耕作ドラマ No.63
夕方に目が覚め 俺は 白いパンジャビスーツのまま ぶらり外に出た アシュラムからは ダルシャンの歓声が聞こえてくる
「あっ! そうだった ダルシャンの時間だったわ それに今日は ブッタプルニマの前夜祭みたいな催しもあるんだったわ〜」 まぁ〜いっか どうりで町に 白い服姿が見えないはずだなぁ〜と思った
そのまま 夕方のダルシャンはブッチして 町をぶらついた
みな ダルシャンに参加中で サニヤシンが一人も見当たらない町も なかなかオツなものだった 陽も落ちかけている 数人の子供達が 買って 買ってと来たが 今日は なぜか買う気がしなかったから ノー とハッキリ言った 子供達は それ以上迫ってはこなかった 他の人には これでもかと言うくらい しつこく買って 買ってと迫るが 俺には それはしなかった 買えるときは 買ってあげているからなのか もう 顔見知りになったからなのか 子供達は 俺を見ると 買ってぇ〜とは来るが じゃれてきたり 可愛らしいしぐさを見せてくれた
この子達も 数年先には ほとんど消えているかもしれない
甘えてくる子供達を見ていて 急に胸が締め付けられ 涙が溢れそうになった 焦ってその場を離れ アシュラムの町の外れまで走った
さすがに いきなり泣き出したら 子供達もビックリするだろうし
道行く人達からも 変に思われるのが恥ずかしかったのだ
町外れまで来たし もう 暗く成りかけていたので そのまま BARへ酒を飲みに行く事にした
サイババの所へ来て BARへ行く奴なんぞ 俺くらいのもんだろう
店の中に居た 3人グループの若者達から 「どこの国から来たのか?」と聞かれたので 「日本だ!」と答えた こっちで一緒に飲まないかと誘われたので 若者達のテーブルに座った
一緒に ヤシ酒のコーラ割りを飲んだ 「サイババに会いに来たの?」
「そうだよ」
「へぇ〜〜〜 サイババのサニヤシンが この店に来るとは珍しい」
「そうかぁ〜 たまには 酒を飲みたくてなぁ〜」
こんな会話を交わしていた
「 女は要らないか?」と聞いてきた
「間に合っているよ 」と俺は答えた 何となく うさん臭い連中に思えてきた こりゃ〜〜〜 早めに帰るかなぁ〜と思っていると 一人の警察官が入って来て 店内をぐるりと見回し こちらのテーブルに近づいてきた
若者3人に 何やら強い口調で話し出した 3人は 急に怯えた表情になり 慌てて店から出て言った
そして警察官は 俺の前にゆっくりとしぐさで座った
「英語は話せるのか?」と聞いてきたので 「少しなら」と答えた
この警察官 ジッ と俺の目を見据えて居る 「はぁ〜ん 何だこいつ 」と最初は思ったが 話をしていくうちに 彼は 俺の事を思って ここへきて来れたのが伝わってきた
彼もババ様の帰依者で このBARに サニヤシンの格好をした 外国人が出入りしていると どっかのお節介から聞いたらしい
彼は 「どうか 貴方もババ様の帰依者ならば こんな所へ出入りしないで アシュラム圏から 出ないようにして下さい この辺は 治安の悪い地域だし さっきの若者達も チンピラでろくな輩ではない 」 と言った
俺は 彼の気持ちを感じとった
彼は 職務で来たわけではなく ババ様の帰依者に 何かトラブルがあってはいけないと 心配して来てくれたのだ
「それに 明日はブッタプルニマでしょう 私が警備の責任者です 何かあったら すぐに私の名前を出して下さい」
名刺こそ無かったが 彼の名前は カーン だった
カーンの名前を出せば 大抵の者は知っているらしかった
俺は カーンに なぜ? ストリートチルドレン達を放っておくのか聞いた カーンは 悲しそうな顔で
「これは 今 インドが抱える深い問題です でも 必ず解消します」と言った 俺は サイババへの文句を言いかけたが のど元で飲み込んだ カーンに 敬意を感じていたし 今 ここで サイババへの不満は 語るべきではないと 咄嗟に判断したのだ
帰り際に カーンと握手を交わし
「もう 2度と BARへは来ないよ」とカーンと約束し 俺はアシュラム圏へ戻った
何故か? 今にして思えば タイミングが良すぎる
五年前 バンガロールから マドラスまで帰る飛行機に乗れなくなり
完全予約制の特別列車にすんなり乗れ マドラスでの窮地を サリームが助けてくれたり
イラン人達に襲われた時も かすり傷で済んだ
いい気になって飲んでいたBARでは 警察官のカーンが現れ たしなめられたりと 何かの御加護 お導きとしか思えないような事が多々あった 偶然が無いとしたなら サイババの存在を 無視はできなかった
アシュラム圏では 相変わらず白いパンジャビスーツを着た 日本人らしき東洋人やら いろんな国から来た外国人サニヤシンらが彼方此方に居た
その影で ストリートチルドレン達が 煙たがられながらも 必死で物売りをしている
また 涙が溢れてきた 「バカバカしい 何で俺がこんなこと思わなければいけないんだ この子達の運命だからしょうがないだろう〜 ちくしょう くそったれめぇ〜〜💢」
俺は あのストリートチルドレン達に物売りをさせているオヤジの店に行き ミルクライスを50人前頼んだ 一人前づつ券をもらい
子供達に配った すぐにストリートチルドレン達が集まりだし 店の中は ストリートチルドレン達でいっぱいになったので 店のオヤジが 「5〜6人づつ順番にしてくれ」と言ってきた
ナラヤナンも居たので ナラヤナンに 「お前が仕切ってやれ」と任せた
他の外国人のサニヤシン達は 俺のその行動を 不審な顔して見ていたが 俺は 気にもしなかった
これが 後に 初回の訪問の時同様
アシュラムで 変なサニヤシンとして 注目される原因となる
それが元で 外国人サニヤシンのあるグループとつかみ合いの喧嘩の引き金となるとは この時は 思いもよらなかった