まずはコチラのツイートを見てください。

 なんということでしょう。前回のプロレス記事「諏訪魔と藤田は予定調和のプロレスを破壊できるか?」をupしたその週、既に発売されていた週刊プロレス2月21日号の「巻頭言」にて【「物議をかもすプロレス」で本領発揮へ 禁断の闘いで問われる諏訪魔の“暴走心”】と題され、諏訪魔と藤田の再開戦がテーマとして書かれていたのです。これでは、まるで私が真似して書いたみたいになってるではありませぬか(笑)。
 
 巻頭言の内容は、当初は全日本プロレスの最近の流れを追ったものであったが、やがて前時代的な「乱入」というかたちで現れた藤田和之やケンドー・カシンらの一件が中心となっていった。
 これに対する諏訪魔が出したコメントを盛り込んでいく、といった構成。
「一歩間違えれば選手生命さえ断たれるリスクがある。怖ろしいんだよ、本当に。でもそういう生のリアルの部分を見せていきたい」
「このご時世、ハッピーエンドを求めてくるお客さんばかり。その中で生のプロレスがあってもいい。俺はリアルな感情のプロレス、そっちをやっていきたい」

 おそらく多くのファンがそっぽを向いているのであろう本件であっても、私には諏訪魔のコメントが頼もしく映る。
 記事を書いたのは湯沢編集長。いわく「前回のような不透明決着は許されない。そうなったら諏訪魔にとっては、プロレスラーとしての価値観という意味で命とりになる危険性すらある」と書かれてあった。
 だけど私はこの2人の対決の場合、スッキリと決着をつけるとか、そういうものは求めてはいない。期待してもいない。もちろん当人たちには決着をつけるつもりで臨んではほしいが、そうならなかったとしても、それ自体はさほど重要だと思っていないのですよ。
 だって意図的に不透明決着を避けることを念頭に置いたプロレス(客を満足させることありきのプロレス?)だったら、それはイマ風なプロレスというか、いまのファンがいつもどおり楽しめるプロレスになるかもしれないってことでしょ。それだとこのカードをやる意味がなくなりませんかね? 新しいファンが「なんじゃこれ⁉」と困惑するようなものじゃなきゃ意味ないんじゃないですかね?
 結果はどうあれ、まずは諏訪魔がこれまでに見たこともないような姿を・・・それこそ「お前なんか死んでしまえ」と言わんばかりの殺気をまとえるか。そこがなによりのポイントだと思うのですよ。
 
 いっぽう週プロスタッフによるリレーコラム「編集部発EYEコラム」。この週を担当の松川記者は「水面下の出来事を取材できる記者でも予測不可能なこと」や「時代にはそぐわないかもしれないが(一寸先はハプニングな)猪木的手法」が好物としつつ、全日本プロレスなどが「着地点予測不能」で「予定調和感ゼロ」の世界へ踏み込もうとしていることに興味津々なんだと書いていた。
 こういうことは、もっと発信してほしいぞ。新しいファンにはプロレスのそういう面を知らない人も多かろう。受け身がとれない者も多かろう。だからこそ専門誌には、そういう部分を大々的に伝えてくれないと・・・ね。
 いまの週プロにも松川サンのように、そういうのがわかる記者がいるのなら、そこを活かしてほしいものでありますな。
 
 さらにこの号には、もうひとつ見どころがあった。プロレスの歴史にやたら詳しい流智美氏による「プロレス史あの日、あの時」である。今回は異種格闘技戦などを除く「純粋なプロレス」として『ワールドプロレスリング』史上もっとも高視聴率をスコアした、1983年2月7日蔵前大会での「A・猪木vsR・木村&A・浜口&寺西」1対3変則タッグマッチの再戦を録画中継したときのことへスポットが当てられていた。
 当時の木村&浜口&寺西=はぐれ国際軍団といえば新日本信者からは相当な嫌われぶりであった。しかもその嫌い方というのが、ただ猪木や新日本を崇めるだけならまだしも「弱者を蔑む」ような目線で彼らを見ていたのである。
 当然、ファンが見たいのは「猪木が勝つところ」一点のみ。また「はぐれ国際軍団の3人にならハンディキャップマッチでも猪木は勝つだろう」という前提のもとでファンの大半は試合を見ていたはずである。
 ところが、そうはならなかった。1度目は猪木のスタミナ切れによるリングアウト。そして今度こそはと臨んだこの再戦でも、猪木は勝つことができなかったのだ。
 猪木が勝つところを見たかったファン、猪木が勝つと信じて疑わなかったファンからすれば「まさか」の結末。少なくとも猪木および新日本のファンにはバッドエンド以外のなにものでもない悪夢であったことだろう。
 だがしかし。あの時、もし猪木がスッキリと完勝していたらどうだっただろう? その時点ではファンは喜んだだろう。でも、それだけでオシマイになっていた可能性が高いと思うのですよ。いまに至るまで語り継がれる伝説にはなってなかったでしょうね。それどころか人びとの記憶から忘れ去られてしまったかもしれません。
 野球でもそうです。1988年10月19日に川崎球場でおこなわれたロッテvs近鉄のダブルヘッダーも、優勝がかかっていた近鉄が勝てなかったから伝説になったのです。
 
 勝負ごとというのは、そんなに思いどおりにはならないもの。もちろん贔屓してる選手やチームが負けて悔しいのは当然ですし大いに悔しがってほしいところですが、勝負ごとである以上、思いどおりにはならないのも含めて楽しまなきゃね。受け身がとれるファンでありたいものです。
 バッドエンドに傷ついて、傷ついて、それを長いあいだ引きずって・・・でも、そういうなかにも面白さ・素晴らしさが宿っていることに気づけるファンになったほうが得だと思いますよ。
 
 
 そして週刊プロレス3月7日号での「龍魂時評」。諏訪魔と藤田の対戦について、またもや天龍サンが持論を投下した。
 どうやら天龍サンは、いまの新しいファンは「これぞプロレス」というものをまだ知らないと仰ってるようだ。そしてそれができるのが諏訪魔と藤田であろう、と考えておられる。
「賛否両論? みんながOKっていう物事は大きなうねりにならない」
「終わったあとに喧々諤々の議論になるのも含めて俺は好きなんだよ」
「全員が納得する試合なんてありえない。イデオロギーがまったく違う2人がやるんだからスイングしないし、それが当たり前」
 
 
 前回の諏訪魔と藤田の対戦では「天龍サンの引退試合に泥を塗った」なんて声が多かったそうだが、とんでもない。現代プロレスとは違う緊張感あふれる彼らの対決に、もっとも肯定的なのは誰あろう天龍サンなのだ。
 だけど天龍サン、週プロでは難しい言葉を使ったり論客ぶりを遺憾なく発揮してるのに、なんでアメブロではあんなにグダグダなんだろう(笑)? 長州サンの真似してるのかな(爆)?
 
 
 さて、ここでもうひとり。そんな藤田や猪木、カシンらと非常に近い関係にある某プロレスラーが最近、またしても方々で注目を集めている。
 私が選ぶ、いまイチバンいいレスラー=鈴木秀樹であります。
 鈴木は昨年度のプロレス大賞で技能賞に、そしてサムライTVの日本インディー大賞ではMVPに選ばれるなどの活躍をしていました。また『速報!バトル☆メン』にてプロレス大賞授賞式での彼の動向を追う企画においては、その変人ぶりばかりがクローズアップされていた。
 

 
 そんな鈴木ですが、最近のアクションで個人的に注目したのは彼と某大物選手とのツイッターでのやりとり。
 ちょっとここへまとめてみます。
 
基本タイプまずはこの記事から。全日本・秋山準による藤田一派への見解。
私もたまたまこれを見ていたので、後につづく鈴木のコメントにもピンときました。

 

基本タイプそれに対する鈴木のコメント。

 

基本タイプこれに宇藤純久がリプライを送る。

 

基本タイプここでビックリ! \(◎o◎)/!

なんとなんと、秋山本人が割り込んできたからさあ大変!えっ

 

基本タイプ秋山は丁寧に「成立」の意味を語る。 長文にもかかわらず上のツイートとはわずか2分差ということは、たぶん文字数の関係で収まり切れなかったため2つに分けて投下したものと思われる。

 

基本タイプ鈴木の返信にも驚いた。

大先輩の秋山にも真っ向、己のプロレス観を語る鈴木なのである。あせる

 

基本タイプなんともいえない空気が流れます・・・。汗

 

基本タイプああああ・・・! Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)

 
 どーうですか、お客さん! この緊張感! この噛み合わなさ!
 私は鈴木と秋山のどっちもフォローしてたので、このやりとりをリアルで目の当たりにしていました。いったいどうなるんだろうと、ヒヤヒヤしながら見ておりましたよ。
 ツイッターだけの世界で終わらせるのはモッタイナイ気がしたのでここでも記事にしたいと思ったのですが、例によってボヤボヤしてるうちにプロレス専門ブログ BLACK EYEさんに先を越されてしまいました(泣)。しょうがないので、その劣化版としてこうしてお届けしておる次第であります。
ショック!
 
 正直、秋山の言う「成立」は、予想どおりの回答でした。もしかすると鈴木は、本当はそれをわかってて発信したのかもしれない。だからそのやりとりをフォロワーにも見てもらえるように、わざと「引用ツイート」にしたのではないか、とも考えられます。
 とはいえこの2人、かたや馬場サンの弟子であり、かたや猪木サンの遺伝子を持つ経歴の持ち主。「じつは両者が行きつくところは同じなのではないか」という見方もできるが、どうも私にはプロレス観の違いが明るみになってる比重のほうが大きく思えて興味深いんですよね。
 
 あと思ったことですが。
 私は「頑張って」というフレーズが基本、好きではない。まず、頑張ってる人が立派だとか、頑張らない人がダメだとも思ってないのがひとつ・・・まぁこれは個人的な考え方なので、ここでは重要なことではありませんが。
 ただこのフレーズを使うときは、例えば有名人と会ったときなどに何か話したいんだけど適当なものが思いつかないときに「とりあえず」で使う便利な言葉であること。あとは相手が頑張るかどうかが問題ではなく「はい、もうこの話は終わりにしましょうね。バイバイ」っていうときに用いられることが圧倒的に多いように思う。酷いときには「本音では、あなたに興味がありません」という場面で使われることすらある。
 逆に、本当に頑張らなきゃならない事態に陥ってる人には使いにくい言葉でもあるように思うのです。だから私はできるだけこのフレーズは使わないようにしてるつもりなのですが、もしもうっかり口にしてしまったら、その直後、激しい自己嫌悪に陥ることでしょう。
 で。
 この両者はものの見事に「頑張って」の撃ち合いをしてます(笑)。この使い方に該当するのは・・・だいたいわかりそうですね。しかも鈴木のほうは「成立させるように」という含みまでついてるデラックス版でありました。 \(^o^)/
 
 これで秋山は「なんてヤツだ」と思ったのでしょうか。仮にそう思ったとしても、秋山のことだから「でも面白いヤツだな」と考える度量はありそうな気もします。
 
 そうそう、私はプロレスラーや芸能人など、好きなジャンルで活躍する有名な方々でもツイッターでフォローしてる人の数は少ないんです。そのジャンルにおいては魅力的な人だとしても、ツイートが面白いとは限らないからです(とくにミュージシャンで面白い人というのは、あまり見たことがない)。また以前にも書きましたように、プロレスラーが言葉を使ってアピールするのが当たり前になってる風潮も好きではありません。
 しかし、言葉の使い方に長けている選手などには例外的にアリだと思うこともあります。その数少ない選手が鈴木と秋山だったりします。例えば鈴木が船木誠勝と抗争してたときの「フナちゃん」「俺は遠慮しねえんだ!」などは他の誰もが言えないようなこと。それを言ってしまう度胸のよさにシビれましたからね。
 秋山のほうも過去に数々の刺激的な発言を放ってきた実績がありますが、いまは社長の立場なんで本来の攻撃的な面は控えめにしてるんだと思います。もっとも、若手(と小橋先輩)をいじくることにかけては相変わらずキレキレなんですがね。
 
 ところで、秋山はなんで鈴木のツイートに反応したんだろう? 彼をフォローしてたのだろうか? ・・・と思って秋山がフォローしてる人の一覧を調べてみましたが、いま見たかぎりではその中に鈴木のアカウントは見当たりませんでした。くまモンや石田靖のアカウントはフォローしてるのに(笑)。
 そもそも鈴木と秋山って接点あったっけ? そう思い、検索してみた。すると有力そうな情報が書いてありそうなところにヒットした。
「・・・おお、あったあった。ほぅほぅ、全日本に参戦したこともあったのね・・・ン、大正生まれのブログ? ここじゃねえか(笑)!
 それは最初に鈴木のことを書いた記事「鈴木秀樹待望論」。そうだ、あのときは彼のデータをあっちこっちと見ながら作ったものだった。それまでは鈴木秀樹なんてノーマークでしたからね。
 なお鈴木が全日本に初参戦したのは、ちょうど秋山が社長に就任する直前の時期だったようだ。
 
音譜鈴木秀樹の入場テーマ『Blue Eyed Soul』。これが流れると場内にピーンとした緊張感が張りつめます。
彼の師であり初代人間風車だったビル・ロビンソンのテーマでもありました。


 鈴木と秋山、どっちも好きな選手です。ただ、いまのご時世、ファンは求めすぎ、団体はファンに合わせすぎなきらいがあります。
 だから現時点では、鈴木の「僕は喜んで貰っても怒って貰っても泣いて貰ってもなんでも良い」と言い切れるスタンスが私は好きです。映画だって客を喜ばせてばかりでなく、怒らせたり泣いて帰ってもらう種類のものもいっぱいあるんですから。
 
 私ね、好きな映画のほとんどがバッドエンドなんですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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