読み終えた直後の感想は、

オチが現実とかけ離れた、面白くない話だなというところだろう。


しかし、改めて考えてみると、

すべてが現実離れしているとは言い切れないなと感じた。


子供に対するインターネットの危険性であったり、

インターネットがもたらすコミュニケーションの変化。


本書が書かれたのは8年前。

ここで書かれている問題点は今、より鮮明になっている。

いや、過去、問題点だったことが、異常だったことが、

今ではそこまで問題視されなくなっているのでは?

と感じることもある。


本書を読んで、小説はただのエンターテイメントではなく、

社会へ意見を述べる、または問題提起するツールだということを、

改めて感じた。


「チームバチスタの栄光」とは見せ方は違うが、

問題提起をしているという点では共通点を感じた。

仕事ができると尊敬している上司と会話をすると、

議論になっていることをホワイトボードに図で書いてまとめてくれることがある。


上司はすごく物事をシンプルに考えるし、理解力もあるし、

議論をまとめる力があるなと感じた。


この本を読んで、その力の秘密が少しわかった。


物事を図で考えることで、思考力がアップし、

シンプルに考えられるようになり、理解力が高まり、

議論をまとめる力がつくのだ。


本書は図を描くことを

「考えたものを書くのではなく、書くことで考えるのです」と述べている。


自分は、今までプレゼンの資料などをわかりやすく、かっこよく見せるために、

図を使っていた。


書くことで考えるという視点が欠けていた。


図を書くことで考えるという思考パターンを身につければ、

上司のようなビジネスマンになれるはずだ。

さすが道尾秀介。


読者にこれでもかというくらい思い込みを与えて、

最後にぐっとひっくり返す。


読者が勝手に結論を想像させるような様々な事実を描写し、

同じ事実なのに、違う結論に導く。


解説で、道尾秀介はミステリーを書いているのではなく、

人間を描くにはミステリーが一番合っていると書いてあった。


たしかに、巧みなトリックに目が行きがちだが、

人間の内面が素晴らしい筆力で描かれている。


全体的には大変重たい内容だが、

最後に希望を与えてくれる。

そんな作品だった。