眠れぬ夜に会いましょう
またしても前回のつづき(前回はこちら )
キャンプの夜は更け、
夕食を食べ終え寒さも増して来たので部屋へ入る事となった。
キャンプの管理事務所から借りた毛布にくるまる。
しかし、予想以上に寒い。
山をなめていた。
そして、毛布を被ったところで寒さはしのげないと更に気づく。
不安が心の中でジワジワと目の前の闇の様に広がる。
だが、ひとまずは寒さを忘れてみなUNOに集中して遊んだ。
誰が強く、誰が弱いという事も無く、
みな一様に勝ち負けがつき一喜一憂した。
ワイワイキャッキャと楽しい時が流れる。
しかし、歳のせいか、いや歳のせいだ突如睡魔に襲われた。
眠い・・・眠い・・・世界が回る・・・回る・・・
思い立ったが吉日。
すぐさま私は毛布にくるまり部屋のはじへと体を寄せ眠りについた。
特技:即寝(秒殺)
履歴書の特技の欄はそう記入している。
どれ位時間が経ったろうか。
寒さと床の固さで目が覚めた。
室内は暗くまだ夜中のようだ。
と、誰かがガサゴソと起き上がる気配を感じる。
「パリパリ・・・パリパリ・・・カサ・・・カサカサ・・・バギボギ・・・
ボリボリ・・・ボリ・・・ボリボリ」
私は毛布を頭から剥ぎ音のする方を目を細め眺めた。
その闇には、外からの光にやや照らされ毛布を被った怪しい男が、
手で割った歌舞伎揚げを、そろそろと口に運んでは食べ、口に運んでは食べを繰り返している。
あまりのシュールな光景に私は闇の中で一人吹いた。
私と歌舞伎揚げの男はみなが眠る夜の闇に溶け込んだ。
と、今度は足元から
「グガガガガ・・・ゴガガガガ・・・グガガガガ・・・ゴガガガガ・・・プシュ~・・・」
誰かの凄まじいイビキが部屋の中に響き渡る。
「ったくうるせぇな」
私はそう闇に呟いた。
すると。
「ソソマスク!あんたもだよ!」
歌舞伎揚げの男に突っ込まれた。
彼が歌舞伎揚げを食い、寝れない夜を過ごしていたのは寒さのせいだけじゃなかった。
足元のイビキ男と私のイビキのダブルハードノイズのせいでもあった。
(ちなみに聴くところによると私はイビキの他にも寝ながら放屁をしていた。しかも3回も、器用な事だ。と、我ながら感心した。)
私は「ははは・・・」と、笑って誤魔化すばかり。
そんな私の誤魔化し笑いも濃密な闇にのみ込まれて消えた。
やがて空が白み寒さ厳しい夜も明け、帰りの時となる。
私と歌舞伎揚げの男、そしてイビキ男の3名は同じ帰路だ。
3名は電車へと乗り込み並んでグタリと腰を掛けた。
しばらくして発車のアナウンスが告げられゆっくりとゆっくりと電車は走り出す。
さようなら奥多摩。
ありがとう奥多摩。
寒みーよ奥多摩。
またいつか・・・
そう心で語りかけ別れを告げた。
3人にほぼ会話らしい会話はない。
疲れきっている歌舞伎揚げの男。
彼はそっと瞼を閉じ、待ちわびた眠りが訪れる。
健やかな天使の様に彼はコクコクと眠りつづけた。
青梅線は森の間を快調に突き進む。
青く晴れた日曜日。
ファンファ~ン♪
警笛が空に広がってどこかへと消えて行った。