春も読む | 人生をピンセットでつまむ

春も読む

安部公房の『箱男』を読み終えた。

目の部分にのぞき穴をあけたダンボール箱をかぶり、

そこから世の中をのぞき生活する男達の話なのだが、

全体に漂う怪しさや箱男という異様なキャラクターが、

映像として頭に浮かび易く、それが文を追うごとに、

生々しくなって行く様で非常に不気味だった。

テイストとしてはどこか江戸川乱歩の『人間椅子』を思い出させる作品だった。

そして、読み終えた後まったく理解できない事に気づいた。

『どいうこと??』と頭が混乱し、

気になる箇所を読み直したりしてみたものの、

やはり理解できなかった。

だが、私の心にしっかりと刻まれる作品だった。

意味不明だがこれは面白い。

今度、暇があれば主人公の様にダンボールを被って過ごしてみたい。

その姿はきっと不気味な事だろう。


で、次にちょっと気になっていた伊坂幸太郎の『死神の精度』も読んでみた。

あらすじとしては、人の姿として現れた死神が死の対象者を七日間監視し、

『可』か『見送り』を判断するお話。

今まで何だかんだと伊坂作品を読んで来たのだが、

この作品はどこか今まで読んだ物とはちょっと匂いが違う感じがした。

それがどう言う事なのか考えてみたのだが、

全体的に話の内容や流れる雰囲気が暖かい感じで、

クールな主人公が更にそれを際立たせている様に思った。

考えてみれば今まで私が読んだ伊坂作品は、

殺人などが絡んだ切ない内容の物が大半だったので、

そう感じたのかもしれない。

それから、この作品の素晴らしい所はラストだと思う。

今まで読んだ伊坂作品の中で私はもっとも心地のいいラストだった。

読後、目を閉じるとラストシーンが頭に鮮やかに広がるのを感じることが出来た。

読書の幸せとはそういう所にあるのだと、ふとそう思った。