休日とカー
光沢のある黒色のホースハイドの革袋を頭から被る。
目元、口元には穴が開けられ、
そこから世界は見えるし、息も出来る。
首元には何重にも巻かれた荒い革ヒモで、
革袋が容易には剥げない様してある。
私は首元に絞めつけられる感覚を覚えながら、
椅子に腰掛け外界をその二穴から眺める。
太陽光の幾本もの直線的な陽が差し込む部屋から、
外の青々と茂った芝生の庭が見える。
スプリンクラーは勢いよく周り、
周囲にキラキラと太陽光を反射し水が飛散される。
私はソレをただ眺めていた。
休日のありふれた光景を何の感情も持たず、
椅子に座り続ける。
あ、そうそうこの家には私以外は誰も住んではいないし、
新聞配達と伝道師とポストマン以外はほぼ訪れることはない。
ひっそりとした生活音だけがその部屋に鳴っている。
会話と言うものはその家には流れていない。
私はその場所に座る前に用意したコーフィーを、
もう既に冷めてはいたが喉へと流し込んだ。
苦味が舌を撫で入れた砂糖の甘みがほんのりと後に残った。
美味いとも不味いとも言えない味に妥協点を求め納得した。
休日はこのように流れ、
目の前の世界は穏やかに通り過ぎている。
私はもう既に止めていたシガレットの事をふと思い出した。
あの煙を宙にくゆらせその時を楽しむ事を、
革袋の中で瞼を閉じて思った。
ユラユラと頭上に紫煙がうねっては消えて行く。
私は突如として閃いたイメージを、
実行する為に椅子から立ち上がり車庫へと駆け出した。
ブロロロロロロロロロロロロロロロロロ
キーを回すとフォードマスタングは息を吹き込まれ、
心地よい音で空気を揺らし私にその感覚を伝える。
走り出す。
私は頭に描いた場所を目指し66号線を走った。
太陽は西へと傾き辺り一面を茜色に染めはじめた。
私の好みの時間がもうすぐやってくるのだ。