俺の名前は斉藤 隆(さいとう たかし)
今春立派な社会人となった。
俺には最愛の彼女がいる
沢村 愛(さわむら あい)
中学からの幼馴染。
付き合ってもう5年になる
そのころの彼女は愛の双子の妹の夕(さわむら ゆう)だった。
そして、あんまり愛のことは知らなかった。
・・・だが夕とは長く寄り添えなかった。
忘れはしない。 高校3年のクリスマス
俺へのプレゼントを買うため 急いで横断歩道を渡ると 信号無視の車に・・・
悲しみから自分を責めた。
俺が夕とかかわっていなければ─────と。
そんな姿を見た夕の妹であり、今の彼女の愛が俺に告白してきた
「夕がいなくなった今・・・あたしは隆を支える役目がある それに・・ずっと前から好きだった」と。
極度のうつ状態の俺に必死に話しかける姿を見ていると こっちからも好意がわいてきた
愛だって俺と同じくらい ・・・いや俺よりつらかったかもしれないのに。
思いがすれ違うことも、多々あったが 話し合い お互いを知ることで乗り越えてきた
そして現在に至る
12月24日 クリスマスイブ
愛の家でパーテイを開いた
招いたのは佐伯 良太(さえき りょうた)と安堂 紗悸(あんどう さき)の二人。
この二人は3年前から付き合っているみたいだ
俺ら4人は高校の同級生 仕事は全員違うものの よく連絡をとりあう仲のいい4人だ
全員が仕事を終え、午後7時に集まる
愛「ひとりぐらしだから狭いけどごめんね~」
紗悸「どーんまーい」
良太「どーんまーいってなんだよ」
隆「愛~ 晩飯なに?」
愛「あぁ フライドチキンだよ~」
良太「フライドチキンかぁ」
雑談をし、TVを見ながらフライドチキンを食べる
この何気ない時間は 恋人を強くする気がした。
隆「しばらく雪降らないよな」
愛「んー。 温暖化かねぇ」
隆「そーかねぇ」
愛「・・ねぇ隆、」
隆「ん?」
愛「もうここで3年雪降ってないよね」
隆「あぁ」
紗悸「・・・この話ししちゃいけないだろうけどさ・・」
良太「ん?」
紗悸「・・・明日は夕の命日だよね」
隆「・・・紗悸、それは・・・」
愛「・・・現実から逃げてもだめだよ 夕はもういないんだ」
隆「愛・・・」
愛「あたしね 決めたんだ 今年は墓参り行くって。」
紗悸「・・・」
隆「俺も行くよ。」
肩を抱き寄せた
愛「・・・ありがとう」
良太「・・・さぁ 早く食べようぜ 冷めちゃうから」
隆「あぁ。」
紗悸「あー 手がベトベト 良太、ふきん」
良太「ほらよ」
元の空気に戻ったが
4人の心の中には 高校時代の夕の姿が鮮明に浮かんでいた。
夕が逝った日・・・
クリスマス、年に一度の特別な日
夕は多忙なスケジュールからプレゼントが買えず、当日になって買ったのだった。
店を駆け出し 急いで待ち合わせ場所へ向かおうとしていた最中だった・・・
病院へ運ばれたことを知り 全力で駆けつけた隆だったが
夕はいつ意識を失い死んでもおかしくないというような状況だった
悲しんだ。 大泣きした 手を握って。
一瞬だけ意識が戻った
そして最後の一声を残してこの世を去った。
「あ、愛をよろしくね ・・・隆・・大好き」
そして手を強く握った。
ピ────────────
心臓が止まった 完全にこの世を去ったのだ
隆「夕ーーーーーーーー!!!!!」
手を握ったまま泣いた。
その後の不安定な俺を面倒見てくれたのは 愛だった
正直自殺まで考えた。 それをとめてくれたのも愛だった。
愛がいたから俺は今夕のことを引きずらないで生きてる
本当に感謝だ。
愛がふと何か口ずさんだ
「君からこぼれた涙の数だけ笑顔が訪れるように 真っ白な雪をプレゼント。 二人が寄り添えるように・・」
隆「・・・よく夕が歌ってたよな」
愛「うん 夕が歌ってたから 覚えたの」
沈黙が走った
時計の針は12時を指していた
隆「・・そろそろ 夕が逝った時間だよな」
愛「・・・・」
良太「・・・なんか暑い。暖房効きすぎてねぇ?」
紗悸「あぁ、だったらコンビニに買い出し行って来て」
良太「あ、全然暑くないです あー寒い寒い」
愛「良太君、あたしシュークリーム」
隆「俺モナカ」
良太「アイスかよ モナカ欲しいほど暑いならお前が行け」
紗悸「あたしもシュークリーム」
良太「・・・しょーがねーなぁ」
紗悸「いってらっしゃい」
にこやかに送る
良太「いってきま・・・・おい! おい!! 来て! ちょ、」
ドアを開けたとたんに騒ぎ出す良太のところへ駆けつけた
みんなが言葉を失った
雪だ それも今までの悲しみの涙の数ほどありそうな大雪・・・
「君からこぼれた涙の数だけ笑顔が訪れるように 真っ白な雪をプレゼント二人が寄り添えるように・・・」
誰も言葉を発しなかったが全員感じたことは同じだ。
夕からの
最高のクリスマスプレゼント・・・・
歌詞のとおり
ふたりは寄り添い 抱き合ったのだった。
夕が口ずさんでいた歌の歌詞の最後にこんな言葉がある
「また来年のクリスマスも 遠くから君を 見守っているよ───────」