私が足を運んだプロレスの大会には、いくつか伝説となったものがあります。そのトップクラスに入るのが1995年4月2日に東京ドームでおこなわれた、週刊プロレスのベースボール・マガジン社が主催したオールスター戦「夢の懸け橋」であります。
 同大会ではメジャー、インディー、UWF系、女子プロレスなどの全13団体が参加。各団体の純潔メンバーでのカードを提供するといったコンセプトのもとに開催され、6万人の観客が動員されました。
 ただ、団体を越えた対抗戦や交流戦といった類いのカードは組まれないもので、あくまでも各々の団体に所属する選手同士による対戦が基本ライン。週刊プロレスとは不仲であったとされるWAR(同日、すぐ隣の後楽園ホールで当初より決定していた興行をおこなう)を除き、当時の主な団体の選手が一堂に会す豪華さが話題を呼んだものだ。
 これに各団体は、その時点で自団体における最高クラスに相当するカードをひとつずつ提供。試合順は最初の3試合を女子枠とし、団体の歴史が新しいところから先に進められていく。
 いっぽうで同大会には「マスコミが興行をするとは何ごとか」といった批判的な意見もあり、冷ややかな態度を示す向きも多かったという。

 

 

第13試合【新日本プロレス】NEW JAPAN CLIMAX
橋本真也vs蝶野正洋

 

第12試合【全日本プロレス】4・2ドーム特別試合
三沢光晴&小橋健太&スタン・ハンセンvs川田利明&田上明&ジョニー・エース

 

第11試合【FMW】忍邪憧夢絵巻~究極邪道対決・最終章 ノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチ
グレート・ニタvsポーゴ大王

 

第10試合【UWFインターナショナル】UWFインターナショナル・スペシャル・シックスメン・バウト
高田延彦&垣原賢人&ビリー・スコットvsゲーリー・オブライト&山崎一夫&ジーン・ライディック

 

第9試合【リングス】クリス・ドールマン日本引退試合第1弾
前田日明vsクリス・ドールマン

 

第8試合【みちのくプロレス】みちのく・ザ・ベスト'95
グレート・サスケ&SATO&獅龍vsスペル・デルフィン&愚乱・浪花&TAKAみちのく

 

第7試合【プロフェッショナルレスリング藤原組】藤原組ライバル対決
藤原喜明&石川雄規vsドン荒川&カール・グレコ

 

第6試合【パンクラス】シングルマッチ
鈴木みのるvsクリストファー・デウィーバー

 

第5試合【IWA JAPAN】バーブドワイヤーボード・スーパースクランブル・バンクハウスデスマッチ
テリー・ファンク&レザー・フェイス&中牧昭二vsカクタス・ジャック&ヘッドハンターA&ヘッドハンターB

 

第4試合【剛軍団】エイリアン・デスマッチ
剛竜馬vs宇宙魔神シルバーX

 

第3試合【全日本女子プロレス】全女GREATEST4★プレミアムタッグマッチ
アジャ・コング&井上京子vs豊田真奈美&ブリザードYuki

 

第2試合【LLPW】レディース・アルティメット・ファイト
神取忍vsハーレー斎藤

 

第1試合【JWP女子プロレス】プロレスの神様ありがとう
ダイナマイト関西&福岡晶&キャンディ奥津&能智房代vsデビル雅美&尾崎魔弓&キューティー鈴木&矢樹広弓

 

 

 当時はメジャーだろうとインディーだろうと団体問わずチェックしていた自分にとって、この一大イベントに行かないという選択肢はなかった。
 確実に売り切れると思った私は、たしかチケットの販売開始時間と同時に販売店へ行き、そこで「プロレスの・・・」と言った瞬間、そこのおばちゃんが「夢の懸け橋?」と答えた記憶がある。おばちゃん自体がプロレスファンだったのかどうかは知らないが、これが注目のイベントであるという情報は事前に把握していたのかもしれない。
 そして、おそらくリアルタイムで売れ行き情報がわかるであろう画面を見つつ「ああ・・・売れてますねぇ~」とつぶやいていたので、こっちとしては「一刻も早く買わなきゃ!」と、いっそう焦りの気持ちが高まったのだった。

 

 

 同大会の映像は、テレビ放送やビデオなどへソフト化されることはいっさいないとの告知が事前にあった。このため試合を観るには当日、実際に現場へ足を運ぶ以外に手段がないわけで、ならばなおのこと見逃すわけにはいかないという気にさせられたのだった。
 ところが、どういうわけかニコニコ動画に同大会の映像がupされております。幻の興行だったのに。なので、かねがね記事にしようと思っておったわけです。
 そこでです。全13試合のうち当ブログが記事として選んだのは・・・・・・剛軍団の剛竜馬vs宇宙魔神シルバーXにしたいと思います!
クラッカー
 これ、迷いませんでしたよ。だって、あの剛竜馬が主役なんですよ。ほんのわずかな時間とはいえ、剛竜馬が東京ドームのド真ん中に立って6万人の声援を浴びることになるんです。おかしいでしょ。
 全試合前、各団体の選手やら代表やらが横一列に並び紹介のコールを受けるんですけどね。剛の名前が告げられたときは、明らかに他の選手とは違う反応がありました。会場じゅうにどよめきが起こりましたからね。みんな「ホントにこの選手が出るの?」って思ってるんですよ・・・。

 

 

 剛竜馬。やたらギョロ目で、やたら腕の長い男。国際プロレスでデビューし一時は藤波のライバルとなるも、そのほとんどで日陰のレスラー人生を送っていた剛。ただ“夢の懸け橋”当時は、その特異なキャラクターで「プロレスバカ(略して「PB」と表記されることもある)」と呼ばれプチブレイク中でありました。目
 剛がブレイクを起こした要因のひとつには、その長い腕を天に突き上げながら「ショア!」と叫ぶムーブ。それはこの日も存分に発揮されることになります。
 あらためて映像で振り返ってみると、試合自体は典型的な勧善懲悪モノみたいな内容という印象しかないかもしれません。しかし実際に生で観るそれは、かなりカオスな情景だったような気がします。
 とにかく会場全体からくる「剛のベビーフェイスぶりを徹底させてやろうぜ」という空気。6万人が満場一致でそれに同意してしまったかのようで・・・おそらく宇宙魔神シルバーXを応援している者は皆無だったのではないか?
 基本的に私は、みんなが同じ方向を向く「一体感」ある空気がものすごく嫌いなんであります。でも、このときは例外であった。常識ではあり得ない人が大ヒーローになってるのだから。

 

 

 先ほど書きました「ショア!」ですけどね、その神通力はこの日も健在であったのです。ことあるごとに右拳を天高く突き上げ「ショア!」と叫び、同時にドームじゅう数万人の観客も「ショア!」と叫ぶ。とても異様な光景。みんなアタマおかしい(笑)。
 そしてドームじゅうに響きわたるバカコール。応援してる人に対し「バーカ! バーカ!」ってコールするのってどうなのよ? ・・・といった大いなる疑問もなきにしもあらずなのだが、誰も突っ込まないところをみるとそれも込みでOK牧場な世界なのだろう。そこには私も含め、剛軍団の試合を生観戦したこともなければ決して剛信者だったわけでもないファンも多かったことと予想するが、さすがここに集いし週プロ読者はそこらへんも学習済みとみた。
 剛の一挙一動に6万人が大喜びのバカワールドは最後まで続いた。試合後、後方にいた観客のひとりが「『ショア!』だけで、これだけダレずに引っぱれるのは凄いよ」と呆れて・・・いや、とても称賛していたものです。

 そりゃ「感動」という意味では、セミに登場した全日本プロレス勢ですよ。当時の全日本は鎖国体制にあり、しかもこのときはたしか九州を巡業中だったと思うが、この試合のためだけに1日だけ東京へ帰ってきた三沢たちを目の当たりにした瞬間は「ああ、本当に来てくれたんだ・・・!」と胸が熱くなりました。鳥肌も立ちました。
 しかーし! 剛軍団の放つ異様さと、それを面白がる6万人のアタマおかしい大観衆という摩訶不思議な空間・・・こんなの、そうは味わえませんよ。よって本大会の私的MVPは剛竜馬に決定なんであります。わしもアタマおかしい。

 

 

 剛竜馬。油断してると両さんみたいに眉が繋がってしまう男。私生活では問題児であったと聞いてはいるが、なぜか一部プロレスファンからの支持は非常に高く、馬場や猪木と石川敬士のあいだくらいに華のある選手であった――。

 

 あ。あの日、もしも宇宙魔神シルバーXのほうを応援していたという方がおられましたらご一報を。文通してください。

 

 

ベル【告知】
 当ブログ初の次回予告です。本記事関連になりますが、次回は7月16日にプロレスショップ・闘道館でおこなわれた週プロ祭り「最強の青春グラフィティ 週刊プロレス」のレポート記事を限定公開する予定です。
 当時のターザン山本編集長以下、'90年代の、もっとも週刊プロレスに勢いがあった時代の記者さんたちによるトークイベントでした。
 ちなみにこのイベントには不参加ながら、当時は次長を務めておられた宍倉さんも非常に気になってたそうで・・・。

あのころの週刊プロレスは単なる情報誌ではなく、よくも悪くも「読ませる」力で魅了してくれましたね(笑)。週プロの記者さんたちはヒーローでした。そして、いまとなってはレジェンドです。
宍倉次長もヒーローでありレジェンドのおひとりなんですけどね。お伝えしたいことは多々あれど、コメント欄を閉じておられるんでその手段がないんですわ。しょぼん

 

注意のっぴきならぬ事情などにより、予定を変更する場合もありますので悪しからず。 (^人^)