脳腫瘍の手術を受ける。
手術台に横たわり、頭部や顔面に鋲を打ち込むように何本も麻酔を打たれる。
左こめかみのあたりからメス(というより杭)が刺し込まれ、目の裏側の方へ深く侵入してくる感覚がはっきりわかる。苦痛はない。強い力が加えられ、頭の内部が軋むような感覚である。
そして顔の上を夥しい血が枝分かれして流れ落ちる生温かい感触もわかる。大量に出血している。
「早く止血を。死んでしまう」医師が看護師に大声で指示する。
手術台から上体を起こし、座った姿勢になる。
医師が後ろから私の両肩を強く掴んで私の体を支えている。
同時に医師が私の肩につかまって、困憊して倒れこみそうな自分の体を支えている。
疲れ果てているのは私ではない。医師のはげしい疲労感が、その腕を通して私の体に伝わってくるのだ。