球体 | 人生をピンセットでつまむ

球体

気がつくと目の前に直径10cm程の球体がゆらゆらと浮かんでいた。

私はそれをぼ~っと眺めながら、

ある人に言われた事を、ふと思い出した。

ある人は言った。


あなたは丸い球体の様な物をいつも大事そうに抱えている。

優しく優しく両手でそれを包み生活をしている。

他人にそれを決して触れさせる事はない。

触れようとすればそれをさらりとかわす。

そして、更に細心の注意を払い球体を抱える。

球体の中身は何だろか?

そう思い考え、数年が経った。

そして、ある結論を出した。

その球体の中身は、何も入っていない。

何も入っていない球体をあなたは大事そうに抱え生きている。

そう結論付けた。


私はそんな事を思い出し、

目の前の球体をひとしきり眺めた後、

それに手を伸ばし、ゆっくりと球体を開けた。

中からは一人の小さな人が飛び出した。

小さな人はこちらを向いて目の前に立った。

私は小さな人をまじまじと眺めた。

そして、気づいた。

それは小さな私だった。

私は思った。

ある人が言った通りだ。

私が抱える球体の中身は、

やはり、


カラだ。