喪失、軟禁、逃亡
ゴロゴロゴロゴロ
遠くの方で雷が鳴っている様だ。
私は白い布切れを着せられ、白い壁の部屋に居る。
そして、その部屋には鉄格子の窓が一つ取り付けられている。
私はそこから外を眺める。
この建物は小高い丘の上建っている様で、
目の前には青々とした草地が広がり遠くの方には町らしき物が見える。
ゴロゴロゴロゴロ
そんな景色を眺めるのにも飽きて、
私はまたドアノブに手をかけるが開く気配はない。
状況を考えるとすれば、
『閉じ込められている』
これが正しい事実であろう。
私はため息を一つついて備え付けてあるベッドに寝転がる。
ところで、私は誰で?なぜ閉じ込められているのだろうか?
この状況以前の記憶がまるでない。
私は目覚める前の事を思い出そうとするのだが、
一向に思い浮ぶ気配が無い事にやや呆れる。
ゴゴォゴロゴロゴロゴロ
雷が確実に近づいているのがその音の大きさで分かる。
すると扉の向こうから慌しい気配を感じる。
幾人もが走り回る?
そんな音が雷の音と共に聞こえてくる。
私はベッドから起き上がり、
窓の方に歩み寄り、雷の音のする方を眺める。
するとそこには見た事もない光景が広がっている。
地上で力を溜めるかの様に激しく渦巻いた電気と嵐の塊が、
周りの物を破壊しそして、一気に天に昇っているのだ。
遠くには燃え盛る炎が見える。
そして、ソレは確実にこちらに近づいているのが分かる。
ゴゴゴゴォゴロゴロゴロゴロ
私はすぐさまベッド横に倒しその影に隠れ、
窓からの距離をとる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴォ
外には嵐と電気の塊が力を溜める気配を感じる。
部屋の壁には鋭い青と深い黒が交互に映し出される。
破壊の準備が始まっている事を覚悟し、
私はベッドの裏で身構える。
その瞬間、鼓膜が揺さぶられる轟音と共に私は吹き飛び壁へと叩きつけられた。
耳の奥で『キィーン』という音が頭蓋骨に反響し、
頭の中に広がる。
私は頭を二度三度左右に振り、
意識を確実に取り戻そうとする。
肩を強く打ってはいるが幸い動けない程でもない。
ヨロヨロと立ち上がり扉に目をやると、どうやら扉は吹き飛ばされた様だ。
私は『二発目が起こる前にここを出なければ』そう思った。
私は走り出した。
扉を開け必死に走った。
逃げ惑う人々とすれ違いながら私は出口を探す。
そう、この施設から逃げ出すのだ。
記憶の無い私だが何故か口元には笑みがこぼれていた。
正面に光がこぼれる扉が見えてくる。
おそらくあそこが出口であろう事が何となく感じ取れた。
だからは私はその光に向かって走った。
扉に手をかけ力強く前に押し出す。
目の前にはやはり想像通りの外の世界が広がる。
あの窓から見えていた青い丘。
パンッ!
パンパンパンッ!
乾いた音が後方から聞こえてくる。
瞳には光と草木そして遠くの町が広がる。
刹那。
暗闇が目の前を塞いだ。
私は重力に引かれゆっくりと崩れ落ちた。
ゴロゴロゴロゴロ
暗闇の中で微かに雷の音が聞こえる。