外出 | 人生をピンセットでつまむ

外出

おれは目を覚ました。

ピンボケの頭のままで、

テレビの上に置かれたデジタル時計を見る。


2:37


カーテンの隙間からは光が見える。

そして、おれは昼過ぎである事を知る。

明るいというよりは光度の弱い光が部屋へと注がれ、

曇り空か、或いは雨降りであろ事を想像する。

おれはちゃぶ台に置いたマイセンの箱を取り上げ、

口元に運び火を付けた。


シュボ


安ライターは遊び飽きた玩具の様な音をたてる。

煙草を一口吸い込み肺にじっくり隅々まで回した後、

煙を惜しむ様に空に吐き出した。

行く当ても定まらない煙を暗い部屋のベッドで眺める。

外からは微かにトタン屋根を叩く雨らしき音が聞こえる。

おれは何も無い殺風景な部屋で、

こうして朝を迎えた。

いや、昼を迎えたのだ。

ありふれた日常に雨を降らし、

おれの休日が始まる。


そうだ、買い物へ出かけよう。

大好物のチョコを買いに出かけよう。

玄関に立てかけたビニール傘を持って、

おれはアパートを出る。


カチャ


古びたドアが、

老いた人の様に閉まる。