こんにちは。

今回はサージカルガイドについてお話していこうと思います。

 

皆さんもご存知の通りサージカルガイドはCTデータを元に設計した理想的なポジションにインプラント体を埋入するための装置であり、単独歯欠損から無歯顎まで幅広く使用されています。また、埋入深度や角度等も自由に設定できるため隣在歯の歯根、下顎管、上顎洞が近接したケースなどにも有効的とされています。

  

  

(写真はAll-on-4のパイロットドリル専用の粘膜支持サージカルガイド)

では、サージカルガイドの精度はどの程度なのでしょうか?どの程度信頼できるのでしょうか?

  

  

ガイドの誤差を調査したシステマティックレビューでは、起始点で1.2mm、ドリル先端で1.4mm、角度は3.5°であると報告されています(A Tahmaseb et al, 2018 )。

  

  

また、フリーハンド(ガイドなし)、パイロットドリルガイド(最初のドリルのみガイド使用)、フルガイド(埋入までガイド)を比較した臨床研究では、インプラント先端部のずれはフルガイドで平均1mmと最も精度が高く、パイロットドリルガイドでは平均1.5mm、フリーハンドでは平均2.0mmのずれを認めました。尚、フリーハンドでは最大4mm以上のずれが報告されています(F Younes et al, 2018) 。

  

  

粘膜、歯、骨で支持されるガイドの精度を比較したシステマティックレビューでは、粘膜、歯牙支持間に有意差は認めず、骨支持が最も精度が低い結果となりました。(Y Natali et al,

2016)

  

  

また、遊離端でのガイドの使用は中間欠損と比較した場合、顕著に精度が低下し、最大16°の角度誤差が報告されています(E Naziri et al, 2016)。遊離端において誤差が大きくなる理由として、粘膜支持によるガイドの沈み込みや臼歯部で開口量が制限される事などが考えられます。

  

  

さらに、インプラントの長さによる精度の比較では、インプラントの長さが長くなるほど精度が落ちるという報告があり、9mm以上のインプラントで顕著に低い精度を示しました。(E Naziri et al, 2016)。

  

  

以上よりサージカルガイドには多少の誤差がある事がお分かりいただけたと思います。そのため、ガイドを過信しすぎず、2mm程度の安全域を設定する事が必要になります

臨床ではガイドの適合が悪い場合や開口量が少なくドリルが入らない場合があるため、事前にチェックしておく事が大切かと思います。また、抜歯即時埋入では事前にガイドの試適ができないため、万一ガイドが使用できなくても、ある程度正確な位置に埋入できるスキルを身につけておく事も必要かと思います。

 

 

 

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インプラントに関するエビデンスに基づく情報を上げているので是非ご活用ください。

 

 

歯科医師 井汲玲雄