予め申し上げておきます。今回の記事、いま新日本プロレスを好きだという人は見ないでください。これ、本当にお願いします。もうね、悲しくてしょうがないですよ。
まずは見てない方のために、ここへ内容を書いてみますよ。
「ご存知ですか、いまプロレスの世界がすっかり様変わりしています」「会場は“プ女子”と呼ばれる女性ファンでいっぱい」というナレーション(※以下:N)が入る。そのプ女子と思われる客の「怖いのかなと思ってたんです、最初は。でも全然そんなのなくて」・・・といったコメント。
新日本プロレスの売り上げが、ここ7年で3倍以上になったというグラフが映される。つづいてこのたび新社長となったハロルド・ジョージ・メイ氏の姿が映され、世界進出を目論むといった今後の目標を告げる。
次に力道山、長州力ら、往年の選手の映像がチラッと。が、すぐにオカダ・カズチカの映像になり、そのままスタジオゲストの棚橋弘至と倉持明日香が映される・・・と思ったら、またVTRが流れた。これまでのプロレス・・・というか新日本プロレスの歴史を超簡単に説明するような内容であった。
「血で血を洗う壮絶な遺恨試合」とのNとともに、飛龍革命で藤波辰爾がアントニオ猪木に楯突いたときの例の映像になる。「弟子が師匠に不満を爆発させる因縁の対決――そんなドラマが男たちの血を滾らせてきたのです」とN。
一転、現在の新日本会場の映像へ。「ところがいま、格闘技の聖地・後楽園ホールを埋めるのは・・・大勢のプ女子、そして家族連れです」とN。満員の客席。
ある女子中学生のファンは、レスラーの個性が好きなんだという。彼女が推す内藤哲也が映像に映ると「ヒールだけど子どもにやさしい」面が強調され、これに高橋ヒロムがマイクで絶叫する様子がつづく。中学生は「(選手が)笑顔になったりしてるところがキュンキュンします」と笑う。横にいた母親も「楽しく見れる。べつに怖いものでもない」と語る。
また一転。2006年、経営危機だったころの映像になる。「真剣勝負を標榜する他のイベントに人気を奪われてしまったのです」とN。
獣神サンダー・ライガーが暗黒時代を「プロレスって灯が消えかけた」と振り返り、さらに「苦しいとき引っ張っていたのは棚橋です」と語る。そこへ「棚橋選手は、たとえ観客が少なくても全力のファイトを展開。どんな小さなイベントでも顔を出し、プロレスを観にきてほしいと訴えました」とN。
VTRはふたたびプ女子へ。心に深い傷を負っていたときに、逆境に立ち向かう棚橋の生き方を観て救われたのだそうで。
「棚橋さんがプロレス復活のために、いままでにいちばん心を砕いてきたことは?」という質問に「イメージを壊すこと。『怖い』『痛そう』・・・そういう負のイメージを、いいイメージに変えられないかと努力しました」と答える棚橋。「痛いし怖そうな選手もいますけど、それ以上に『面白い』『楽しい』になってもらえれば」とのこと。棚橋の言う「面白い」「楽しい」とは、共感できるものを指すのだそうだ。
鹿島氏もおなじく「共感できる」を強調。プ女子については「ランチひとつでも失敗したくない。映画やコンサートに負けないくらい面白いのがプロレス、ということに気づきはじめた」と分析。
あとはビジネスとしての海外進出する際の展望。
いっぽう倉持氏は「弱い部分もリング上で出してくれるのが自分と重ね合わせて・・・」
そして棚橋は「人生と一緒で、いいときもあれば悪いときもある。でも諦めずにガンバっていこうというのを見せていきたい。プロレスは人生です」と締めた。
プロレス特集というよりは、新日本プロレスをただ礼賛してるだけに終始していましたね。
発信する側としては「こんなに楽しいんですよー」と言いたいんだろう。でも私から見たら、いまの新日本のダメなところをズラズラと列挙しただけにしか映らない。もっと言えば、ただプ女子ウケしてる要素を並べただけにしか。
あれで喜ぶのは既にプ女子になってる層だけ。プ女子同士が「そうだそうだ」と悦に浸っているだけで、それ以外のプロレスファンには首を捻りたくなるものばかり。ましてプロレスに興味のない層が、あれを見て「面白そう」とは思わないだろう。
当然ながら、いまの新日本に失望して去って行った層には届くべくもない。あのようなカタチで映像を使われた藤波サンらは、さぞ不本意だったことと推察する。
ああやってまた、古くからのプロレスファンを排除するんだな。
百歩譲って、鹿島氏をはじめ第三者がそういう見方をしてるのはしょうがないかもしれないですよ。だけどそんなふうに言われてるのに、なんで横で「ウンウン」って顔して立っていられるの。
それをまるで棚橋が認めてるかのような様子に見えた。私は彼のことを「プロレスラーとしては気にいらないけど、ああいう選手がいてもいい」と思う程度にとどめていました。ただ「あれがトップにいるのはおかしい」というのはありましたけどね。
だけどこの番組を見て、それすらも思わなくなってしまった。
私は、いまの新日本プロレスにお金を払って観に行きたいとは思わない。
プロレスが健全ぶりをアピールしてどうするんですか。逆にNHKでは放送できないようなことをやるべきではないのですか。
いまの世の中、あらゆるものが健全でなけりゃいけないような風潮で、あらゆる業界が健全さをアピールしてるような風潮じゃないの。だったら、せめてもともとが不健全で不謹慎で非常識な要素を内包するプロレスくらいは違うものをアピールするべきではなかったか。なんでヨソとおなじ方向へ足並みを合わせるのか。
木谷オーナーの話を聞いてたら、やけに表現力がどうのという点を強調してたんだよね。それ、優先順位的にはどうなんかなーとも思いますわ。
ライガーもあんなふうに言ってるけど、わたしゃ新日本プロレスの灯はいったん消えてほしかったと思ってますからね。
最近ネットでよく見かける「やさしい世界」とかいうフレーズが大嫌いなんですよね。誰も傷つかないような内容の話題にあのフレーズを使うことで、さらに無難な場所へ落ちつかせようとするヌルさが。
あれをプロレスにも当てはめようとするんですか。それってプロレスですか?
プロレスに「やさしい」を求めてくる人って、どうかしてませんか? おかしいでしょ。プロレスは弱肉強食でいいんです。「どっちが正しいか」「どっちが人気あるか」の前に「強い者が勝つ」という当然の結果を見せる。それが基本でいいんです。さも「負けても次がある」が当たり前のようになってるのなら、そこは断ち切る非情さを植えつけなきゃいかんでしょ。
じゃあ、そういうプロレスになって、逆に救われるきっかけを失った人たちはどうすんのよ? かつてのプロレスじゃないと救われない者。そっちのほうが人として深刻よ。重症よ(苦笑)。
前にも書いたような気がするけどね、プロレスは怪談にも似てると思うのよ。怪談は怖くてナンボじゃん。怪談話をしてるのに「怖い」を理由に拒絶する人がいるからといって、怖くないレベルに落としてまでも引きとめたりしますかね? 怖がるだけの人はそこで終わりじゃん。怖いんだけど、その先を見たくなり聞きたくなる者が集うのが怪談なんじゃないの。プロレスもそうでしょ。
怪談との共通点でもある「怖い」の部分であったり、野性的な面であったり、グチャグチャ・ドロドロな面であったり・・・本来、そういうのがプロレスの魅力であり必須項目だったじゃん。削いでどうする。そこまでして客を入れてもね、カネは儲かるかもしれんけど魂を売っぱらっちまったも同然なんじゃねぇかい?
先日も新間寿氏が「私が見たいプロレスは、いまのプロレスにない」と言い切って業界からの引退を表明したが、気の毒でしょうがないですよ。過去を知らない現代のファンは多数派の強みをいいことに、こういった人たちを老害よばわりして排除したがるけどね・・・違うだろ、それ。
新間寿さんはIWGPのベルトを返せと言っている。 pic.twitter.com/9FV1KEmM8w
— ターザン山本! (@tarzany) 2015年9月29日
藤波辰爾はもっと過激な発言をしている。 pic.twitter.com/f5JyxvisrT
— ターザン山本! (@tarzany) 2015年9月29日
猪木が凄いのは試合で観客に多大なストレスを与えて会場を後にさせることだ。こんなプロレスラーは見たことない。
— ターザン山本! (@tarzany) 2017年1月12日
新間さんって面白いよなあ。私が昭和と昭和のプロレスを力説したら「山ちゃん、違うよ。昭和の新日本プロレスが凄いんだよ」と反論された。 pic.twitter.com/oVAjG6XvGf
— ターザン山本! (@tarzany) 2017年1月27日
終わってるコンテンツなら、もうそれでいいじゃんって思う。
— 怪音頭cheer🍧 (@_30776506271) 2018年10月17日
ムリに名前やカタチだけ残そうとするばかりに違うものにしてしまったら、むしろマイナスだよ。
ブランドに頼るんじゃなくて、イチから作ればいいじゃん。
そこに闘いはあるか、そこに残酷性はあるか――そっち優先ですからね。それを感じさせるバトルがあるんなら、ベテランも若手も関係ないんですわ。
ある程度キャリアを積んだファンならまだしも、最初からそんな人が多いじゃんね。
そういう風潮なのをいいことに、プロレスラーもプロレス団体も安全で儲かるほうへと舵をとっている。「強さ」「怖さ」とは違うものばかりで魅せようとしてるじゃん。強さを期待されないことに危機感がないじゃん。それってプロレスラーっていえるのか? 本来ならば、そういう見方を覆さなければならないはずなのに。
そんなだから、この手の支持者は他に楽しいことがあればそっちへ鞍替えするように思えて信用はできないんですわ。もっと言えば、プロレスファンかどうかもあやしい。
かといってそういう支持者を排除せよとは言わないが、高をくくっている層の鼻を明かすようなものを見せつけることができるかどうかが今後のプロレス界の課題。いや、それはむかしからの課題ではあるのだが、現在では業界を代表する団体がそこに挑戦することすらやっていない。なぜなら、過去のさまざまな黒歴史を「なかったこと」にしているから。
ダメだ、こりゃ。感性が平凡すぎる(苦笑)。そんなんじゃ、あんなプロレスにもなりますわな。
いま新日本で中心になってる選手って棚橋をはじめ、ほとんどが一般社会へ出てもふつうに会社勤めとかできそうでしょ。オカダは中卒ってことだけど、それでも彼が他の業界でもやっていける姿は想像できる。
そういうのよりも「この世界でしかやっていけないんだろうな」って思えるような選手を見るほうが、よっぽど意義があると思う。それで元気になるとか、救われるとか、そのへんのことはわからないけれど。
強いて挙げれば飯伏幸太だが、彼はまた種類が違うかな? でも新種だとは思うので、他の選手よりはぜんぜん面白いと思うよ。
しかし、近づくことさえ怖ろしいと思わす選手は本当にいなくなりましたな。握手とかサインとか求めても気軽に応じてくれそうだもん。
噛み合わなかったりスッキリしない試合も多いのに、なぜか気になって仕方のなかった孤高の団体という印象。それがあるとき、ハッと気づいたのでした。
IGFでデビューした鈴木秀樹いわく「アルカトラズ刑務所のような場所だった」とのこと。本当の問題児たちばかりが集まる場所だったと。そうか、それなのかと思ったね。
以前ここで「最近、私が魅力を感じるプロレスラー」として剛竜馬、高野拳磁、安田忠夫・・・といった名前を挙げたことがある。彼らに共通する点は「社会不適合者」のフレーズがピッタリなところだろうか。より野性的で屈折していて、ふつうに仕事勤めしてる姿がまるで似合わない人・・・というか怪物たち。
プロレスの世界は、まともじゃない野獣たちの集う場所だった。IGFには、そのころのニオイをまとうような魅力があったので、ひそかに期待値は高かったのだ。
当時のIGFは総帥のアントニオ猪木からして超一流の社会不適合者でありましたからね。そりゃ面白いはずですよ、ネガティブな部分も込みで。
ただ現代には、それを面白がれる感性を持ったファンが激減してしまっているのが非常に残念でありますな。
だったら、なおさらこうして発信しなきゃね。
その意味では彼ら“異形なるヒーロー”も社会不適合者なのであろう。
先の番組内で木谷オーナーは、現代を「ヒーローを求めている時代」と語っていた。それならば棚橋やオカダのような「ふつうの人」ではなく、異形なる者をマットに上げる度量も見せてほしいもんです。言うまでもなく「ヒーローは異形でなければならない」は石ノ森章太郎の名言ですからね。
社会不適合はなぜか真の友達を見つける。出会ったりする。
— ターザン山本! (@tarzany) 2017年2月2日
私は社会不適合の方が正しい。正常だという考えなのだ。社会に適合しようとすると無理が起こる。歪む。屈折する。それが潜在的ストレス、鬱の要因になるのだ。社会というシステムそのものが根源的同調圧力なのだ。
— ターザン山本! (@tarzany) 2018年4月7日
新日本プロレスがどうやってマニアを客席から追い出したのかという方法論を考えることは結構重要である。
— 悪役商会 (@akuyaku_syoukai) 2018年5月6日
新日本プロレスでは面倒な客層を一新するため、オカダカズチカという無味無臭の青年をトップに据えたのだ。
泥臭い人生論の代わりに圧倒的なビジュアルとその場の爽快感を重視したわけだ。 https://t.co/AfCtZQtV2g
予言しておく。21世紀は社会不適合者の時代になる。ならない方がおかしい。
— ターザン山本! (@tarzany) 2018年5月18日
社会不適合者には学ぶものはない。学ぶとは社会の側の理屈だから。学ぶな。いいか学ぶんじゃないぜ。学べば学ぶほど蟻地獄にハマる。
— ターザン山本! (@tarzany) 2018年5月18日
ネット社会、SNSは社会不適合者に狙いをつけた巨大マーケットだ。
— ターザン山本! (@tarzany) 2018年5月18日
世間一般からすると俺は悪だぜ。完璧、問答無用、純度100パーセントの社会不適合者だから。心配するな。人間という生きもの、生命体が社会と適合すること自体がそもそもおかしんんだぜ。
— ターザン山本! (@tarzany) 2018年5月17日
かつての社会不適合者のヒーローは「寅さん」でした。その寅さんの職業は「テキ屋」。
— T_ISHII (@din2235) 2018年5月18日
その職業も現在では「暴対法」で禁じられています。
今の社会不適合者の代表的な職業はユーチューバーかも知れません。
山本さんが週プロ時代には編集部に欠けていると思われる人材を積極的に採用したと伺っておりますが、いま週プロに足りないのは社会不適合記者のような気がします。😅 https://t.co/YMgFw9J0gy
— 怪音頭cheer🍧 (@_30776506271) 2018年10月12日
そうですか、だったらついでにお願いします。どうかどうか、あの人たちの、高圧的でパワハラの権化のようなところも込みで愛してあげてください!
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