振り向いてはいけない
カタカタと揺れるビールの空き缶をジーッと眺めながら、
また新たなビールのプルトップをプシュリと開け、
それをゴクゴクと飲む。
ところで先ほどからカタカタと揺れている空き缶は、
何故動いているのだろうか?
手を触れている訳でもなく、
風、または地震などでもない。
それは自分の力でカタカタと揺れているのである。
生きているのか?
それともポルターガイストか?
私にはそれを判断する能力は無い。
ただただ、
カタカタ
カタカタ
カタカタ
カタカタ
と揺れるそれをジーッとあぐらをかいて眺める。
頭上からはこうこうと裸電球が畳六畳の部屋を照らしている。
プィ~ン
プィ~ン
どこからとも無く虫の羽音が聞こえる。
くるくると頭を動かしその羽音を追う。
目を凝らす。
と、小さな浮遊する物体を確実にこの目が捕らえる。
刹那。
ピシャリッ!!
私は立ち上がり手のひらを合わせる。
開いた手の中には黒く砕けた残骸と真紅の血が付着している。
空き缶はまだカタカタカタカタと揺れ続けている。
ドサッ!ドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサッ!!
棚から本が次から次へと落下する。
この家に一体何が起こっているのだろうか?
だが私にそれを知る術はない。
そして、先ほどから私の後ろで女の囁く声が聞こえている。