北関東の人から、車用の時計修理を依頼されました。

懐かしい車用電気時計! Jecoの時計です。

持ち主の方が出来るとこまで分解されたようです。外装ケースがありません。 

電源につないでもウンともスンとも動きません。で、ちょっと分解・・・

これ12Vの電気時計ですが、りっぱな機械式です。 機械式のぜんまい部分がモーターになっているだけです。 

白いのがモーターです。 その先はギヤで減速し、テンプとガンギ車とアンクル(この時計はアンクルの爪が丸鋼線です)というガチな機械式です。 

針を抜いて・・・分解・・・分解・・・

・・・ごめんなさい写真はここまでです。

ここから先は老いた脳みそにとっては重労働の、気をつかう工程なので、写真撮る余裕はありませんでした。一気に原因追及→修理加工→洗浄→組み立てまで持っていきます。

間が開くと気を使う部分を失念するんですよ。 

 

で、何が悪かったかというと、ガンギ車の爪の奥が摩耗していました。

摩耗の相手はアンクルの丸鋼線です。ガンギ車は真鍮なので長い間に摩耗したんですね。

幸いモーターは生きていました。 良かった~ これなら直ります。

 

WEBで「時計・ガンギ」と検索すると、いっぱい絵が出てくるのですが、写真が無いので、ちょっと参考までに近い構造の別の絵です。

                             

この絵はアンクルの爪が平らですが、Jecoの時計はアンクルから丸鋼線が垂直に立っており、この丸鋼線の腹でガンギの爪をはじいています。

丸鋼線は硬いので真鍮製のガンギの爪を摩耗させてしまったのですね。

これが修理後の状態ですが、透明カバーが邪魔でよく見えませんね。

アンクルの丸鋼線は写真ではわかりにくいですが2本あります。これがガンギの爪の摩耗させ凹んだ部分に引っかかり、ガンギ車をロックしてしまいます。

 

修理は、このガンギ車の爪一つ一つを 適当なサイズの金属丸棒に極細コンパウンドを塗って手で研磨します。 といっても数回舐めるだけ。 全てのガンギの歯が同じになるように同じ回数、同じ力で擦っていきます。

拡大鏡を顔につけて行いますが、それでも老眼にはとてもつらい作業です。

 

研磨が終わったら、金属ギヤとギヤホルダー全てをベンジンでジャブジャブに洗浄します。樹脂歯車は薄めた中性洗剤で洗います。 双方とも洗うときは絵の具の細筆をつかいます。

 

最後に油を塗布します。 時計用の油をベンジンで適当に希釈し、ピンセットや針先で塗っていきます。 で・・・完成してエージングです。

こんな感じで一日動かしては、速度調整を繰り返します。

なかなか微妙ですが調整3日目に、日差10秒程度になりました。あとは持ち主に調整方法を教えてやってもらいます。 修理して新たに組んだ時計は、運針が安定するまで数か月かかります。 19セイコーの機械式懐中時計なんか安定するのに半年以上かかりました。

 

なんか変な場所でエージングしているようですが、アンクルが丸鋼線でケースもないので、音がうるさくて台所の隅で動かしています。 車の中だと気にならないのですが、昔のぜんまい式の振り子の掛け時計よりうるさいです。 キン・キン・キン・キン・・・・

ちなみにテストに使っている電源はこれ・・

いや~便利です。大活躍です。 試しに450Lの冷蔵庫動かしてみたら2時間以上動きました。災害時は重宝ですよ~

 

もし動かしたい昔の時計があって、時計屋さんに修理断られて(多分ほとんど受けてくれませんが・・・)ダメもとでもよかったら、ご相談くださいね

では!