突起物現る
朝起きると何だか額に違和感を覚えた。
なんだろな? などと寝ぼけまなこで思いつつ、
ぼさぼさの寝癖頭をポリポリとかいた後、
違和感のある場所をなでなでしてみた。
なでなでしてみたその部分は、
何やらぽっこりと隆起している様である。
額の中央、眉毛と生え際の間にそれは現れた。
なんで突起物? と思いながらも、
ベッドから起き上がり、カーテンを開け、
太陽光を体いっぱいに浴びた。
そして、僕は大きなあくびを一つし、目じりに涙を溜める。
また額に手のひらを当て、なでなでしながら、
紺と白のしましまのパジャマ姿でキッチンへと向かった。
まず冷凍庫を開け、カチカチに凍った食パンを取り出す。
それをトースターに突っ込み、カチャリとレバーを下げた。
じじじじじ~っとトースターが音をたてている。
それからまた冷蔵庫を開け、今度はパックのオレンジジュースを取り出し、
コップになみなみ注ぎ、まず一杯それをごきゅごきゅと飲み干す。
僕はいつものように、ぴゅひゃっと声が漏れた。
朝はいつもこうして始まる。
ガチャ! パンが飛んだ。
僕は香ばしい香りを漂わせるカリカリに焼きあがった食パンを、
親指と人差し指で摘み皿に乗せた。
バターか? はたまたチョコか?
僕は迷いつつもチョコの容器を手に取り、
それをナイフで熱々の四角形にまんべんなく塗りたくった。
香ばしい匂いから甘い匂いへと変わり、
僕は目をつぶってその香りを楽しんだ後、
さくさくと心地よい音をたてながら、もぐもぐと食べた。
そして、オレンジジュースを流し込んだ。
チョコの甘みとオレンジの酸味が、
口の中で混ざり合いがっかりな結末を迎え胃へと落っこちて行った。
失敗失敗。
この組み合わせはいつも失敗でがっかりだ。
だけれど僕は同じ事を繰り返し、
その度にペチッ! っと額を一つ叩きその失敗を表現した。
今日もそれは同じである。
ペチッ!
いつもとは違った感触が手のひらに伝わり、
額に現れた突起の事を思い出す。
僕はまた、なでなでしてそれを確かめる。
角の様に現れた突起を、なでなでしていると意外に落ち着く。
そうして僕はいつの間にか、なでなでする癖がつく。
そのせいか分からないが、突起が徐々に大きくなって、
やがては直径3cm、高さ5cm程の円すいみたいになった。
これはまさしく角以外の何ものでもないと思われる。
僕の額に角が生えた。
それを愛おしく愛おしくいじる。
なでなで
なでなで
なでなで
なでなで
キッチンの椅子に腰掛けながら、
僕は、ふとグラン・ギニョール の事を思った。
あの劇場で演じる事を夢想した。
一角になった僕は、カリカリの食パンをまた頬張った。
甘い香りが口いっぱいに広がる。
こうしていつもと変わりない一日が幕を開ける。
なでなで
もぐもぐ