ひとつ前の記事で、ここ最近の相次ぐ著名人の訃報のなかで「とりわけ個人的にガックリ感の強かった方が2人いる」と書いた。で、そこでは衣笠祥雄さんをメインの記事にしました。
 今回は、もうひとりの方について書きます。
 
 西城秀樹さんです。衣笠さん同様、広島にゆかりのあるスーパースターでした。
 
 
 衣笠さんの項でも重要なキーワードとして使った「好むと好まざるにかかわらず」は、ここでも当てはまる。
 野球中継もそうだが、昭和のテレビにおける歌番組の世間的価値は絶大なものがあった。娯楽の少ない時代においては、家にいればテレビはついてるもの。そこでは歌番組の本数が圧倒的なうえ、お笑い中心のバラエティ番組ですらコントの合間には歌手が歌でつなげるパターンが一般的。テレビは一家に一台で、各々の部屋もなく家族全員がおなじ空間で過ごすような環境も少なくはなかったはず。こうなると、たとえ興味がなかったとしても映像や音声はどうしても目や耳に入る。当然、売れっ子出演者の顔や名前は覚えてしまう。老いも若きも。個人の趣味などは関係なく。
 だから「好むと好まざるにかかわらず」なのだ。
 ゆえに、べつに彼のファンだったわけじゃないしコンサートへも行ったことがないけど、亡くなったとあらばガク然としてしまう人はものすごく多かったはず。平成の時代にあっては、どんなにCDの売上げで記録を作ろうとも、一部の趣味・世代で絶大な支持を受けてるだけで、そうでない者にはどうでもいい存在にしかなれない。ここが違う。どっちがいいとか悪いとかの問題ではなく、質が違うという意味で。
 
 
「好むと好まざるにかかわらず~」な時代のなかで、ヒデキは「カッコいい」部門のトップランナーだった。そして現代のようにタレントのプライベートがあっさり暴露されたり執拗に親近感をウリにすることはなく、基本的に視聴者である一般人にとっては発信された情報を素直に受け取るしかすべがない。そういう幻想に守られた環境にあったのも大きかったと思う。
 私は呉市で過ごしていたが、ばあちゃんからは「西城秀樹は広島のパチンコ屋のセガレじゃと」「韓国人なんじゃと」くらいの、どこかからもらってきたような話なら何度か聞かされはしましたが、せいぜいその程度(ご家族の噂はちょっとだけあったけど)。テレビに映ってるヒデキからは広島臭はしないし生活臭も感じさぜず、アニメでもないのにホントに実在する人物なのかもあやしい。だけど周りにいる人たちとは異質の華やかさをまとっている、とにかく「遠い世界の人」という存在。スーパースターである要素をすべて備えている人物という印象でした。
 
基本タイプすっかり忘れていたが、3年前、こんなツイートをしていたらしい。
 そう、この歌のときは「まさか66歳で人生を終えるなんて」って軽く思ってたもんだけど・・・・・・あろうことか、彼はそこすらも届かなかった。
 
 よく三人組でひとくくりにされる場合、彼ら彼女らのキャラクターは「よい子」「悪い子」「普通の子」で1セットになることが多いという。
 これを新御三家
に当てはめれば、ヒデキは間違いなく「悪い子」のポジションですね(笑)。べつにヒデキが悪いことをしたという意味ではなくて、不良っぽいといいますか、既存の価値観に対して挑戦的なスタイルをとるタイプといいますか。
 
 
 とにかく「カッコよさ」の象徴であったヒデキはアイドル歌手としても大ブレイクを果たすのであるが、ここで言いたいのは「ヒデキは歌声だけでも、じゅうぶん魅了できるカッコよさがあった」ということだ。
 シンガーとしては正統派な歌い方をするゴロンボは、おそらく年配層からみても理解できるタイプだったのではないかと思います。デビュー曲が演歌でしたしね。これがヒデキの場合、それまで日本ではあまり実績のなかったロックの要素を前面に出した、新しいタイプの歌手といってよかった。
 歌謡曲とニューミュージックの全盛期において「ロックも売れる」ことを初めて証明したバンドは世良公則&ツイストだといわれているが、イチ歌手レベルでこれを長く継続していったのはヒデキとジュリー(沢田研二)だったように思える。
 そのせいで、もしかしたら年配層には伝わりにくかったのかもしれない(平気で「ロックは音楽ではない」と言う人も多かった)が、じつはヒデキの歌唱力は相当ハイレベルである。それに加え、ややハスキーヴォイスなうえ表現力のバリエーションが非常に多い。あらためて彼の歌を聴いてみると「この声の出し方は、どうやってモノにしたのだろうか?」と驚かされたことが一度や二度ではない。それも、かなり若い時期に会得しているようなのだ。
 
 
 だから「ヒデキがいまのアイドルの礎をつくった」というような論調には少々疑問を感じる。なぜなら、見た目がよければ歌唱力は問われないのが当たり前になってしまった昨今のアイドルとはまったく別モノだからだ。「アイドルが歌を歌う」のではなく「歌手がアイドルもやっている」の筆頭といっていいのがヒデキだと思うからだ。
 さらには新御三家にしろ沢田研二にしろ、彼ら自身はべつにアイドルとしてのポジションに固執していたわけではなく、イチ歌手としての在り方のほうをより重視していた様子が窺える。こういうタイプの歌手はいまもいるのか? 私が知らないだけか? いたとしても、はたして現代の大衆は受け容れようとするのだろうか?
 ちなみに、ヒロミは「変な声」担当ということで人気を博しました。あれはあれで面白いのでアリだと思います。
 
 
 このところゴロンボのアメブロは、当然のことながらヒデキのお話が多いです。もともとゴロンボのアメブロは面白いので、ときどき拝見してはいましたが、いよいよ目が離せなくなっております。
 もしかするとご家族よりも密な時間を共にした彼らです。ゴロンボだけが知るヒデキとのエピソードが自然なかたちで綴られています。ヒデキのファンも彼らの関係を知っているので、ゴロンボの話を聞きに行くかのように、あるいはゴロンボにすがりつくかのように集まっているようです。かつては「ヒロミ派」「ヒデキ派」「ゴロンボ派」で対立していたのかもしれないのにね。
 
マイク永源遥の引退記念パーティーより。
永源×ヒデキのツーショット しかも一緒に『Y.M.C.A.』やってるとは!
ミラクルにも程がある \(◎o◎)/!

 
 さて今回の「そんなに陽のあたらない名曲」で紹介しますのは、もちろんヒデキの持ち歌からのものでありまするが・・・そうです、やっぱりここは変化球でいかせていただきます。にひひ
 1991年4月にリリースされた66枚目のシングル『走れ正直者』のC/W曲であります『HIDEKI Greatest Hits Mega-Mix』を投下いたします。これは往年のヒデキのヒットソングを新アレンジでメドレーにしたものですが、かつての音源を切り取ってつなげたものではなく、きちんと歌いなおして収録されております。
 ヒデキのメドレーといえば『YOUNG MAN (Y.M.C.A.)』のB面曲に『HIDEKI DISCO SPECIAL』というものがありました。それは『』『君よ抱かれて熱くなれ』『ブーツをぬいで朝食を』『激しい恋』『ブーメランストリート』『ジャガー』『傷だらけのローラ』『ラストシーン』『ブルースカイブルー』というラインアップでしたが、今回のは『激しい恋』『傷だらけのローラ』『情熱の嵐』『薔薇の鎖』『YOUNG MAN (Y.M.C.A.)』『ギャランドゥ』『ナイトゲーム』『ちぎれた愛』というオーダーになっております。
 サウンドは'90年代のものになってしまっていてガチャガチャとうるさい感じがしなくもないのですが、とにかく楽しいのです。また演奏時間が長いのも特徴。これを一時期は、よく嫌がらせ目的で有線放送でかけてもらっていたものですが、何も知らずに耳にした人は口々に「なんか凄い・・・!」ともらしていました。
 個人的には、カッコいいんだけどあんまり売れなかった『ナイトゲーム』のくだりが好きだったりします。まぁ聴いてみんさい。
 
※本曲は1999年に発売されたベストアルバム『HIDEKI B-side STORY』などにも収録されています。
 
 それにしてもですよ。
 旧御三家(橋幸夫・舟木一夫・西郷輝彦)、新御三家、ロック御三家(Char・原田真二・世良公則&ツイスト)、フォーク御三毛(さだまさし・谷村新司・松山千春)・・・。いろんな芸能御三家がありましたけれど、まさかまさかこのなかで最初に逝ってしまうのがヒデキだとは誰が予想したでしょうか。

 
 
 それと、先日はビッグバン・ベイダーさんもお亡くなりになりましたが。
 ヒデキとベイダーは、おなじ1955年生まれの同級生だったようです。
 1955年生まれの人、お気をつけください。あなたはもうヤングではなくなりました。
 
上矢印大正生まれのブログでは、いちどヒデキの記事を投下したことがありました。約4年前です。
 そこで採り上げました『心で聞いたバラード』について触れた記事は、残念ながら他にはあまりありません。
 これを機会に是非、あの曲をもういちど聴いてみてください。
 
 このたびは二度にわたり、表題に「昭和は遠くなりにけり」とつけさせていただきました。
 衣笠祥雄さんの訃報も西城秀樹さんの訃報も、身内に亡くなられるよりも効きました。いかりや長介さん以来のことです、こんなのは。
 それは単に、ファンだった人に逝かれるというのとは違うものです。確実に時代が終わってしまったことを痛感させられたからです。好むと好まざるにかかわらず、彼らは時代の顔だったから。

 
 
 時間の流れだけはどうしようもありません。仮に止められるとしたら、もうひとりの広島のスター=矢沢永吉さんにお願いするくらいしかすべはありませんが、それでも自分ごと止められてしまったら意味がないですからね。
 
 
 容赦なくおとずれる時代の終焉。できればですけど、もうしばらくはカンベンしてほしいですね。法律で禁止にすればいいのに。弱るの禁止! 死ぬの禁止!
 

 

 

 

 

 

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