昨日で彼女が辞めた。

時が過ぎるのがすごく早く感じる。


彼女が辞める話を受けてから、

気が付けばその日が来てしまっていたから。

彼女自身、自分が昨日で辞める実感がないといっていたけど、

それは俺も同じだった。


明日になればまた、元気に『おはようございます!』と言って、

顔を出してきそうな雰囲気だから。


でも現実は無情だ。

彼女に取って、就職、そのための退社だから、いいことに決まってる。

だけど、頭が、気持ちがそれを受け入れようとしない。

仕事中、彼女の事を、見つめていられることももうないのかと思うと、

よりいっそう切なさが募って、涙が出そうだった。

また、近いうちにあえるから、昨日告白することは止めた。

感情に任せて、言葉を発しそうになったけど、

仲のいいパートさんたちと最後まで楽しく仕事をしていたから、

その雰囲気を壊したくなかった。

だから彼女は、帰る間際、笑顔で辞めていった。

それはそれで良かったと思ってる。

やっぱり彼女に、悲しい顔は似合わないから。

俺にも笑顔で、挨拶をして去っていった。

もちろん悲しかったけど、寂しかったけど、

なんか、彼女らしいなって思った。


彼女が辞める前日の夜。

俺は、彼女宛に手紙を書いた。

彼女との関係が、温まらないうちに告白して、玉砕するよりも、

たとえ仕事で会えなくなっても、気持ちのかけらが伝わって、

温度が温まった時に告白したいと思ったから。


だから、手紙を書いた。

ラブレターじゃない。

でも、俺なりに、かなりラブレターに近い手紙だった。

言葉をすごく選んだ。

ストレートに『好き』と書きたかったけど、その言葉は使わなかった。

その代わり、俺が彼女に対して抱いてた想いを、少しでも多く伝えたくて、

俺が見てきた彼女の事を、素直な言葉で書き綴った。

彼女に伝わるかどうかわからないけど、少し長い手紙を渡した。

気持ちのかけらでも、彼女に伝わるように。

俺が彼女を、女として見ていたことが、なんとなくでも伝わるように。

今度会った時、彼女との心の距離が少しでも近づいているようにと、

願いを込めて、手紙を書いた。

彼女は、家に帰って読みますと言ってくれた。

あの手紙を読んで、彼女がどう感じたのか?

正直な気持ちを聞きたいけれど、それは出来ない。

少しでも、彼女の中で何かが変わってくれたら、

この先の人生が、彼女とまた交わるかもしれない。


今は辛くても、最後は彼女と居たい。

今日は、彼女の誕生日。


一足先に、昨日の夜、みんなでサプライズパーティーをやった。


昨夜は、彼女の希望で、夜の時間帯にシフトを組み込んであった。



彼女には内緒で彼女と親しいバイト仲間を呼んで、


営業終了後、一緒にお祝いした。



彼女は、そんなこと全然予想してなかったらしく、


びっくりして、頭が働いてなかったみたいだけど、


仲のいいメンバーと会えて、楽しい時間を過ごせたみたいだ。



彼女の喜ぶ顔が見たかったから、俺も素直に嬉しかったよ。


みんなが集まってからは、ずっと彼女は笑ってた。


これからを考えると、胸が痛かったけど、


昨日の夜は、たくさん彼女の笑顔が見れて、本当によかった。



みんなからもプレゼントがあったけど、


俺からもささやかだけどプレゼントを用意しておいた。


彼女が喜ぶプレゼントが何か悩んで、


プレゼント選びは苦労したけど、


迷ったあげく、マグカップとソーサーに決めた。


彼女は、よくコーヒーを飲むって言ってたから。



プレゼントを渡したときも、彼女は素直に喜んでくれた。


また、彼女の笑顔が見れた。


誰かのためにプレゼントを買うのは、すごく久しぶりだったけれど、


ずっと彼女のことを考えながら、探してたから、


買い物の間も、なんか幸せな気分だった。



あと1日。


彼女が最後の日。


今度は俺が笑顔で送り出してあげたい。



彼女が、みんなと一緒に働けたこと、良かったって思えるように、


彼女が幸せなまま、店を離れられるように。



気持ちよく、送り出してあげたい。

彼女が辞めるまで、残り1週間。


でも、実際に彼女と一緒に仕事が出来るのは、あと2日。



未だに、彼女が居なくなる実感が沸かない。


だけど、仕事中、自然と彼女の事を目で追っている自分に気が付いた。


その時に『あぁ、もう彼女の仕事姿を見ることが出来なくなるのか』と、


無性に切なくなった。


近くにいる時は、相変わらず抱きしめたくなるぐらい華奢な体の彼女。


本当に好きすぎて、涙が出そうだ。



全然別件の話だけれど、普段、昼間のパートさん2人とあまり話す機会がないから、


『たまには飲みにでも行きますか?』と話を持ち出した時、


行くんだったら彼女も一緒がいいと言われた。


無意識に彼女の事は、別に考えてたから、


パートさんからの思わぬ一言がきっかけで、彼女も誘う事が出来た。



パートさん2人と彼女と4人で、来月飲みに行く約束をして、少しだけ安心した。


『また彼女に会える♪』


そう思うだけで、胸の痛みが少しだけ救われる。


彼女に直接的に好意を伝えたわけではないけど、


繋がりは残しておきたい。


自分の気持ちを伝えていないのに、いきなり告白して玉砕するよりも、


少しでも彼女に会えるチャンスと気持ちを伝える機会を作っていく事で、


彼女の気持ちに近づきたい。


直接的な言葉を伝える前に、間接的に気持ちが伝わる雰囲気を作っておきたい。


彼女がビックリしないように。



彼女は今までの事から考えて、恋愛には奥手なようだ。


だから、距離も少しずつ近づけたい。


仕事を通じてというのは、もう時間がないけれど、


連絡が取れる状態、誘ったら来てもらえる状態にしておきたい。


そして、2人で会える日を信じて、その時の為に、


残りわずかな時間を大切にしたい。



明日は、彼女の誕生日。


2人きりで祝ってあげたいトコだけど、


今年はまだそういう関係になれてない。


でも、来年は俺一人で、彼女の為に祝ってあげたい。


喜んでくれる彼女の顔を見ていたい。


ずっと、ずっと。