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Anon.のブログ

いずれ闇に消えるものなら
夢や記憶の欠片を拾い集めて
その色彩をガラス玉にどろりと流して
トンボ玉をいくつもつくろう

それが誰であるのか、名前は思い出せないのだが、私はその男の顔を知っていた。眉が薄く、短く刈り込んだ髪が淡く黄色い、体型の細い乾いた感じの男。

そこはインテリアの販売展示場なのだが、男を取り巻いている男女はみな喪服姿だった。

ガラス張りの場内は照明を落としていて、外から入ってくる光線で人の姿が半ばシルエットになっているのに、男の顔だけははっきり見える。

喪服の男女と会話していた男がふと私の方を見て、「おや」という表情を浮かべた。

男も私のことを知っているらしい。

喪服の男女が散って、男が私に近づいてきた。

「お久しぶりです。タドコロエイジです」

男は腰をかがめて挨拶した。

その名に覚えがあるようなないような。

学生時代に他の友人の伝手で知り合った男かとも思えるのだが、はっきり思い出せない。

タドコロは名刺を取り出そうとしたのだが、私は名刺を持ち合わせていなかったのでそのことを告げると、彼は私に名刺を渡すことをためらう様子を見せた。

タドコロは卸売業を営んでいるそうだ。

「トイレットペーパーや消毒用アルコールが必要ならいくらでも融通できますよ」

その口調にも確かに聞き覚えがあるのだが、私はタドコロのことを思い出すことができなかった。

しかし消毒用アルコールは欲しいなと思っていると、なんだか部屋の中が煙臭いのだ。部屋中を確認してみたが火の気はない。窓を開けると、冷たい外気とともに煙の臭いが入ってきた。やがて消防車のサイレンが聞こえてきて、周囲が騒然とし始めた。付近で朝火事なのだ。