政府が今年6月上旬にまとめる経済財政運営の指針、通称 “骨太の方針”に、全国民に毎年の歯科健診を義務付ける”国民皆歯科健診” の導入に向け、検討を始める方針を明記することが大きく報道されました。

 

65歳以上の高齢者は、自身の歯を多く残す人ほど健康を維持しやすく、入院回数が少ないことが明らかになっています。逆に歯周病などを放置すれば糖尿病の合併症など大きな病気につながる可能性が指摘されています。

日本糖尿病学会の“糖尿病診療ガイドライン”では、①歯周病は,慢性炎症として血糖コントロールに悪影響を及ぼすことが疫学的に示されている ②歯周炎の重症度が高いほど血糖コントロールが困難になる、と記されています。そして、2型糖尿病では歯周治療により血糖が改善する可能性があり,推奨される、と明記されています。

 

言うまでもありませんが、歯を多く残すには、歯周病などの早期発見と治療が重要になります。しかし、日本では歯科健診の受診率が低く、義務化しているのは1歳半と3歳の乳幼児、就学時や小中高生の学校健診、歯に有害なガスを業務で扱う人などに限られています。歯周病が発症し進行する成人以降において、口の中の管理は本人任せの状態です。しかし、仕事が忙しくて歯科検診や治療は後回しになってしまう現実があります。

 

実際、全国の約7割の自治体では、健康増進法に基づく歯周病対策の検診なども実施しているのですが、受診率は1割にも満たないのが現実です。それに比べて歯科の先進国である北欧の国の定期的な検査やメンテナンスに通っている率は8割以上に達しています。

 

今回の国民皆歯科健診の具体的な手法として、健保組合などが毎年行う健康診断の際に唾液を提出してもらい、歯周病などの可能性がある人を受診につなげる案が浮上しているとのことです。これは歯周病の悪玉菌のPCR検査のことと思われますが、簡単に歯周病の傾向やリスクを判定できる合理的な方法だと思われます。

 

“元気で長生き”するのために、歯の健康が重要であることが広く認識されつつあることは喜ばしいことです。

最善の策は予防と初期の段階の治療です。

 

 

By のりはる