〜DAY17〜


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明地さんは、昼食時にいつも通り自然と僕の隣りに座りだした。




とりあえず、昨夜のことをいつまでもネチネチと言っててもしょうがないので、明地さんのペースに乗り、作戦通り話をしてみることにした。



普段は、話をスルーをする僕が相槌などをし出すと最初は、目をまんまるくしていたが、次第に笑顔になり、食事が終わっても永遠と話しかけられ続けた。



言っている意味の大半だが分からないことで最初は、案の定イラッとはしたが、話を続けてみると明地さんは、ただただ素直で純粋な人だと言う事に気付いた。



その「素直」というのは、人間が大人になるに連れて誰しもが生き抜く為に必要となって習得した変な見栄であったり、我慢であったり、言い訳であったりというものが一切ない清々しいものだった。



この人は、自分を取り繕うことなくただ単純に思ったことを口にして、行動して生きてるだけなんだなということが分かった。



勿論、明地さんのように過ごしていたら社会での人間関係を成立させることは不可能ではあるけど、なんだか凄く羨ましく感じてしまった。



妬み僻み嫉妬などの憎悪に支配されていた僕の心には、明地さんのような人が特別に輝いて見えたのだと思う。



僕は、社会で偽物の自分を作り演じ続けてたのにも関わらず、勝手に傷つき傷つけ、家へ帰っては愚痴を吐き、アルコールで自分を慰め、依存症になって今、此処にいる。



格好良く言うと「眩し過ぎる人を見ると涙が出る」

まさにそんな気持ちだった。



そして、自分が何より格好の悪い人間に思えてくる。



自分のことは、棚に上げて精神科の閉鎖病棟に入院するくらいのヤバい患者だと勝手にバカにしていたんだ。



それからは、明地さんには相変わらず文句を言うし、怒ったりもするけど結果的には1番仲良くなって退院する事となる。



深い話は最後まで出来なかったけど、お互いに素直に喜怒哀楽をぶつけ合い、共感し、笑ってお別れをする事ができた。



大人になってから、あれだけ喜怒哀楽をぶつけられた人は、後にも先にもいないと思う。



僕が退院する日、受付で精算を終えると明地さんと看護師が院内を歩いていて満面の笑みで僕に手を振っていた。



「明地さん、やっと外出許可が出たんだな」と思うと嬉しくなった。



「また会おうね」と言っていたが、勿論連絡先も知らない。



元気で過ごしていることを願うばかりだ。



続く



※後日談込みで書きましたが、DAY17後の閉鎖病棟生活に続きます



※あらすじ一気読みは、こちら