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Anon.のブログ

いずれ闇に消えるものなら
夢や記憶の欠片を拾い集めて
その色彩をガラス玉にどろりと流して
トンボ玉をいくつもつくろう

このだしぬけの、つなぎ目のない、将来の予想もつかぬ別離にわれわれはただうろたえさせられ、今なおきわめて近く、しかもすでにきわめて遠いその面影の思い出に抗するすべも知らぬ状態で、今やその思い出がわれわれの日々を占領していたのである。事実上、われわれは二重の苦しみをしていた-まず第一にわれわれ自身の苦しみと、それから、息子、妻、恋人など、そこにいない者の身の上に想像される苦しみと。(アルベール・カミュ『ペスト』宮崎嶺雄訳 新潮文庫)

 

寺院の境内か、大きな時計盤のような円形の池がある。しずくを宿した蓮の葉が浮かび、葦が生い茂る。私はその池の円周に沿って母の車椅子を押していたのだが、途中で母を置いて、ひとりで歩き出した。自分は時計回りに歩いているので、今、夜の方へ向かっているのだと思った。母がいる場所の対岸に位置する地点まで歩き、視界をさえぎる葦の間に見え隠れする母に手を振る。母も車椅子に座ったまま、私に向かって手を振った。どこからか姉が来て、母の方に駆け寄って行く姿が見えた。姉が来てくれたので、私は少し安心した。私は再び池の円周を時計回りに回って、母と姉の方へ戻ろうとしていた。