お口の中には700種類もの細菌が生息していると言われています。それらは、身体に有益な善玉菌、有毒物質を作る悪玉菌、免疫力が低下すると悪玉菌として働く日和見菌で構成されています。

 

当院では位相差顕微鏡を使用しすることにより、患者様にお口の細菌を実際に見ていただくとともに、その種類や量を定期的に検査します。

 

位相差顕微鏡とモニター

 

位相差顕微鏡とは、光学顕微鏡の一種で、口の中の細菌を確認できる特殊な顕微鏡のことです。位相差顕微鏡検査では歯周病の原因菌が確認できるため、その人に合った治療方法や歯周病の進行リスクがわかるようになります。

 

そもそも、生まれたときには人の口の中には歯周病菌は存在しません。もともといない歯周病菌がなぜ口の中にいるのでしょうか?答えは人からうつされているのです。子供の場合は家族からうつることが多く、両親・家族から幼児への感染がほとんどです。

 

縁上プラーク(歯肉に付着しているプラーク)を構成する細菌は、酸素のある環境下で生きられる好気性菌であるナイセリアやノカルディアがあります。また、酸素のない環境を好むものの、酸素がある環境下でも生きることのできる通性嫌気性菌である連鎖球菌やアクチノマイセスが大多数を占めています。

 

一方、縁下プラーク(歯肉の下のプラーク)を構成している細菌は、グラム陰性菌であるプロフィロモナス・ジンジバーリス(P.g菌)やプレボテラ・インターメディア(P.i菌)、タンネレラ・フォーサイセンシス(T.f菌)などがあり、更にグラム陰性菌でらせん型をしたスピロヘータが多数を占めます。

 

これらのうちで、最も歯周病と関連が深いとされる3菌種(P.g菌、T.f菌、トレポネーマ・デンティコーラ( T.d菌))は、レッド・コンプレックスと呼ばれます。このレッド・コンプレックスの他に、アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(A.a菌)が、歯周病の発病に関連の深い菌種と考えられています。

 

①  P.g菌

偏性嫌気性のグラム陰性桿菌で、強い付着力を持つので、他の歯周病原性グラム陰性菌とくっついて、バイオフィルムを形成します。また、ジンジパインと呼ばれる蛋白分解酵素を産生するだけでなく、細菌の内部の毒素(内毒素:ないどくそ)であるリポ多糖体(LPS)を持っています。

 

②  T.d菌

嫌気性のグラム陰性菌で、らせん状の形をしていて錐揉み運動をします。この菌は、歯肉の細胞間の隙間から組織内に入り込み、さらに血管の中に侵入します。また、タンパク質の分解酵素と免疫抑制因子を産生します。

 

③  T.f菌

嫌気性のグラム陰性菌で、紡錘状の形態をしています。この菌もタンパク質の分解酵素を産生するだけでなく、P.g菌と同様に細胞の外膜に内毒素を持っていて酵素も産生します。

 

④  A.a菌

通性嫌気性のグラム陰性桿菌で、身体の免疫反応の際に働く細胞である好中球を壊すロイコトキシンという外毒素(細菌が菌体外に産生する毒素)を産生します。

 

当院では、以上のような歯周病菌の存在を、位相差顕微鏡検査とDNA細菌検査と組み合わせて診断しています。

 

歯周病患者さんの位相差顕微鏡像

活発に動いている菌が歯周病に深くかかわる細菌です。

 

 

by のりはる