対岸 | 人生をピンセットでつまむ

対岸

四秒ほど前。


向こうの火山が噴火し、

赤、いやオレンジ色のマグマが山頂から飛び出していた。

そんな光景を対岸の砂浜から眺めた。

時は昼、快晴なパステルブルーの空が広がっており、

その横で力強く『生きている』と言わんばかりに山が、いや大地が主張している。

今居るこの場所には被害のない程度と思われる噴火だった。

だが、次の爆発は違った。

それは高く、それは高くオレンジ色のマグマを上空に吹き上げ、

天まで届きそうな勢いで駆け上がった。

まるで生き物だ。

いや、これは生命の息吹なのだから、

『まるで生き物』と言う表現はおかしい。

生き物そのものだ。

エネルギーの塊だ。

その光景を目の当たりにし、

初めて逃げなければと思う。

だから砂浜を対岸の山から遠ざかるように走る。


走る 走る 走る


周りにはあたふたと逃げ惑う人々が見える。

砂まみれで絶叫した人々が見える。

さっきまで穏やかだった砂浜には不釣合いな光景が広がっている。

私もその一人だ。

ビーサンは脱げ何処かへと行ってしまい、

熱く焼け焦げた砂浜を駆けている。

そいうして、逃げ惑う人々の中に異質な雰囲気の、

狐の面を付けた者達に囲まれ、捕らえられる。

次から次へと砂浜にはマグマや岩石が落下する。

それは恐怖であり、その者達にも恐怖を覚える。

明らかにそれらからは友好を感じる事はない。

恐怖に恐怖が重なる。

そうして、私は捕らえられる事となる。

ここから何処へ行くのだろう?

変化はいつも突然にやって来る。

それは私の意志を尊重する事はないのだ。

またこうして、新たなステージが目の前へと運ばれた。


走る 走る 走る


だが、逃げる事は出来ない。

それは気づかぬ内にすぐ傍まで来ている。

そうして全てを受け入れる。


マグマはゴウゴウと音を立て対岸の山から噴き出している。

アレは生のある赤だ。

いいや、オレンジだ。

捕らえられた私はそんな事を思っていた。