月光 | 人生をピンセットでつまむ

月光

ベッドに眠った女を背にして、

裸のままキッチンへと向かった。

テーブルに置いてある、

ラッキーストライクの箱から一本煙草を取り出し、

安物ライターで火をつけ黒い夜に白い煙をくゆらせた。

煙はくるくると螺旋を描いて上方へ上る。

それをやや眺めた後、私はウィスキーグラスを、

シンクの上にある棚から取り出し、

コンビニで買って来た氷を二つ三つ放り込み、

それにワイルドターキーを注いだ。

口から喉へと流し込むと、

ウィスキーがカッ!っと胸を熱くし、

ジワジワと滑り降りて行くのを感じる。

煙草の二口目を吸い、

また空に吐き出した。

部屋は窓から零れる月光に照らされ、

黒と青白いコントラストに包まれている。

女の体もまたその光に照らされ、

掛けた白いタオルケットが、

光と影を作った。

それは連なる山々が雪に包まれ、

月光に照らされているかの様だった。

美しい。

単純にそう思った。

立ったまま眺めつつ煙草を吸い、

ウィスキーを何度か口に含んだ。


やがて女は目を覚ます。

暗がりに立つ私を見て微笑んだ様に見えた。

私は女に話しかける。

「何か飲む?」

女はコクリと頷いて、

「水をちょうだい」

そう静かに告げた。

私は冷蔵庫からボトルに入った水を取り出し、

先ほどと同じ型のウィスキーグラスを棚から取り上げ、

それに注いで女へと手渡した。

女はそれをそっと口元へと運び、

サラサラと喉へ流し込んだ。

私は喉元とそれから胸元が小さく動いているのを眺め、

またウィスキーを一口喉に流し込んだ。

熱い液体が胃の底へと落ちて行った。

私の裸を月光に照らす様を見て、

女はベッドに横たわりクスクスと可笑しそうに笑って言った。


「綺麗」


その言葉の意味を反芻しながら、

煙草を吸って空へとゆっくり吐き出した。

くるくると螺旋描いて上って行く様は、

やはり美しいと思った。


私と女をそして空間を照らしているもの。


その月光が全てを包む。