左右注意
梅雨入りしたにも関わらず土曜は素晴らしく晴れたので 、
メロスの如くドライブへと走り出した。
目標は岩手県早池峰山麓 に設定。
山好きで、志村好きの私の心が躍る。
そんな山麓を目指す途中の道で牧場を発見した。
遠くの方に牛達が見える。
のどかな風景だ。
だがここまで来る峠道はかなり険しかった。
道が細くカーブが急で途中砂利道。
崖から落ちたら誰も気づかない様な道。
落下=死
そんな等式の成り立ちそうな死の峠道を経てここへたどり着いた。
が、更なる恐怖の道が実はこの先に待っていた。
この牧場はひと時の安らぎ。
しばらく進むと早池峰山麓へ進入する道が現れた。
私は迷わずその道を進む。
段々と道幅が狭くなって行く。
そんな山と山の間を縫うように道がある。
左に山、右に川、そして山。
民家がポツポツと点在し、
やがてはうっそうとした森と暗い道だけが目の前に広がる。
30~40分走っているが対向車も後続車も一台も無い。
私一人だけがこの世から忘れ去られた様にその暗い森に居る。
昼間でこの状況なのだから、夜は絶対に走りたくない道だ。
と、左手に看板が現れた。
『落石注意』
まあよく見る看板だ。
そして道には確かに落ちてきた岩がある。
落石は防ぎようが無い気がするが、一応右側に寄り気をつけて進む。
すると今度は右手に看板が現れた。
『路肩崩落注意』
見ると右側の路肩が所々陥没して川へ落ちている。
ん?
・・・?
ちょっ!ちょっと!タンマ!タンマ!
この道マジ危ないじゃん!
左から落石で、右は崩落って・・・
注意出来ねーよ!
どうなってんのこの道?
通行止めじゃないの?
しかも死の香りがプンプンする雰囲気!
とかビビリながら、お漏らししながら、真ん中を心がけて内股で急いで走った。
ここでは絶対に死にたくない。
そんな事を思い、必死に走っていると遠くにチラホラ建物が現れ出し、
道もやや開けてきて気づけば早池峰山に上る門の前へと着いていた。
込み上げる安堵感。
デスロードはどうやら抜けたらしい。
それから普通の山道を通り抜け頂上を眺めたが雲で見えず、
無感動で無表情のままそそくさと山を下り家に向かって走り出した。
(見えない山)

