前回お話ししたように、“世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事”元長食(元気で長生きのための食事)に関しての、前振りのお話しをしたいと思います。

 

先ずお話ししたいのは、食習慣とは毎日の積み重ねであり、何ら問題意識をもたないで食事をしている人と、問題意識をもって食事をしている人では、元気で長生きという観点からの違いが少なからず生じてしまうことです。そして、食の問題意識を持っていない場合、食習慣はそれまでの家庭での習慣に依ることになり、その習慣から抜けだすのは容易でないということです。

 

私は、大学卒業後に留学のためニューヨークに住む機会を得ましたが、食に対する意識が高いとされるニューヨーカーでさえ現在ほど食に対する配慮はなされているとは言えなかったと思います。ただ、多くの人がジョギングやスポーツジムを欠かさずに通っていることは印象的でした。

 

地方都市であるテネシー州のメンフィス市で会合があった際に、ごく普通のレストランに立ち寄ってアイスクリームを注文することがありました。出されたのは、プレートにあふれんばかりの大量のアイスクリーム(10個以上、しかも安価!)であり、店員に尋ねるとみなその位一人で普通に食べるのだそうです。案の定、街にはメガサイズの人があふれていました。食習慣の傾向もあってか、米国では死因の1位は長い間循環器疾患であり、同国における公衆衛生の最大のターゲットは長年にわたって“肥満”や“コレステロール”です。

 

イメージ図

 

ところで、手作りの食事とファーストフードやコンビニ弁当とで、どちらが体に良いかと聞かれれば、ほとんどの人は手作りの食事の方が良いと回答すると思います。また、スーパーなどの店頭に並んでいる食品を買う際に、先ず、裏のラベルにある食品成分や添加物をチェックする方も多いと思います。添加物が少ない方がより体によいことを誰もが認識しているからです。

 

近年、食品の成分や加えられる添加物の評価に加えて“超加工食品(Ultra-Processed Food)”という概念が提唱されています。超加工食品とは、食品を加工の度合いで分類した場合に最も加工程度が高いランクに入る食べ物であり、ブラジル・サンパウロ大学公衆衛生学部の研究者らが考案したNOVAという食品分類法に基づいています。

 

NOVA分類

グループ1: 未加工あるいは最適限度加工した食品

グループ2: 加工した料理素材. (例)海水から作った塩, オリーブや種をつぶして作った植物油, 牛乳から作ったバター

グループ3: 加工食品. (例)缶やビン詰めの野菜・果物・豆類、塩または砂糖漬けのナッツ, チーズ, 燻製肉, 未包装の新鮮なパン

グループ4: 5種類かそれ以上の多くの素材を含み工業的に加工されたもの. ( 例)炭酸飲料, 包装されたスナック菓子, アイスクリーム, チョコレート, 大量生産されたパン, マーガリン, クッキー, ケーキ, ピザやパスタなど温めるだけに準備された製品, ナゲット, ソーセージ, ハンバーガー, インスタント麺

 

この分類に沿って超加工食品の消費量に着目し、がんにかかるリスクの関係を調べたフランスの研究結果が、2018年2月に発表され、日本では週刊誌などでも報道されました。フランスの成人約10万人(うち女性が約8割)を平均5年間にわたり追跡調査。食事中の超加工食品が占める割合の高さと、がん全体、乳がんのリスクの上昇との間に関連が認められました(割合が10%多いと、がん全体のリスクが12%、乳がんのリスクが11%上昇)。前立腺がん、結腸直腸がんには有意な関連が認められませんでした。

 

また、2019年5月には、死亡リスクとの関連をみた論文が発表されました。スペインの20歳から91歳の約2万人を対象に、超加工食品を食べる量に従って4つのグループに分け、全死亡率との関連をみたところ、最も多い人のグループは最も少ないグループよりも死亡のリスクが高く、摂取量が増えると死亡率が比例して上昇するという結果でした。

 

これらの研究結果の基となったNOVA分類に関しては、その定義が恣意的であり、特異的でない(≒科学的でない)、との指摘もあるようですが、人の手を加えられた食品程、“がん”や“肥満”を作り出しやすいという事実を、大規模なコホート調査から初めて導きだしたこと、食品加工にはリスクが伴うことを世界中に示したことには大きな意義があると思います。

 

食品の裏ラベルに話が戻ります。日本では凡その食品添加物の種類が記載されていますが、食におおざっぱな(失礼!)米国と比較して詳細には記載されていません。たとえば、pH調整剤(食品を腐りにくくする)はその種類はとても多いのに、日本ではメーカーに詳細を記載する義務はありません。

 

そして最大の問題は、一つ一つの食品添加物に関して、発がん性は厳格に検査・管理されているものの、多種類の食品添加物を組み合わせた場合の相互作用については、全く調査されていないのが現実であることです。つまり、食品添加物A単独では健康に害がないものの、食品添加物Bと同時に使用された場合に、それが健康にどれほどの影響を及ぼすのかを私達は知ることが出来ないのです。もっとも、食品添加物の組み合わせは数限りなく存在るため、相互作用の解明を難しくしていることは容易に想像できます。

 

これまでに解明されてきた事実から、私が考える賢明な元長食とは、科学的にからだに良いことが証明されている食品を、なるべく添加物のない状態で食べることと要約できます。

 

 

次回より、この考えに基づいた元気で長生きに繋がる食品、避けたい食品や、食べ方を解説していきます。

 

By のりはる