僕と女は夢電車で出会う | 人生をピンセットでつまむ

僕と女は夢電車で出会う

アナル和尚を尋ねて3000里程歩いて来たわけだが、

今だ和尚には出会う事が出来ず旅を続けている。

アナル和尚とトラベルの春。


朝、僕は目を覚ました。

悲しく微笑む女の人を思った。

あれは誰だろうか?


ぐるぐる回る山手線。

大量のブツを運んでは吐き出す物体。

終わりの無い回転。

永遠の食と嘔吐。

馬鹿騒ぎする若者。

新聞を広げるおやじ。

化粧をする女。

忙しなく携帯をいじる人々。

人目もはばからず愛し合う(かの様な)男と女。


僕の頭は混乱している様であるらしい。

虚構と現実の区別が付かないのは困るのだが、

ブルブルと頭を振るのだが、

景色は以前変わらない。


乗り換えるシルバーにオレンジのラインの電車。

血だらけで座るおやじ。

楽しげに歌う素敵な老紳士。

歌はフランク・シナトラ調だと感じる。
微笑む乗客達。

僕は携帯をいじる。

メールを打っているのではない。

思いついた文章を打っているのだ。


尻とパンツの間に割り箸を挟んで、

何本もへし折りつつ文章を打っている。

尻を、ギュ!!として折る。
ハッとしてグーならぬ。

ギュとしてボキッである。

トシちゃんもびっくりする程に、
尻の筋肉をギリギリと締め上げる。

そして、こう呟くのだ。

「ギャン玉をみくびるな、あの雨が止むまでは」

これはかの有名なダスコ・ヨークが述べた名言である。

それを呟く事で現実を取り戻すのだ。

虚構の列車から僕を引きずり下ろすのだ。

偉大な人物である。(そんな人物はいない)


こうして、オレンジラインの列車は僕を吐き出し、

車体をキーキーと鳴らし下り方面へ走り去った。

看板には『上福岡駅』と記されてある。

埼玉にある駅。


僕はまたあの女の人の事を思った。

悲しい微笑の彼女。

その映像が脳裏に浮ぶと同時に僕は走り出し、

反対側のホームへ停車している電車へと飛び乗った。

電光掲示板の表示は『終電』を記している。

だけれどもそんな事は関係ないと思った。

行かなければならないのだとそう思った。

そうして、上りの夢電車は走り出した。

帰って来れる保障はない。

そう思いながら車窓に流れる家々の光を出入り口の窓から眺めた。

まばらに灯った深夜の光達が左に流れる。


何だか蛍みたいだ。


僕はそれを車窓からいつまでも眺め続けた。

不規則な光は流れて行くばかりである。