わたくしごとですが、9月1日からしばらくのあいだ諸事情によりインターネットができない環境にありました。その間、いろんなものを放置状態にしておりましたことをお詫びいたします。
 4日になって、ようやく繋がりました。しばしの漏電期間を経て、装いも新たにパワーダウンした全温度チアーさんの大正生まれのブログに乞うご期待☆
 ・・・と言いたいところですが、期待されると裏切りたくなる性分なので「なんだかなぁ~」と思いながら見てもらうくらいがちょうどいいです。

 ネットができない期間中である9月2日のこと(※この記事はネット休止期間中に書いております)。5月17日に後楽園ホールでおこなわれたKENTAのNOAH最終試合のもようが、ようやくG+で放送されていました。
 カードは丸藤正道&KENTAvs杉浦貴&中嶋勝彦。現在NOAHマットに上がる選手のなかでも傑出された面々で構成されたタッグマッチだ。
 にもかかわらず、このところプロレスへの情熱がやや冷めかけていたこともあり、私は惰性で視聴する日々を続けていた。この日もそうだった。


 選手の皆さん、ごめんなさい。 <(_ _)>

 このタッグマッチ、ものすごい試合になりました!
 とくにKENTAと杉浦が展開した打撃戦は壮絶を極めた。いつものことではあるが、杉浦のエルボーは当たりが強い。じゅうぶんに腰を捻ってから鋭角的に放ってくる一撃。そのえげつなさは、いまや業界屈指であるといえよう。また、いい意味で「空気を読まない」中嶋の蹴りは遠慮なくKENTAのノド元をえぐる。
 これを真っ向から受けて立ち、やり返すKENTA。お互い素直に倒れたほうがダメージは少なくていいはずなのだが、なかなか倒れようとしない。やせ我慢の応酬。この攻防、まさにプロレスラーの鑑である。

リングまぁ、観てくらはい。
KENTA & Naomichi Marufuji vs. Katsuhiko... 投稿者 aptermags

 じつはこれだけのファイトを見せつけられてしまい、非情に残念な気分になってしまった。もうKENTAが見れない! と思ったからだ。
 NOAH退団後のKENTAの去就先はWWE。言わずと知れた業界最大手。ふつうに考えたらKENTAのステップアップを喜ぶべきなのかもしれない。実際、NOAH団体内ではKENTAのステップアップを好意的に受け止め、多くのファンは新しい門出を祝福している様相。でも私は・・・。
 いや、もちろん本来、これまでに築き上げたものを捨て去り、新たなるものへチャレンジすることは勇気がいるし素晴らしいこと。それはわかる。だがしかし、私にはどうしても手放しで喜べないのである。
 理由はズバリ、WWEに行ってしまったら、もうこれまでのKENTAではなくなってしまうと思うからだ。
 もちろんKENTAが引退するわけではない。KENTAそのものが変わるわけでもない。だが・・・。

 小さいながらも真っ向ファイトを身上とするKENTAではあったが、それと同質のファイトをWWEでも見ることができるという画はどうしても私には想像がつかないのである。
 NOAHとWWEでは違いすぎる。世界最大手のWWEではあるが、少なくとも私はNOAHのプロレスがWWEより下だとは思っていない。
 あえて負けている要素を挙げれば規模の大きさであったり観客動員力であったり。その差は比べるまでもない。もちろんファイトマネーも桁違いであることは容易に想像できる。
 たしかに近年のNOAHは観客動員が伸びず、興行的には苦戦続きである。だが、試合のクオリティにかけては世界のどこへ出しても恥ずかしくないものだと思う。
 内容的には選手も自負するものはあるだろう。しかし、それがなかなか世間に届いていかない現実。大きなお世話だが、おそらくリング上では命を削る激闘を繰り広げていても、それに見合うじゅうぶんなファイトマネーも出せない状況が続いているのではなかろうか。関係者は頭の痛いところでありましょう。
 もしかしたら、そういう環境のなかでトップを張り続けていくことにKENTAは疲れたのだろうか? あるいは、もっと大勢の観客に囲まれて試合がしたいという気持ちが爆発して・・・? いやいや、これは個人的な憶測だ。それに「大衆に囲まれてファイトがしたい」「てっぺん(世界最高峰)からの景色が見てみたい」と思うのはプロ選手としては自然に抱く欲求といえる。
 仮にWWEの一軍に上がれば、日本人のプロ競技者として世界的な知名度ではイチローや松井を凌ぐものとなるであろう。なぜなら大リーグを観てるのはせいぜいアメリカと日本くらいなものだが、WWEは世界じゅうで観られているからだ。
 KENTAは「これまで応援してくれたファンの皆さんに恩返しを・・・」と話していたが、KENTAが世界の注目する舞台で活躍し名声をあげれば、NOAHのファンとしてはハナ高々・・・と? ああ、それも正しいのかもしれない。
 でもWWEへ行ってしまえば、もうNOAHで魅了してきたKENTAではいられない。おそらく私たちが知るKENTAとは、まったく違うキャラクターになっていることだろう。それは本人も覚悟のうえだそうだが・・・でも、それだと私にすれば引退するのと変わらないではないか、と思ってしまうのだ。

 先日までWWEにいたヨシ・タツ(山本尚史)曰く「新日本にいるときは強くなることだけ考えていればよかったが、WWEでは客に求められる選手になることを考えなければならなかった」と、その違いを証言している。すなわちWWEは新日本のプロレスとは別モノであるし、もちろんNOAHのプロレスとも別モノであろう。
 既にWWEでは自らレスリングビジネスではないと公言しているし、所属選手のこともプロレスラーではなく「スーパースター」と呼んでいる。であるならば、もう個人的にはプロレスと一緒にしなくてもいいんじゃないかとも思っているくらいである。
 それくらい違うものだと思うこともあり、これまで見てきたKENTAのスタイルからすると、彼がWWEに興味を持つことがどうにも解せないのである。が、それでも本人がそうしたいと思うんだったら仕方がない・・・。

 繰り返しますが、これはKENTAの人生なのだから、私がとやかく言うものではないとは思うんです。ここ数年、小さな身体でありながらNOAHのトップを張ってきたKENTA。地上波の放送が打ち切られ、三沢さんが他界し、内部のスキャンダルが露呈され、そして秋山や潮崎ら主力選手の大量離脱・・・。そんな激動の時代のなか団体を引っぱってきたKENTAの功績は多大なものがある。
 そういえば犬猿の仲といわれた秋山にすら、彼らが去る際のKENTAは「もっとやろうよ!」と、団体の戦力ダウンと仲間の去就を悲しむコメントをこぼしていた。KENTAにしては珍しいコメントだと思ったが、たぶんあれは本音。KENTAがNOAHを盛り上げたいという気持ちは、せつないまでに伝わってきたものだ。
 そんなKENTAであったが、こんどは自身が去ろうとするのである。当然、相当に悩んだ末の結論であろう。だから本人のやりたいことならやらせてあげたいし、いちファンである私に意見する立場にはないことも承知なんであるが。
 ただ、やはり釈然としないものが残るのだ。まだこれだけのファイトができるのに、それをもう見ることができなくなるかもしれないのかと思うと・・・嗚呼モッタイナイモッタイナイ~!

 やっぱり行ってほしくない!

 いまさらながら、そんなことを思ってしまったんでありますよ。

 


 ちょっと話は変わりますが、私はプロレスのリング上における過剰なマイクパフォーマンスには否定的である。あれはあくまでもスペシャルなものであり、どうしてもその必然性がある場合を除けば安易に手を出してほしくないのだ。それが最近、各団体ともそれが当たり前になってしまってる風潮にNOなんでありますよ。
 基本、プロレスラーは肉体で表現するべきだと思うのです。それを「言葉の説明」で補足しなければならないようでは力量不足に見えてしまう。映画でもテレビドラマでも、言葉の説明で補足しているのを見たら、やはり力量不足に映るのと同じことです。そもそも、言葉で表現するのは一般人でもできることですからね。
 試合そのものよりマイクのほうが印象に残るのも違和感あるし、いい試合をする選手よりも口が達者なだけな選手のほうが注目されてしまうのにも違和感がある。
 NOAHでもメインイベンターはしゃべらなければならないような空気ができてしまい、どうみてもしゃべりが苦手と思われる森嶋までがマイクを持つ⇒とりあえず「やる気! 元気! モリシ!」と叫んでみる――といった時期があった。苦手なことにもチャレンジする森嶋の姿には、彼なりのNOAH愛を窺える。でも、それが逆にイタい印象を受けてしまっていた。試合だけにしておけばいいのに・・・と思ったものだが、そうも言ってられない事情もあってのこと。森嶋にとっては不幸なことである・・・というか気の毒でならなかったものだ。
 その点、KENTAのマイクは堂々としたものだった。たぶん彼は相当アタマがいい。木村拓哉を彷彿させる佇まいも、じつに絵になる。無理してやってる印象がないので、マイクにはやや否定派な私から見ても違和感はなかった。KENTAはこれも武器に、トップに立ってからは毎試合、マイクパフォーマンスで興行を締めた。
「本当にいつもいつも親戚でもないのに『KENTA、KENTA』ってありがとう」
 軽くジョークを交えた言葉のセンスも悪くない。たしかにKENTAのしゃべりは来場した観客を楽しませていた。それがKENTAにできるKENTAなりのサービスだったのだろう。ただし、今後もずっとマイクが当たり前になってしまうのには賛成できないと個人的には思っていたが・・・。

 ところが、である。NOAHでのラストマッチでは、KENTAはマイクを握ろうとしなかったのだ。自分の試合がセミ(ダブルメインイベント第1試合だが)であり、まだメインが残っているので気を使ってのことだったのかもしれない。
 しかし、メインの解説を務めた後のこと。リングの撤去作業がおこなわれる際になっても観客は帰ろうとはしなかった。そこにまだKENTAがいたからだ。この時間にして異例のカーテンコールが起こった。あらためて撤去途中のリングへ上がるKENTA。笑顔で歓声に応える。が、ここでもマイクは決して握ろうとはしなかった。ただただ、身振り手振りで感謝を伝えるのみなのである。
 マイクが得意なはずのKENTAがマイクに走らない。結果的に、これが逆に大きなスペシャル感へと繋がっていたのである。
 見事だった。これが考えてやった演出ならばかなりの策士という見方もできるが、そうであろうとなかろうとKENTAの放つ何かを見せつけられた想いがする。
 大物選手が去れば新しい風を起こす選手が出てくるというもの。だからNOAHの未来も悲観することはないという声もある。だがKENTAほどの選手は、そう簡単には現れないであろう。だからKENTAのWWE入りはNOAHのみならず、世界のプロレス界にとっても損失だったのではないか――そんなふうに思えてならないのだ。

 試合後のインタビューで杉浦が粋なことを言ってました。
「彼、手が荒れてるんだよ。NOAH辞めてもちゃんと薬を塗るんだよ」
 まるで“お母さん系男子”的な贈る言葉。いまとなっては、KENTAに早くいいハンドクリームを見つけてほしいと願うばかりであります。


 なお、先ほど「情熱がやや冷めかけていた~」と書きましたけど、これは心配いらないと思います。長いことファンやってますと波がありまして、度々あることなんです。どうせまた復活します。それを繰り返してきましたんで大丈夫です。というか、この試合でもう復活してるかもしれません。
 プロレスは、長く見ているほど得する競技ですからね。