私は急に、食欲旺盛な子どもになる。

といっても家でのことだ。

学校では大量に嘔吐できないので、

相変わらず、ほとんど何も口にしない日々が続いた。


その分余計に、食べたいという欲求は増していく。

学校にいる間は、早く家に帰ってあれを食べよう…と

妄想ばかりしていた。


お小遣いはすべて食べ物に費やされるようになった。

数千円のお小遣いはすぐになくなってしまう。

家にあるお菓子をあさるようになる。

お菓子を集めて部屋に持ち帰り、がつがつと食べる。

味なんて分からない。

むさぼるように食べ、トイレに直行する。

胃の中が空になると、また食べたくなる…その繰り返しである。


家族が寝静まった夜中に、食べたいという衝動に駆られて

どうしても我慢できなくなり、そっと起きて冷蔵庫をあさる。

すると、次の日もやらずにはいられない、

そして次も日も…。


食べていないとき、考えるのは食べ物のことばかり。

食べたい食べたい食べたい…

食べているときは、無心でただただ食べる。


私は、自分に制御が聞かなくなっていることに気づき始める。

怖くなる…が、こんなことを誰にも話せるはずがない。

衝動は、どんどん強くなり、過食の回数は増えていった。

細くなった自分の体を鏡に写し

満足感に浸る。

しかし、少しでも体重が増えると

急に自分が醜くなった気がして

一刻も早く減らさなければと思う。


1グラムたりとも、体に吸収させたくない。

その思いから、私はわずかに口にした食事さえも

すぐに戻すようになる。

食事の後トイレに立つ娘の行動に、母はlこの頃気づいたという。



拒食傾向にあった私だが

食べ物への関心は、ますます強くなっていく。

思い切り食べたい…という気持ちが自然にわいていた。

吐いてしまえばいいのだ。それだけのことだ。


私は、胃に入る限りの食べ物を詰め込み、吐いた。

驚いたことに、大量に食べたときの方が楽に吐けるのだった。

これは発見だった。

そして、食べることは自分が思っていた以上に魅力的で

私はその魅力にどんどんのめり込んでいく。

今まで怖くて食べることができなかった、カロリーの高い物。

脂っこい物や、甘い物、お菓子…

そういった物を、思う存分ほおばる。

夢のようだった。


麻薬と同じような感覚である。

このころの私は、食べ物に異常に関心を持ち始める。

家にいるときは料理本を愛読し

学校にいるときは家庭科の教科書ばかり眺めた。

何度も何度も飽きずに眺め、想像するのである。


しかし、実際に食べることは

どんどん恐くなっていった。


正確に言えば、太ることへの恐怖だった。

少しでも食べたら太るという

固定観念にとらわれ始める。


徐々に嘔吐の回数は増え

私の考えは異常な方向へ向かっていく。


給食は、おかずを少しつついただけで

ご飯には全く手を付けなかった。

私の学校は蓋付きのご飯茶碗だったので、

幸か不幸か周りには気づかれにくかった。

お腹はすいているような気がしたが、

それ以上に食への恐怖、太ることへの恐怖が勝った。


食べたら胃がでる。

これさえも耐えられなくなっていた。


気づけば私は、

家でも食事を半分程度残すようになり

できるだけ何も口にしないようになり

少しでも何かを食べると

嘔吐しなければと考えるようになる。


体重は、おもしろいように落ち

あっという間に40キロになっていた。