NPO法や管理監督に対する苦言を呈しましたが、それでもNPOを選
択した理由として、個人の私利私欲に利用され難い体質なのがNPOでもある
からです。 この世に人が存在する限り必ず人の終幕もあり続ける訳で、生ま
れたら死ぬのが生物である以上、人の終幕に高額費用が掛る事自体が変で、生
まれる事を許された以上、終幕まで面倒みるのが国家であると認識されるまで、
創業者2人の存在が消滅した後々でも、続いて欲しいからのNPO選択でもあ
りました。
NPOあんしんサポートを申請
結局、我々が選択したのは「消費者にとって良心的で良い葬儀社の紹介」を第
一基準として、昔は何処の町内にもいた世話役さんのような仕事を自分達で行
なう事。また、葬儀支援だけではなく、生き甲斐支援の二本柱を主としました
が、実際は何がどうなるか分らないので、自分達が葬儀施行をする事になって
も支障の無い申請にしておく事にしたのですが、結果的には大正解の申請内容
となったのです。
千明は2ヶ月を掛けて退社、4月に申請を開始したのですが、まぁ、いかにも
お役所って感じで、皆さんも経験があるでしょう? 番地は算用数字だ 漢数
字だと、どっちでも良いような事にやたらと細かい行政への対応を、本当に面
倒臭いと思いながらも、やらなきゃ設立できねぇし、一語一句違ったとしても
意味が変らなきゃどっちでも良いだろうが!って言いたくなるのを堪えて、本
当にくだらねぇ、他にやる事はいくらでもあるだろうが、と思いながら手続き
をしている最中に担当者が聞いてきた。「武井さん 何でNPOにするのですか
?」すぐさま答える。「あんた達行政がやらないからだよ」「えっ? どうい
う事ですか?」「あのね、仮に20才で社会に出た人が80才で亡くなったと
したら、60年間税金を払い続ける訳ですよね。だけど人生の中には谷もある
訳で、とても税金なんて払えない状況だとしても、支払わせるのが行政で場合
によっては差押さえもするでしょ? なのに、その人が亡くなっても何もしな
いのが行政だよね。ずっと税金を払って来た人なら市と、県と、国が、火葬だ
けでもしてくれたって、ちーっとも不思議じゃないと思う。・・・けどしない。
だから僕らがするんですよ」それを聞いてた担当者は「なるほどぉ」と言って
いました。更に僕の話は続きます。「でもね、行政だけの責任じゃなくてずっ
と黙ってきた国民にも責任はあると思う。だから、行政に対してやれ!やれ!
って遠吠えするより、実践を先行させようと思っているんですよ。いつか行政
が我々のしてきた事をしてくれるような時代が来たら良いなって思ってます」
担当者は少し考えたような顔をしてから「そうですね、そうなれば良いですね」
と言っていました。
千明から法人名はどうするのか?と言われた時、法人名に拘りの無い僕は、石
橋さんが作ったからブリッジ・ストーンでブリジストンだし、紀伊国屋文左衛門が
作ったから紀文って言うけど、どんな名前でも知名度が上がれば、それなりに
聞こえるもんだから、名前なんて何でも良い。
作ったから紀文って言うけど、どんな名前でも知名度が上がれば、それなりに
聞こえるもんだから、名前なんて何でも良い。
例えば、あんしんを支援するなら「あんしんサポート」だって良いって事だよ
と言うと、千明は「それ良いかも」この一言で決まった法人名です。
申請から2ヵ月半、法人登記されたのは6月の終わりですが、まだ法人化され
る前の6月半ばのある日、知り合いを通して突然、葬儀の依頼が入ってきたの
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