輪 | 人生をピンセットでつまむ

目の前に直径1m程のリングが現れた。

白くテラテラと輝く様なリングは、

私には何を意味するのか分からず、

リングの穴の向こう側にはのっぺりとした黒色がある。

私はその黒色に持っていた吹き矢を吹き付ける。

直線的に飛び出した矢はその黒色に刺さる事無く、

その向こうへと飲み込まれた。

私は意を決してその輝くリングに手を掛け、

その内部へと瞼をギュっと閉じ足を踏み入れる。

そうしてややの間を置き、

ゆっくりとその閉じられた瞼を開ける。

すると目の前にはどんよりとしたチャコールグレーの曇り空が広がり、

川幅の広い運河があった。

その光景を私はじっくりと細めた目で眺め、

ポケットに仕舞ってあったマイルドセブンライトを取り出し、

Theダイソーの100円ライターでショボッと火を点けそれをくゆらせた。

紫煙はわずかばかりの吹いた風に流されたゆたい、

私の髪もそれと同時に不規則な形を描き揺れた。

すると目の前の藍色の運河には青白い大きな物体が漂った。

それはこの世界の生き物なのだろう。

その生き物は不安を抱かせる藍色の運河を、

優雅な出で立ちで泳いでいる。

私はマイルドセブンライトを履いていたエンジニアブーツのソールに、

グリグリと擦り付け火種を消した。


次に目をつぶれば私はあの六畳の畳の部屋に戻っているだろう。

こうこうと照らす裸電球が眩しくてきっと私は目を伏せる。