みなさんこんにちは。

技工士の飯塚です。

 

金属系材料…高分子系材料…セラミックス系材料と、歯科材料の分類についてざっくり書いてきましたねOK

今回は、金属系材料…「鋳造用金属・貴金属系」について詳しくお話します。

 

補綴装置には、金属、高分子、セラミックスなどが幅広く使用されてきました。

これらの材料にはそれぞれ利点・欠点はありますが、専用の歯科技工技術の開発とともに、これらを単独に、また組み合わせて補綴装置を製作してきました。

 

金属の利点は、合金化による強度改善、特に靭性を有すること爆  笑 欠点は、腐食と歯冠色を再現できないことガーン

腐食しない金属元素は金、白金、パラジウムなどの貴金属です。

そこで合金の耐食性を確保するために貴金属を一定量以上配合した貴金属系合金が使用されます。

代表が18カラット以上の高カラット金合金。

 

また貴金属を利用しない合金で、表面に不働態被膜を生成して耐食性を担保する合金も利用されます。

こちらは非貴金属系合金で、代表がコバルトクロム合金とチタン合金です。

 

①貴金属系合金

 

タイプ別金合金

近代の補綴治療の発展に貢献したのは、エアタービンによる歯質の高速切削、精密印象材、ロストワックス精密鋳造である。

金属は合金化により融解温度や強度を調整できます。

そこで金に銅および銀を配合した高カラット金合金をもとに、米国歯科医師会でタイプ別鋳造用金合金の規格が整備されました。

 

この合金はブローパイプ炎で融解可能であり、対象装置に合わせた金合金を利用すると、支台歯に高度に適合し、耐久性と耐食性に優れた補綴装置がルーティンに製作される。

タイプ別金合金を基に、代用合金として非常に多くの合金が開発され臨床に利用されてきました。

 

・ポーセレン(陶材)焼付用合金

歯冠色を再現できるポーセレンは、焼成による形態再現や適合性の回復が難しく、さらに焼成体は脆性でした。

この欠点を解消するために、金属焼付ポーセレンが開発された。

 

焼付用合金にはポーセレン焼成温度以上の耐熱性が必要になるので、タイプ別金合金は融解温度が低く使用できません。

さらに強固な焼付をするには合金の熱膨張係数をポーセレンに近似させることが必要になります。

これらを満足させるために、銀や銅を排除し金、白金、パラジウムを主成分とする焼付用金合金が開発されました。

鋳造はブローパイプ炎では融解できないので、電気抵抗炉を利用します。

 

・金銀パラジウム合金

わが国ではタイプ別金合金の代用として、鋳造用金銀パラジウム合金が開発され、保険収載されて多用されてきました。

この合金は、銀を主成分とし、パラジウム20%、銅を12~20%、さらに金を現在は12%以上配合しています。

1960年代に保険収載用に組成が整備された当時は、銀に硫化を防止するために金を配合するよりはパラジウムが価格の点で効果的でした。

金は合金の鋳造性を改善するために有効で、歴史的に金含有量は多いときで20%、少ないときには2%まで変動している。

 

この合金はブローパイプでの融解が可能であり、熱処理硬化性も有しているので、タイプ別金合金の強度をカバーし、インレー、クラウン、ブリッジ、クラスプと幅広い用途に対応。

保険診療の万能合金として長年利用されてきた。

 

金属組織に関しては、固溶体中心の金合金に対して共晶組織をベースにした金銀パラジウム合金では耐食性が劣る。

また、繰り返しの変形に対する疲労強さでも劣っている。

しかーし、日常臨床ではほとんど問題になりませんウインク

 

企業の努力でクリストバライト埋没材の品質が安定し、全国どこの歯科技工所でも安定した適合性の歯冠修復が可能になりました。

スマイル時に上顎の小臼歯部に銀色のクラウンが見えるのは先進国民としては日本人だけだと揶揄されてきたが、この合金のお陰で日本人の口腔機能が高く保てたのは間違いない。

 

1980年代の金の高騰、2000年代のパラジウムの高騰、さらに過去10年間の貴金属の高騰により、金銀パラジウム合金の使用が保険診療として妥当かどうかの議論もあるそうだ。

 

現在では、コンポジットレジンを利用したいわゆるCAD/CAM冠や、鋳造用チタンが保険に導入されているが、保険収載材料としての物性の点からは金銀パラジウム合金の優位性が高いと思う。