私は就職するのが嫌で嫌で、親にワガママを言って、一度は卒業したおんなじ大学をまた最初からやり直すという、非常に意味のないことをやっておった。
 ところが元来の怠け癖が発動し、朝起きられず、ほぼ学校へは通えない状態になっていたのだ。初回にやっていた大学時代、ひとり暮らしに不向きなやつが出席日数不足のため1年で退学してしまったのを見たことはあったが、いまの自分にはそいつの気持ちがとてもよくわかる。
 これではイカンと、ある日、一念発起して通学の再開を決意する私。初日は、もっとも苦手としていた水曜日。1時限目から授業のある日だ。
 この時点でかなりの月日が経過していたため、はたして親はまだ授業料を収めてくれてるのかが気にはなった。でも大学をやり直したいと言い出したのは自分のワガママなんだから、とにかく行ってみることに。

 それは、だいぶ前に1回くらいしか出た記憶のない統計学・・・だったっけ? クセのある担当教授に受講生が辟易していると聞いたことがある。興味もないジャンルなのだが必須科目なので受けないわけにはいかないのだ。
 しかしまず、あまりにも久しぶりに学校へ行ったので、どこの講義室で授業がおこなわれてるのかがわからない。
「う~ん、2号館だったかな? いや、4号館だったような気がする」
 なんとなくなんとなく、それらしき場所を嗅ぎつけた。1時限目は9時スタートだが、私がたどり着いたのは40分以上オーバーした時間であった。45分になったら自動的に欠席扱いにされる。

 私がひょっこりと顔を出す。壇上には噂の先生が・・・といってもこの講義室は教壇を見下ろすかたちになっており、私が立つ位置から下方へ向かって段々畑のように受講生で埋まった席が7列ほど並んでいる。そのいちばん先のところへ例の先生がいるのだ。
 遅刻して現れた私に気づいた先生は「はい、そこ(最前列のいちばん左端)へお布施を出して名前を書いて、7階席の適当な席に座りなさい」と指図する。
 どうやらこの授業では、そこへ置いてあるノートへ自分で名前を書くことで出欠をとるらしい。私はノートが置かれてある最前列左端まで降りていき、言われたとおりに名前を記入。それはいいとして、お布施って何? チップみたいなものか?
 いまにして思えば学生側は授業料をちゃんと払ってるわけだから、なおかつチップも取るというのはおかしいではないか。しかし学生が何を言おうとオッサンの教授が受けつけようとしないのはわかっている。無駄な抵抗はひとまずやめておき、お布施の10円を饅頭の上箱みたいなのを裏返した即席の皿の上へ置く。

 次に空いている席を探す。また7段目後ろの位置まで戻って全体を見下ろすのだが、席はビッシリと埋まっている。これもよく考えると変だ。学生たちが、こんな真面目に授業へ出てるなんて何かある。
 ずーっと学校へは来なかった私だ。おそらくそこへいたみんなからは「見かけないやつが来たぞ」くらいな目で見られてるんだろう。だけどどうしたらいいものかと困ってる私を見かねたと思われる女子生徒が後方から声をかけてくれた。そうか、私が立っている位置からさらに後方へも席は続いてあったのだ。さっき先生が言っていた「7階席」というのは、こういうことか。
 今度は上段へ向かって移動する。このへんには空席もチラホラあったので、適当な座席へ座る。ところが、先ほど自分が立っていた7段目後ろを境として、それより上段の傾斜は極端に鈍角的であり、教壇はまったく見えない。スピーカを通した先生の声だけが聞こえてくる。

 私は教科書を開いた。が、何が書いてあるのかさっぱりわからない。大袈裟ではなく「これは日本語か?」と思えるほどの難解ぶりであった。この教科書も、あの先生が書いたものなんだろうな。それを買わすのが彼らの仕事でもあるんだから。
 まいったなー、ノートがないや。これでどうやって試験が受けれるだろうか? 仲間に見せてもらうとか、おしえてもらう? しかしここまでチンプンカンプンだと、追いつくのは途方もない労力だぞ。それに、ずっと学校へは来ていなかったのだから、頼れる知人なんかいない。あ、留年した上田くんならこの空間のどこかにいるかも・・・。
 見ると、教科書を下敷きにしてノートの1ページ目に書いたと思われる文字が、うっすらと浮かんでいるのがわかった。はるか昔に出席した際、おそらく自分が書いたであろう筆跡である。だけどさすがに読みとれるほどではない。しかも、いまさら見たって理解できないだろう。

 と、横っちょのほうから他の学生が先生のやり方に不満を漏らしている声が聞こえた。
 そうだよな。わかりにくく書かれた教科書で、ひとつも面白みのない講義をおこない、自分ルールを強いる。こんな教授のやり方は大いに問題アリだよな。学生側が物申せない立場にあるのを承知でやってるんだからタチ悪いよな。こんな教科、ガマンしてまでして単位とる価値なんか、ないだろ。
 だんだん怒りの感情が湧いてくる。ずっと学校を欠席していた自分が思うのもどうかしてるかもしれないが、この大学ではこのやり方がまかり通ってるのかと思うと・・・やっぱりもう学生生活には終止符を打ったほうがいいのかしら?

 

 

 ――そんな夢を見た。 生々しかったので、記憶が残ってるうちに書いておこうと思いまして。
 高田純次さんの迷言で「他人の夢の話なんか聞かされても、興味なんかないよね」ってのがあるんですけど、こんなのを読んでくださるあなたはよっぽど奇特なお方です(笑)。

 

 

 夢というのは自分の脳が作り出すものだから、もともと自分にあるものを素材にして生まれるものだと思う。しかし夢は、しばしば予想外の展開になるばかりか「自分のどこにそんなものがあったのか?」と、どうしても解せない内容が含まれてることがある。ああ不思議。
 なお、私は上記とおんなじような夢を何度も何度も見る。ずーっと大学へ行ってなくて、久しぶりに授業へ出たけど絶望的な気分になって。自分のワガママで学生やらせてくれた親に申しわけなくて・・・というのが基本形。授業終わりの学食を食べれたということだけが学校へ出てきた唯一の収穫だった、というヴァージョンもあります。
 でも実際にはそんな経験はしてないのです。目覚めたとき一瞬、夢と現実の区別をつける作業を経て「あれれ、そういえば自分、大学へ入学し直すなんてことやってないぞ?」と、いつもホッとするのです。
 夢診断のできる方、これは何を指してるのかわかりますか? そして私は大学を卒業できますか?

リサイクル1年前にも夢日記がありました。

↑このときも「おんなじような夢を見るので困っている」というような気持ちで書いたのですが、あれ以来、それ系の夢は見なくなりました。

 でも、夢を記録するのはあまりよくないそうなので、ホドホドにしときたいと思います。


リサイクル再掲載


【重大発表】
 前回の記事にてブログタイトルの変更と、もう野球のことしか書かないと宣言したのですが、やっぱりやめます。元に戻すことにしました。
 理由は、野球のことが書けないからです。