義父逝去の知らせを親戚にした時、叔母さんが入院している事を知って
見舞いに行くと素人の僕が見ても そう長くはないだろうと思える叔母が
ベッドの上で苦しそうな息遣いをしていた。 叔母さんは僕が育った店で
働いてくれていた人ですが、近所の幼馴染がお味噌のおにぎりを片手に
もう片方の手には茄子の丸漬けを持って遊びに来た時など、おにぎりが
美味そうで頼んでは作って貰った人です。 大人になってお盆で線香を
あげにいくと「お前は味噌のおにぎりが好きだよね 作ってあげようか?」
などと言われたものです。 その叔母さんが終幕を迎えようとしています。
従妹はこの時初めて、僕が葬儀の仕事をするNPOを立ち上げた事を
知ったのです。 2度目の見舞いで自宅地にある梅の木からすぐに咲き
そうな枝を切って持っていくと「もしもの時は頼むな」と言われたのですが、
従妹の家は公営住宅の5階なのです。 叔母さんの妹が見舞いに来て
いたので暫し看病を頼んで、従妹の家の様子を見に行きました。
エレベーターのある5階建ての5階にある住居は、安置をする場所もあり
その時に、何を片付けるか等の打合せも済ませたので問題はありません。
しかしエレベーターの鍵を誰が管理しているかが問題です。 もし役所や
エレベーター管理会社だったら、夜中の逝去には対応できないからです。
「ねぇ住宅の人が亡くなった時は皆さんどうしてるの?」そう聞く僕に対し
「病院から車に乗って建物を一周したら葬儀社に行くんだよ」と言う。
「ん?誰も自宅に戻って来ないの? 自宅は駄目って決まってるわけ?」
そう聞き返すと「そうじゃないけど・・・集合住宅だからさぁ みんな近所に
気を使ってるんじゃないかな」と従妹は言う。 「そっか・・・で、叔母さんを
自宅に連れて帰る気は無いって事?」再度聞き返す僕に従妹は言った。
「そんな事ないよ。本当は退院できると思ってたからさ 退院後は自宅で
ゆっくり療養させたかったし、帰れるなら一晩でも帰りたいのが本音だよ」
それを聞いた僕は「なら帰れば良いじゃん 後悔したくないなら帰るべき
だと思うし、僕が連れて帰ってあげるよ。 ただ問題はエレベーターの鍵
だからさ、誰が持ってるか知ってる?」 すぐに「多分、管理人さんが持っ
ていると思うけど・・・」と言うので すぐに確認をしに行って貰います。
車の中で待つこと10分 帰ってきた従妹の彼はエレベーターの鍵を持って
きました。 僕が「鍵なんで持ってるの?」と言うと「管理人さんが持ってて
良いよ」って貸してくれたのだそうです。 これでいつ何が起きても安心だと
従妹を病院まで送ると自宅に戻ったのです。
日付が変わって、そろそろ寝ようかとした12時40分頃 叔母さん逝去の
一報が入りました。飛び起きて、事務所に向かい、搬送準備をしドライ
アイスを取りに行き、午前2時隣接市の病院にお迎えに行きます。
数時間前にエレベーターの鍵は預かっているし、もしもの時の打合せも
済んでいるので、安置部屋の設営やら化粧等は順調に進み、最終的な
打合せを済ませると暫し雑談となりました。
叔母さんの思い出話や、日頃の暮らしぶりなど話していると、この時期
毎年行く場所があったと言います。 そこで「ならそこに行くかい?」という
僕に「えっ!? 本当!・・・でも良いよ遠すぎるもん・・・」と従妹は言う
「遠い? 何処なの?」と聞き返すと「埼玉県の長瀞だからさ無理だよ」
寂しそうな、はにかんだような笑顔で従妹は言います。 ・・・つづく
次回『孝行息子に無後悔のお手伝い』です
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