A‐BOYを知る
上京した私は憧れのA‐BOYを目指すべく未来都市秋葉原へと出かけた。
テレビで見る秋葉原とは違い、生粋のA‐BOYは見当たらない気がする。
「テレビで拝見した憧れのA‐BOYが何処にも居ないではないか!」
「バンダナを頭に巻いた奴なんて居ないぞ!」
「迷彩服を着た奴は何処だ!」
「貴様リュックはどうした!リュックが基本じゃないのか!」
そう半狂乱になりながら街を歩いた。
正直ショックだった。
テレビに騙された自分がバカだとも思った。
そんな抜け殻のような、使い終わったコンドームのような、私がヨタヨタヘナヘナと歩いていると。
「ど~ぞ~」
と、レフトサイドから一枚のビラを手渡された。
私は無意識にそれを手に取り、虚ろな瞳でビラを眺め、そして手渡した人とを交互に眺めた。
その人はチェーンのついたメガネを掛け、俗に言うメイド服?を着て微笑んでいた。
私は焦った。
背中毛からケツ毛まで逆立って、毛羽立った。
心のテンションが上がった。
「テッ!テレビと一緒じゃ~ん!!」
「コレってメイド喫茶じゃ~ん!!」
そう心が雄叫びを上げた。
私は、上がるテンションとパッションを右に受け流しながら尋ねた。
「こっ!こっ!このお店はどこですか!?」
その人は答える。
「ここをこう行って、ここを曲がって、うんぬんかんぬんの3階です!」
と、オキャン に答えてくれた。
と、同時にいい匂いがした。
「秋葉原も捨てたもんじゃないぜ!!ごきげんだぜ!!m.c.A・T!!」
そう思い悦に入った。
2秒経過。
私ははたと我に帰り、軽く会釈しグイグイとその店を目指して大股で歩いた。
2分16秒経過。
発見。
それは小汚い雑居ビルの中にひっそり、こっそり、もっさり、あった。
看板はポップかつプリティーでありどこか怪しい。
私は勇気を振り絞って足を踏み入れた。
つもりだった。
が、足は前に出ず入り口の1m27cm手前で止まった。
「動け!動け!動け!」
心に言い聞かせるが一向に前には出ない。
「チキショー!!」
クルミが潰れるくらい拳を強く握り締め、春の真っ青な天を仰ぎ叫んだ。
自分の不甲斐なさ勇気のなさに悲しみを覚えた。
突き抜けるように空が真っ青なのが、悲しみを加速させるようで落ち込み度も増す。
ボソリッ。
「意気地なし」
トボトボと自分の脆弱さを呪いながら駅へと戻った。
電車に乗った。
意味もなく山手線を1周回った。
そのくらいのダメージがその時おそらくあった。
A‐BOYの道は棘道。
人は極めると、とてつもない高みに登れるような気がした。
そんな春の1頁だ。
