ギン、そして幻想
ギンは生まれつき赤い瞳だった。
稀有な存在の彼はみんなからどこか恐れられた。
無口で蒼白の肌に赤い瞳。
背の丈は高校に上がる辺りには180cm程になった。
一人ぼっちだった、そんなギンに声を掛ける者が現れた。
その者の名は幻想と言った。
幻想はギンに何の躊躇いも無く接し、穏やかに笑い話しかけた。
やがてギンと幻想は長い時間を共に過ごすようになる。
名の通り誰をも煙に巻くような幻想。
そのヒョウヒョウとした雰囲気がギンには心地よかった。
「おいギン、俺に付き合え」
ある日、幻想はそう言ってある古びた小屋へと連れて行く。
河川敷の個人畑に佇むそんな体の小屋だ。
幻想はその小屋の扉を開け、ギンをその中へと導いた。
小屋は農具を収納している想像通りの小屋であり、
何故、幻想が自分をそこに連れて来たのかギンは思案する。
そんなギンの迷いを他所に幻想はごそごそと農具をどけ何かを探し出す。
「あったあった久しぶりだから手間どうな」
そう言って小さな正方形の木箱を手に持った。
「これは鍵だ」
言ってる意味が分からず幻想を見入り、やがて言葉を発する。
「鍵・・・?何の鍵だ?」
幻想は右口角をキュッと上げ、
「違う世界の扉の鍵さ」
そう答えた。
違う世界、違う世界、違う世界×幾ばくかの時
理解出来ないその言葉に、幻想の発言を待つ。
「違う世界に行けるんだよ、これがあれば、
だけれどこれの問題点は行きたい世界に行けるとは限らない所だ。
ただ、この先には自分を必要とする人やもろもろ、あるいは人型の者が待っている。
それはもしかすると僕らの生きる意味なのかもしれない。
ギン、君と出会ったのは偶然ではなく、僕は必然だと考えているよ。
僕は神の存在を信じない。
いや、自分が惹き付けられる力を神と言う言葉で片付けたくは無い。
僕らを必要とした者が呼んでいるんだよ」
そう言ってギンに視線を流した。
やや間を置いき、
「面白い、君は本当に面白い男だよ」
そう言ってギンは今まで見せた事のない様な生き生きとした、
赤いを輝かせた。
そうして幻想は箱の鍵を開けた。
正方形の物体はルービックキューブの様にカチャカチャと回転し、
幾度も意味を成しているであろう動きをする。
その瞬間、強烈な光が瞬いて世界が全て白くなった。
などと言うベタな演出は無く、
箱の動きが止まると小屋の壁に一つの扉が出来ていた。
幻想はギンにその扉を開ける様促す。
その先には箱が用意した世界が待っているのだろうか?
ギンはそんな事を考えながらそのワクワクを抑えきれずにいた。
新世界が僕らを待っている。
ギンも幻想もそんな思考を共有して、二人が顔を見合った。
二人の顔は夢を見る子供の顔に思えた。
それはとても、暖かかった。
暖かかった。
のだろう。