夜、電車に乗っていたら、Aという役人が途中駅から乗り込んできた。
新聞雑誌の報道などで私もAの顔と名前は知っている。公卿顔の謀略家である。
Aは泥酔状態で目が据わっていた。
Aはドア付近にゆらゆらと立ちながら、しきりにドアガラスに指をたててSの字を書いていたのだが、不意に通路によろめき出て、シートに座っていた男の前にしゃがみこんだ。
「おい下等国民。おまえなんかいつでも監獄送りにできるんだぞ」
Aは男の両膝を手のひらで交互に叩きながら、絡みつくような口調で繰り返した。
車内に冷ややかな空気が張りつめた。この男の本性はやはりこんなものなのだなと、私は思った。私は殺意を覚えた。
笑い居る政治家たちを見るほどにギュゲスの指環欲しと思ほゆ